日常にどっぷりつかっていると、自分は見えない。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中川文香(ライティング・ゼミ平日コース)
「自分って、どっかで見つかるもんなんだろうか……?」
それが”自分探し”という言葉を聞いて最初に持った感想だった。
一昔前に流行った、自分探し。
旅に出たり移住してみたり、方法は様々だと思うけれど、その”自分探し”という単語にどこか違和感を持って眺めていた。
「アマゾンの奥地とかで自分が落ちているの見つけたら、逆にこわい」みたいな書き込みをネットで見て、「ほんと、そうだよなぁ」とひとり納得していた。
自分は別に探さなくても、ここにいるではないか。
だけど、今になって思う。
みんな必死になって探していたのは、”自分そのもの”なのではなくてまわりから見える”自分の立ち位置”なのではないかと。
それなら自分を探したくなる気持ちも分かる。
私だって、自分の立ち位置分かるのなら知りたいから。
誰でも、自分のことを外から見ることは出来ない。
自分の姿かたちを鏡でなら見ることが出来るけれど、一日中鏡とともに過ごすのは不可能に近いし、だいいち鏡は左右逆に写っているので、本当の意味での周囲から見えている自分とは少し違う。
写真や、映像で見ることは出来ても、それは過去の自分だ。
つまり”ライブ”の状態の自分を見ることなんて出来ない。
自分は自分という肉体の中身に入っているから。
どんなに頑張っても、外から見るライブの自分は見ることが出来ないけれど、自分のことは自分が一番良く知っている。
24時間、片時も離れずに自分と一緒に過ごしているし、自分が、誰といつどこで会って、どんな話をしたかも自分以上に知っている人などいない。会話の内容は忘れてしまうことはあるにせよ。
だから、自分は一番自分のことを知っている。
そして一番身近な自分を周囲の人に認めてもらったり、自分が楽しいと思うことをしたいとか、誰かから好かれたいと思う。
そう思った時に、はたと立ち止まるのではないか。
「自分はまわりからどんな風に見えているのか」と。
一番良く知っている自分を外から見ることが出来ないなんてなんたる皮肉。
そして、分からなくなる。自分の立っている場所が。
自分迷子になったときに私が有効だと思うのが、日常から少し離れてみることだ。
どこでも良い。
海外旅行に行けるのであれば行ったら良いし、学生時代の友達を訪ねて、少し遠出してみても良い。
なんなら、少し時間を作ってドライブに出かけるのでも良いし、近所の、ふだん通勤とかで通らない道を散歩してみるのでも良い。
なんでも良いので、とにかく日常の自分から少しだけ離れてみることだ。
「俯瞰して見る」というようなこと。
実際に自分を俯瞰で見ることは出来ないのだけれど、日常から少し離れてみるだけで意外と気分転換になるし、普段の自分を省みたりできるものだ。
毎日を決まった場所で過ごしていると、決まった行動を取りやすいし、決まった思考に陥ってしまっていることに気づかなかったりする。
考え過ぎの頭をときほぐす、そのためには、日常過ごす空間から距離をあえてとってみる。
日常の空間にいるとどうしても、日々の考えなければいけないことが頭を侵食してくるから。
イメージとしては、ロールプレイング・ゲームの主人公になったみたいな感じ。
普段は自分を通してみる光景なので、会話をするときも自分から見た相手の顔しか見えない。
でも、ダンジョンに入ると画面の右隅とかにマップがあらわれ、自分の居場所を示してくれる。
行ったことのないところは黒くかすみがかかってよく見えなかったりするけれど、そこは行ったことない場所なんだと分かる。
一度通ったところはクリアに見える。
どの角を曲がるとそこにたどり着くか、示してくれる。
そしてたまに、自分が走っていたり戦っていたりする後ろ姿が見えたりもする。
主観だった自分から抜け出して、自分を外からながめるという瞬間。
ポイントポイントで目線が変わり、自分が見ているそのままのイメージになったり、上から見下ろしているような図になったり。
自分というゲームの主人公を色々な角度から見ることができるから、各所で自分の立ち位置を確認することが出来るから、ゲームって面白いのかもしれない。
そんな、ゲームの主人公の自分みたいに、たまには自分のなかから意識的に外に出てみることだ。
現実問題、ゲームの中のように自分を抜け出して一歩ひいたところから自分を見る、ということは出来ないのだけれど、少し日常から離れたところから、普段の自分のようすをちょっと眺めてみる。
まるで他人を見るみたいに。
そんな時間をたまに持つことが、自分の立ち位置を知るために大切なことなのじゃないか。
“自分探し”で世界の色々な場所をまわる人たちや、どこか知らない場所へ出かける人たちの見つけたいものってそういうものなんじゃないだろうか。
そうやって遠いところに出かけてふだんの自分を遠くから見てみると、いつもの自分が浮かび上がってくる。
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