無言のコミュニケーション
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:山田楓(ライティング・ゼミ木曜コース)
「かゆいところはありませんか?」
そんな風に聞かれることが多いのが美容室で、
美容師さんに髪を洗ってもらっている時だ。
美容師さんにしてもらうシャンプーの時間って
何であんなに気持ちがいいんだろう。
何であんなに早く時間が経ってしまうんだろう。
そりゃ髪の毛を扱うプロだからだよと言われてしまうかもしれないが、
自分で自分の髪を洗っている時には感じることのできない
何とも言えない心地よさがある。
ああ、このシャンプーの時間がずっと続けばいいのにとさえ思ってしまう。
あの眠りに落ちるか落ちないかみたいな絶妙な時間が
自分にとってはどうやら幸せを感じるポイントの一つらしい。
そういえば、なぜ気持ちがいいんだろうかと考えたときに、
あの時間は話さないことが許されているからなんじゃないかと
思ったことがある。
私は髪を切ってもらっている時にべらべらと話すのがあまり好きではない。
最近のニュースとか日常生活のこととか
雑誌を見ている時に「この服流行ってますよねー」とか言われても
正直ちょっと反応に困ってしまう。
話さなくてはいけない、というのがどうやら私は苦手らしい。
だからこそ言葉を介さないことが許されるような気がする
あのシャンプーの時間が私は好きなのだ。
思えば日本には「空気を読む」や「あうんの呼吸」といった言葉が存在する。
わざわざ言葉を発して互いにコミュニケーションをとらなくても、
仲間内であればそんなことくらい分かるのが当たり前、という意味だと
私は解釈している。
むしろ分からなかったら仲間として認めてもらえないことさえあり、
後で空気を読めよと言われたりする。
このようにマイナスなイメージを持ってして使われる言葉でもある。
でも、この言葉を介さないコミュニケーションが信頼出来る人同士になると
とたんにプラスのイメージになり、心地いいような気がする。
例えば、高校の時バレーボール部だった私はこう思っていた。
「仲間のパスはここに来るとわかっている」
「仲間はこう動くとわかっている」
「だから点数を重ねて、試合に勝つことができた」
「きっと信頼している関係同士だからこそ成り立つあうんの呼吸ってやつだ」
仲間内における言葉を発さないでも相手の気持ちが何となく分かる
自分というのは何だか気持ちが良い。
偉い存在になれた気がするし、
自分が信頼している相手に「言葉で言わなくても分かってくれるよね」とか
言われたら実はちょっと嬉しい時もあったりする。
もしかしたら私は言葉でのコミュニケーションに疲れているのかもしれない。
LINEやSNSで四六時中友達とつながっているのは当たり前だし、
友達と遊んでいる時に喋るのは当たり前だ。
話題を探しておかないと、話が途切れるという不安があったりもする。
むしろ誰かと繋がっていない時の方が珍しい。
だからこそ時々、一緒にいるだけでいい、言葉を介さなくてもいい人たちと
過ごす時間が、自分にとってとても大切なのだ。
真っ先に思い浮かぶ存在は幼馴染の親友のことである。
何だかよくわからないけど、彼女は私が行動することを予測できる。
私も何となく彼女がどう行動するかはわかる。
それに彼女は私の行動の背景にある思いさえ当ててしまうこともある。
何でそんなに私のことがわかるの、と不思議でしかない。
もちろん言葉によるコミュニケーションが大事であることは分かっている。
自分の表現力も磨くべきだと思うし、伝える努力は怠らない方がいいのだろう。
言葉にしないと伝わらないことがあることも分かっている。
言葉にしたとしても伝わらないことだってあることも知っている。
でも私は、親友や恋人のような自分にとって気を許せる人たちと
ただただ無言で過ごす、同じ空間にいるだけ、
無言でコミュニケーションをしているという時間を
あえて意識的に過ごしたいと思っている。
そうすることで何だかいろんなものが浄化されている気がするし、
その時間があるから、他のしんどいこととか頑張れる気がする。
何よりも自分がリラックスできるし、充電されていると感じる。
その時間を過ごすためには自分だけが心地いいと感じているんじゃなくて、
相手も心地いいと感じてくれていることがすごく重要なんだけれど。
そのためには話すことで関係性を作ることは避けては通れないのだろう。
無言で過ごせる時間、ってある一種その人との関係性を図る
バロメーターみたいな役割だと思う。
話そうと思えば話せるんだけどあえて話さない、という
選択肢を取っているあの無言の時間が何とも心地いいのだ。
とはいっても誰かといる時に話さないというのは難しいことだと思う。
だからやっぱり定期的に自分が信頼している人たちに会いたい。
あえて話さないという無言のコミュニケーションの時間を楽しむために。
話されなくても許されるという恩恵を享受するために。
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