哲学と、桑田真澄と、今の自分。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:ハル(ライティング・ゼミ平日コース)
「いろいろ考えていないで、力いっぱい振れば当たるだろ!」
監督から激しいゲキが飛ぶ。
力いっぱい振って打てれば、苦労はない。打てないから悩んでいるのだ。打てないから、練習しているんだ。毎日、毎日辛い練習に耐えているんだ……
完全なスランプだった。今日の試合で5試合連続ヒットが出ていない。三振も多くなった。打順もどんどん下げられて、完全にチームの足をひっぱっているのを日々感じている。毎日かわらず練習もしているし、打てない原因がこれといってわからない。答えがわからないまま暗闇の中、毎日毎日バットを振った。試合で打てない鬱憤を晴らすかのように、毎日遅くまで素振りを繰り返していた。
体育会や部活をやっていた人間ならわかるはずだが、コーチや監督の指示は絶対に受け入れなければならない。そして、小学6年生の自分も、完全服従。YESしかない世界。それが嫌だという感情も特にない。それが当たり前だと思っていたのだから、特に疑問も持たなかった。
「今日は試合後、罰としてグランド10周だな」
「今から腹筋100回見せてみろ」
どんなに疲れていようと、どんなに嫌だろうと、言われたらやるしかないのだ。上手くなるには、辛くても頑張って練習するしかない。練習すればするほど上手くなる。自分のように才能のない人は、試合に出たかったら人よりも練習するしか選択肢はないのだ。
小学生の頃、少年野球チームに所属してた僕のヒーローは、巨人のエース桑田真澄だった。身体も小柄なピッチャーで、ピンチの時にもポーカーフェイスで、大柄の打者に向かっていく姿が超絶かっこよかった。コントール抜群で、投げてよし、打ってよし、守ってよし。
素人の眼でもわかるくらい、野球の神様ここにあり。才能あふれる選手だった。
野球の練習から帰ると疲れていても、桑田選手が登板している試合は、かならず見ていた。
今の自分は下手くそすぎて、足元にも及ばないけど、もっと練習をして、いつか桑田選手のような一流のプロ野球選手になれたらいいなと夢見心地で眠りについていた。
残念ながら、子供の頃の夢は夢のまま終わってしまった。今でも野球は好きなので、野球番組はよくみるのだが、桑田選手が当時のことを振り返りながら話しているのをたまたま見た。当時のヒーローだった桑田選手が何を話すのかと思うと野球を離れた今の自分にも興味深く感じされた。
「PL学園は甲子園の名門校なので、周りの選手も上手で身体が大きい人ばかり。キヨなんかもそう。自分は身体も大きくないし、高校の時は、練習についていけなくて、野球をやめようと思っていました」
涼しい顔をしながら毎回闘争心あふれるマウンドさばきで、打者を打ち取っていた桑田選手からは想像もつかないコメントだった。
「自分は周りよりも身体が小さいので、まともに練習をしたら絶対身体を壊すと思いました。でも、自分はどうしてもプロに行きたかった。甲子園が目標じゃない。プロに行くためには、ここで潰されてはダメだ。なので、コーチの目を盗んで練習をするフリをしてよくさぼっていました」
衝撃だった。練習はすればするほどうまくなると思っていたし、コーチや監督にもそう言われてやってきた。真面目に練習に打ち込み、アドバイスは全部取り入れるようにしていた。
一流になれるかなれないかの分岐点。そう、桑田真澄は、いくら監督やコーチに言われても、自分がどうやったらこの中で、潰されないで生き残っていくかを自分の頭で考えて行動していたのだ。
「周りに惑わされず、自分の頭で考える」
考えてみれば、当時自分が打てなくなったのも、コーチから打撃フォームを変えるように指示を受けてからのことだった。ちょっと違和感を感じたのは覚えているが、そこまで深く考えることはしなかった。しかし、本当は物事のアプローチは1つではないように、打ち方も人それぞれ自分に合ったフォームがある。
仕事を通して、自分で事業を作る立場になってみると、この打撃フォームのことを思い出す。
小学生の頃には、先が見えない暗闇の中をただただ全力で突っ走っていた。
盲目的に。そして、無心に。
一方で、同じ時間を自分の頭で考えて行動している人間がいる。スポーツでも、仕事でも、自分に合ったやり方を自分で模索することが大切だ。一流になったプロ野球選手から学ぶ点は本当に多い。それぞれ野球に対してユニークなアプローチ方法を持っているからだ。
悩みやスランプは生きていれば誰にだって、かならず、ある。それはさけられない。これからもヒットの出ない試合はいつくるかもしれないし、数試合続くかもしれない。
しかし、桑田真澄から学んだこと。
それは、自分で考える。そして、自分の哲学を持つ。
これから数多くのスランプに陥ったとしても、大丈夫だ。
そんな時は、一度立ち止まって、考える。
答えは、ひとつではないのだ。
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