選べ! もっと心の赴くままに
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:田中智子(ライティング・ゼミ平日コース)
「じゃあ私は、黒糖ミルクティー、タピオカ追加、アイス少なめの微糖で!」
ここまでたどり着くのに10分もかかってしまった。
暑い暑い沖縄の午前10時すぎ、歩きながら何か飲みたいよね、と国際通りのカフェに入った時のことだ。
さすがに朝がゆっくりの沖縄だけあって、国際通りを歩く人はまばらだった。
カフェにいるのも私たちだけだ。
沖縄在住の友人は「ここはいつも行列だから今がチャンスよ! 私も一度買いたかったの」と嬉しそうに言った。
さあ、ここからである。
まずはコーヒーか紅茶、ホットかアイスかを決めるのだが、これまた黒糖なのか、抹茶味なのか?それとも豆乳?などなど続々と選択肢は広がっていく。
うん、知ってる。このくらいは私も大丈夫。スタバで経験済みだし、と自分に言い聞かせながら一つ一つ決めていく。
タピオカを追加し、さあこれでオッケーよね?と思ったところからが、本当の始まりだった。
未知の世界へ突入である。
「では、甘さは普通を100として、70%、50%、微糖、無糖がございますが、どれになさいますか?」
「へ?? えっと。え? どういうこと? 普通なのにむちゃくちゃ甘いってこと?」
私が生きてきた世界では、普通を1として、甘くしたかったら数字が増えていくっていうのが定型だった。時代のものさしってどんどん変わっていくのねーと感心していると
「どうされますか?」と、容赦なく選択を迫られる。
全然、甘さの見当がつかない私達は、結局お客様が少ないのを幸いに、全てを味見させていただくという暴挙に出る、というか、ご親切を賜り、何とか微糖だの無糖だのに落ち着いたのであった。
これほどまでに決断力と判断力を必要とすることをナビゲートしなければならないなんて、
こりゃあ店員さんも大変だなあ、とちょっぴり同情つつ、笑顔を崩さないその実力に心底感心してしまった。
だって、絶対に私より迷う人っているはずだもの。
おまけに、ここは国際通り。日本中、世界中からこのシステムを知らない人がやってくる。
カスタマイズの時代ったって、これはどないやねん、と心の中で突っ込みまくってしまった。
あー疲れた。なんて思っていたら、最後に「では、氷はどのようにされますか?」
とまたもや細かい選択肢が用意されており。
こうやって、飲み物一つ決めるのに10分もかかってしまったのである。
しかし。しかし、なのである。これが飲み始めると3人が一斉に「おいしーーい! やっぱり微糖で良かったー」だの、「いやいや、氷なしでも十分冷たくて薄くならないから抜群よ!」だのと、それぞれがちょっと自慢気に言っては嬉しそうに飲んでいたのである。
まるで自分の選択が誰よりも1番だと言わんばかりに。
そうか、そうなのか。そういうことなのね!
私は人生の縮図を見たような気がした。
人が一日で選択できる回数、人生で良い選択ができる回数は決められている、というのを何度か聞いたことがある。
あのスティーブ・ジョブズも自分の選択の全てを仕事で使うためにお洋服はイッセイミヤケの黒タートルを何着も買っていた。
世界が尊敬する100人に選ばれたデザイナーの佐藤オオキさんも、毎日同じ服で食事や座る席まで同じだと、これまたテレビで見たことがある。
やはり「人生で質の良い判断ができる回数は決まっているから、その全てをデザインに使いたい」とおっしゃっていた。
私はそのブレのなさが羨ましくなった。何だかとても素敵だ。
「色」を大切なツールの1つとして仕事をしている私にとって、その日に着たい色の洋服を着ることは生理的にも心理的にも健やかに生きる上でかなり重要なことであり「ハッピーカラフルライフのすすめ」として講演したりしている。
そんな私が毎日同じお洋服のお二人を羨ましいと思ってしまった。やばい!
あれ?仕事で私は嘘をついてしまっているのか?
いやいや、そんなはずはない。
質問される方もいる。毎日選ぶのは面倒くさいです、と。
ですよね。そうなんですけどね。
でも。日々の生活の中で自分の感情に正直に、本当に求めるものを精度高く『選択』できている人はどのくらいいるのだろうか?
何かをデザインしたり、色や形の可能性を無限大に広げながら一つに決めていくお仕事をしている人や、超一流の方々は別にして。
毎日この色が着たい、これが食べたい、と思った時にそれを素直に選ぶことこそが、精度の高い選択ができる人になる第一歩なのだ。
多くの人は「嘘」をつく。
「じゃあ、私はナポリタン」とか言いながら、言ったはしから、あーやっぱりクリームパスタにすれば良かった、なんて思うことはザラだ。
周りの目を気にして、本当は真っ赤なワンピースを着たい気持ちなのに派手かしら、と無難な緑とか青のワンピースに変える。別に公務員じゃないし、赤を着ても何の問題もないのに。ただかなり元気そうで、やる気いっぱいに見えるだけだ。
人はそうやって日々自分を裏切り、本心ではない選択を繰り返す。
その「選択」の1つ1つが人生になっていくというのに。
もっと素直に選べるようになったら、どれほどの爽快感なのだろう。
私に「選択の醍醐味」を味わわせてくれた黒糖ミルクティー。
タピオカの歯ごたえが今も忘れられない。
今度行くことがあったら、アイスなしにしてみよう。
いやいや間違えた。
それはまた、その時に。心の赴くままに、である。
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