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レモンサワー理論


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:矢吹 祐真 (ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
女性にアプローチする時とセールスは似ている、誰しも想像に難くない。
 
そして、僕はどちらも苦手だ。
 
理想的なのは、自分(という商品)を他の男(競合)と差別化し、納得感を持ってもらった上で相手にYesと言って(契約して)もらうことだ。
 
そのために、
前提として身なりは清潔に、
いきなり売り込むのではなく、
徐々に距離を詰め関係を構築し、
ここぞという時に安心感をあたえる。
 
誰が書いたかもわからないまとめサイトやハウツー本が大好きな僕が今まで読んできたものには、大体同じようなことが書かれている。
 
しかし、1つとして実際に役に立った記憶はない。
 
話は変わるが、最近、
「早朝5時出社、上司を完コピ。前田裕二の証券マン時代」
というインタビュー記事を最近読んだ。
前田さんといえば、石原さとみさんとの熱愛が発覚した、最近話題の若手起業家(ストリーミング配信サービス、showroomの創業者)である。
 
その題名にもあるように、前田さんは最初からITベンチャー業界にいたのではなく、早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系金融のUBS証券に就職した際、尊敬する上司の全てを真似するところからはじめたという。
 
「(上司である)宇田川さんの喋り方・口癖から、電話のテンション、身振り手振りや、ノートや持ち物に至るまで、本当にすべてマネした」と語り、こう続けている。
「いま、目標としたいと思える人がいればそれはとてもラッキーです。その方のスタイルを徹底的に吸収することが、成功への近道だと考えています」と。
幸運なことに、僕は目標としたい先輩が身近にいる。
身近どころか、シェアハウスというかたちで一緒に住んでいる。
 
尊敬している点は山のようにあるのだが、
その中でも特筆したいことが1つある。
 
その先輩はとにかくモテるのだ。
 
ホリエモンこと、堀江貴文さんは「美女と付き合えるのは、美女に告白したやつだけ」と言っていたが、先輩は行く先々で知り合った女性(しかもなぜか美人ばかり)からアプローチ(告白)されている。
 
仕事ができて、話も面白いので、ある程度モテるのは納得している。
 
しかし、イケメンでもなく、平均的な身長で、体重は90kgをゆうに超えているのに、なぜそこまでモテるのか気になって、深夜のバーミヤンで聞いたことがある。
 
「先輩はなんでそんなにモテるんですか?」
 
その時教えてもらった内容が、
具体的かつ真理を突いており、様々な局面で役に立ったので、
勝手に「レモンサワー理論」と名付けて紹介したい。
 
広島県出身で高校時代まで本気で野球をやっていた先輩は、熱烈なカープファンである。
2年前の2016年9月、カープが25年ぶりのリーグ優勝をかけた大事な試合に、先輩は同じ広島県出身の女子とその試合を観戦しに行った。
 
その年は特に残暑が厳しく、球場に入る列に並ぶだけで汗が止まらないような日だった。
そんな日に球場で飲むビールは格段に美味しく、野球観戦の大きな楽しみの1つである。
 
おそらく、一緒に行ったその女の子も、球場の中で席についたらビールを飲むと想像していたに違いない。
 
しかし、先輩は球場に着くやいなや、リュックの中からキンキンに冷えたレモンサワーの缶を取り出して、女の子に渡した。
 
すると、女の子は、まるで何かとてつもないサプライズをされたかのように驚いた。
 
「え、なんで!! なんでわかるの!!! それはヤバい!笑」
驚きと喜びで笑顔が溢れでた。
 
その女の子はレモンサワーが好きで、飲み会などではいつも、
レモンサワーを頼んでいた。
 
その様子をみて、先輩は言われずともしっかりと認識していたのだ。
この子はレモンサワーが好きなのだと。
 
そして、球場ではビールの売り子さんに比べて、それ以外の飲み物を売っている売り子さんの数は圧倒的に少なくて捕まえづらい。
 
女の子の嗜好と球場の状況を踏まえて、冷えたレモンサワーを用意していたのだ。
 
(ちなみに、神宮球場では最初1杯だけ、指定の紙コップに詰め替えれば持ち込むことが許されている)
 
「これはモテるわ……笑」と、
かねてより先輩と仲の良かった女の子は素直にそう告げたらしく、
これがモテる理由らしいと先輩は僕に教えてくれた。
 
相手の潜在的ニーズを、最適なタイミングで提供する。
 
セールスとしても完璧と言っても過言ではないんじゃないだろうか。
 
近年セールスにおいては、SalesforceやMarketoなど優秀なマーケティングツールが台頭し、ユーザーの属性や動きを管理から分析までしてくれるが、恋愛ではそうもいかない。
 
結局は人対人である。
相手のことにどこまで興味をもてるか。
 
それが、モテるための第一歩だと教わった。
 
それから、僕は一緒に飲みに行く人が何を頼むか見るのが、
楽しみで仕方なくなった。
 
ずっとビールの人もいれば、最初だけビールであとはハイボールの人もいるし、ウーロンハイの人もいる。
 
その人が何か好きか見極めるためには、頼んでもらわなくてはいけない。
必然的に、空いているグラスが気になるようになった。
 
今までは「何にしますか?」としか言えなかったが、
「さっきと同じハイボールでいいですか?」と聞き方が変わった。
 
お店を選ぶ時も、「この人はワインが好きだったっけ」と、
頭をよぎるようになった。
 
相手の言動や行動から相手の「好き」を見つけ、
まるでトランプの神経衰弱でもしているように答え合わせしていく。
 
世の中に、人に対して無関心だった僕は今、
ゲームのように楽しみながらそれをしている。
 
「レモンサワー理論」は恋愛だけでなく、
人との関わり方まで根本的に変えてくれた、バイブルみたいな存在である。

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2018-09-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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