オンライン英会話の先生に教えてもらった英語以外のもの
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記事:ジル鹿島(ライティング・ゼミ朝コース)
今ではだいぶ落ち着いてきたが、大震災直後の数年間は、担当していた復興事業には危険で難儀な案件が多かった。家族にもまったく会えなかったし、睡眠不足とストレスが徐々に蓄積され、疲れが抜けなくなってきた。
このままではいけない。何か気分転換をしたいと思っていた。当時はスポーツをするにも肉体的にこれ以上負荷をかけるのはしんどかったし、飲みに行っても、すぐ仕事の話になってしまう。ストレス解消につながる、なにかをしたいと思っていた。
ちょうどそのころ、ネットでいい広告を見つけた。
「オンライン英会話」「1回につき129円の英会話」
公用語が英語のフィリピンの講師とスカイプを使って英会話を行うというものであった。日本人に安価な会話機会を与えるとともに優秀でも職に就けないフィリピンの大卒者に雇用をもたらす。今でこそ珍しくもない手法であるが、当時は斬新なアイデアに感じた。
私は海外で仕事をしてきた経験はあるものの、正規に英語を習ったりしたことが無かった。また、転職してから10年以上英語を使っていない。ここらで英語を習うのも悪くないかと考えて、さっそくオンライン授業とやらを申し込んでみた。
最初の数回こそスカイプの使い方もよくわからず、新鮮味があったが、徐々に飽きてきた。そのうち講師の予約一覧にバラつきがあるのを発見する。私は講師を選ぶ際に、英語教育の経歴やら、出身校などの肩書を重視して、ベテラン講師を選んでいた。一方、人気のある講師は、若手で機転がきくような人材に集中していた。私が退屈した理由が分かるような気がした。
そこで講師を選ぶ際は、キャリアよりも、予約が混んでいる人を狙うことに方針転換した。空き時間を狙って指名してみる。なるほど非常に生徒を飽きさせない面白い授業であった。ジョークもたくみで、ユーモアにあふれている。スマートだ。
「初級者でないのだったら、もっと会話中心にした方がいいよ」
とアドバイスをもらったので、トーイックやら文法やらの教材を使わないようにして、とにかくフリーディスカッションや新聞のトピックスなどを議論するようにした。
もともとの動機がストレス解消である。私も受講スタイルを勉強より、ただのおしゃべりに近いものにした。面白そうな講師と自由に話す。意外にも、そのほうが、もっと英語を話したい気分になった。
講師は圧倒的に女性が多い。社会背景によるのか、それとも語学能力は女性の方が優れているのか? たぶん前者の影響の方が大きいのだろうと推測される。日本サイドの私としても、地方に住むオジサンが、仕事以外で若い女性と話す機会があること自体新鮮だった。本当に精神的にも肉体的にもきつい時期だったが、英会話の時間が待ち遠しく、日々楽しくなってきた。
意外にも話題が日本文化になると、講師の興味は京都や着物とかより圧倒的に秋葉原やアニメの話題となる。ある日、「涼宮ハルヒを知っているか?」と言われ「知らない」と答えると、涼宮ハルヒの魅力をとうとうと教えられる羽目になった。確かに日本アニメや漫画は間違いなくアジア諸国に浸透していると実感した。
その後も、「ワンピースでは誰が好きか?」、「るろうに剣心の実写版をどう思うか?」、「ハンターハンターは?」と続いていく。講師が若い場合は、日本のコミックやアニメに影響されている人が多い。こうして私はサブカルチャーやアニメの知識を、フィリピンから逆輸入で仕入れることとなった。
また若い男性講師でギターが好きな講師がいて、私がリクエストすると、「じゃ今日は授業をやめて、いっしょに歌う?」と言って歌ったことも楽しい思い出だ。
つくづく彼女、彼等のホスピタリティには感心した。なんといっても人を褒める会話術は絶妙である。私の下手くそな英語にも、必ずいい点を見出してくれた。修正するのは発音ぐらいで、とにかく会話についてもチャレンジを最大限、褒めてくれた。
こうしてオンライン英会話を3年間程続けたと思う。殺伐とした日常における一服の清涼剤であった。しかも3年も続けると英語も、ある程度は会話ができるようになった。
しかし、オンライン英会話の先生に教えてもらったのは英語だけではなかった。
まず私の日本サブカルチャーの知識はほとんど彼女達に叩き込まれたものだった。
そしてホスピタリティ。相手が、楽しむようにずいぶん気を使ってくれる。言語体系が違うので、すぐには無理でも、日本語会話にも応用できると思う。
そして何よりコミュニケーションの楽しさを教えてもらった。まるで優秀なテニスのコーチの指導を受けた素人が、ラリーを楽しむかのように。
コミュニケーションはインプットだけでは成り立たない。アウトプットして始めて成り立つ。そんな当たり前で、最も大事な事を実感させてくれた。
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