メディアグランプリ

RPGゲームは育児を楽しむツールだった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:青江茜(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
『娘は食事中に突然立ち上がった。
1. トイレに行く
2. ジュースが欲しい
3. 落ちたフォークを拾う
4. 嫌いなものを食べさせて欲しくてママの膝に座り口に入れたら褒めてもらいたい』
 
幼児との子育ては常に脳裏で選択肢が表示されて、判断を求められる。
 
2番かな? と聞くと無視される。じゃ1かな……と思う頃には、私の右サイドから膝をめがけて飛び込もうとしている。
そうか、4だったのか。がんばってキュウリ食べたもんねと確認するまもなく、それは私がお椀を持っていようが、アクビをしていようがお構いなく発動されるので、私は瞬時に次の判断が求められる。
 
『娘が突進してきた
1. 左手に持っているお椀がこぼれてもいいように子供から離れた距離に左腕を伸ばす
2. 右手で一旦静止させる
3. 両腕を広げて子供の受け入れ態勢を取る
4. 「食事中に立っちゃダメ!」と怒る』
 
 
このような対応の選択肢は、仕事をしつつ子育てする私の気持ちを、マインドを健全に保つための方法でもある。
 
選択肢というものを痛感した忘れられない経験がある。
システム会社に営業サポートとして在籍していたときだった。業務開始時間直前にネットワーク障害があり自社サービスが提供できない状況が発生した。早番で出勤していたエンジニアが障害発生のお知らせを出しつつ、原因究明をしていたが、どうやらいつもと状況が違うことがわかった。エンジニアのリーダーであるAさんは焦りといら立ちを発しながら、メンバーに「昨日のモニターチェック結果は?」とあれこれ指示出しをしていた。そしてメンバーの1名のBさんが指示した内容とは違う結果を持ってきたと分かったとたん、机をバンっとたたきながら立ち上がり「お前俺の言ってることがわかってないならちゃんと聞き直せよ! いつもそうだよ。そういえばあのときも……」と説教を始めてしまった。新人だった自分はその迫力に圧倒されてどうしようという思いばかりがあふれエラー表示されているモニターの横で固まるばかりだった。私はエラー解析できない、どうしよう。
 
そこに上司が出勤して、私に「何があったの?」と声をかけてきた。
「あの、AさんがBさんの持ってきたデータが違うといって怒り始めて……」というと、
「いや違う。どんなトラブルがあったかを聞いているのであって、君が言っていることは本質ではない」
といって、戸惑っている私に一問一答形式の質問をしながら状況把握しながらモニター画面をみて状況を察した。そしてヒートアップしてきたAさんに向かって
「A君。今はこれからシステムを使い始めるお客さんのことを考えて、どうすべきか実行する時間だ。トラブルが起きたことによって、お客さんにどんな影響があるかだけ教えてほしい」
これを聞いたAさんは我に返って、上司に状況説明をした。
「了解、よくわかったよ。お客さんには僕から連絡するから、君はモニターのログ解析をしながら、Cさんに連絡して設備電源に問題ないかを聞いてみてくれるかい? 先週末に機械の調子が悪いと言っていた気がするから原因はそこかもしれない。ただまだわからないからメンバーには引き続きログ解析をしてもらおう。お客さんに怒られる? そのときは本部長に謝りにいってもらえばいいじゃん。たまには本部長にも働いてもらわないとね」
 
そういってメイン顧客に電話をし始めた。影響すると思われるお客さんは10社程度だったので、私も上司の電話口の言い方を盗み聞きしつつご迷惑をおかけしてすみません。と伝え始めた。
結果、設備電源の故障で引き起こされたことがわかり、2時間後には復旧した。お客様も業務前に連絡を入れていたこともあり、影響も少なく、逆に大変だったねぇ。とねぎらってくれた。
 
すべてが終わった後、上司にAさんが怒り始めてテンパってしまいお客さんのことを考える余裕がなかったことを謝った。すると上司は経験を重ねていけば問題ないと前置きしつつ
「突然のことがあったら、RPGゲームのように考えてごらん。状況が敵ね。そして対応コマンドを頭に思い浮かべるの。ちょっと面白いでしょ? 状況を客観視できるし、何度か繰り返していくと敵を倒せるからさ。ま、やられることもあるけどね。でも絶対復活はできるから大丈夫。ゲームだって生き返って次のチャンスがもらえるでしょ」
と豪快に笑った。
聞いた直後はトラブルをゲームに例える上司は不謹慎だしそんなこと思えない、と思ったが、ゲーマー気質も手伝ってやってみると面白かった。突拍子のないことがあっても、おおそう来たか! と受け止めることができるようになった。その経験が私の強みとなって、定常運用が多い部署からプロジェクト進行をする部署へと移動するきっかけにもなった。
 
子育てもまさにその積み重ねである。予想だにしないことを繰り広げるのが子供なのだ。
それをストレスと感じる瞬間もあるが、新たな敵がきた! と感じることでその出来事すら面白いことと受け止める自分が好きになってきた。だって選択することで自分に自信がつくし、無事倒すことができると経験値がたまってレベルアップするから。
冒頭、突進してきた娘に対して、1を選択して、左腕を伸ばした結果、味噌汁の入ったお椀は見事にこぼれて、床の上に飛び広がったのであった……。

 
 
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2018-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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