人生72年説。36歳はお昼の12時。
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記事:川口 民夫(ライティング・ゼミ木曜コース)
志村けんが唱える「人生72年説」はご存知だろうか。
著書『志村流』の中で、語られるのが「人生72年説」。これは、人生を72年で捉えると自分の年齢を3で割ると、1日に置き換えた時に何時に相当する年齢なのか、感覚的に捉えられて良いというシンプルな説だ。つまり18歳であれば、[18÷3=6]で、まだ朝6時ということになるし、51歳であれば[51÷3=17]で、夕方17時に相当することになる。
大学卒業後、無職でふらふらしていた期間の22歳の頃にこの本を読んだ。
7時20分。まだ朝は早くてまどろみの中でふとんから抜け出せずにいた時間。
この説には妙に合点がいって、なるほどと思った。自分もこの説に沿って人生を過ごしていけるといいなと感じた。
若かりし頃の記憶にありがちな事だけど、その後「人生72年説」の事なんてすっかり忘れてしまって毎日を忙しく過ごしていた。仕事にも前のめりに取り組みながら、余暇も旅行したり、社会人サークルを主催したりとやるべきことにどっぷりとつかっていた。飛び回って過ごしていたからこそ、思い出す機会がなかっただけなのかもしれない。
そんな風にそれなりにバタバタと日々を過ごしていたなかだったけど、36歳の誕生日を迎えた時に、この説を思い出した。
なんだか昔に設定していたアラームがいきなり鳴り出す感じ。設定していた事なんて覚えてなかったのに。
正午12時。気付けば、もうランチタイムになっていたのか、と唖然とした。それなりに動き回ってきたので腹は空いている。
この昼休憩に入る時間でこれまでの人生を振り返ってみようと思った。人生72年で捉えると、36歳は折り返し地点。もう半分までやってきてしまった。
これまでの人生を振り返ってみて、一番最初に素直に自分の中からこぼれた言葉は、
「オレは、どれだけ未来の事を案じながら、過ごしてきてしまったのだろうか」
というものだった。
小学生・中学生の頃には、「いい高校に行っておかないと、その後大変になるからね」と言われそれなりに真面目に勉強して過ごし、いい高校に行った後も、「いい大学に行かないと、その後大変になるからね」と言われて、また再び真面目に過ごす。
いい大学に行った後も、「いい会社に行かないと、その後で大変になるからね」と言われ、そしていい会社に入っても「社内でも頑張らないと出世できなくて、その後で大変になるからね」……。
いわば、不確実な未来を安全に対処するために、世の中で言われる「いい高校・いい大学・いい会社」といったものを目指して、随分と時間を費やしてきてしまったのだろうかと震えた。
もちろん、それなりに好きなこともやってきているつもりではいた。けれども、自分が最期の瞬間を迎える時に「あー、何も危ない事が起きない人生で良かった」と言えるのをゴールに毎日を過ごしている気がした。
――――自分の送りたい人生はそんなものではない。
人生の折り返し地点を迎えた時にそう思えて良かった。
往路から復路に入る中で、どんな人生を過ごせると良いかと考えた。
自分は、自分が往生するタイミングで「人生、最高に楽しかった!」と言えるようにありたい。
そのためには何をする事が必要か……、そうだ! まずはやりたい事と思っていた事を一つずつやっていく事が必要だ。そうすれば自分のやりたいという気持ちに背を向けずに、ひとつずつなりたい自分に近付いていけるはずだ。
最初に仲間を100人集めて、やりたい事をつぶやくFacebookのグループを作った。どんなレベルのやりたい事でも良いから皆がつぶやくグループ。やりたい事は、「宇宙旅行したい」という壮大なものから、「日暮里のザクロに行きたい」といった日常的なものでもレベル感は問わない。自分がやりたいと思った気持ちを大事に書き込みをすれば備忘録的なものになるし、他人のやりたいことを見れば刺激を受けて新しいことをやりたくなる。
楽しい人生を送ることを決めて、その一歩にこのグループを作ったことは徐々に自分の人生に影響を与え始めた。
「空中ブランコをやりたい」と仲間が書き込めば、その書き込みを元に仲間を募って新幹線で名古屋まで新幹線で向かう。
「生まれ年のワインをガブ飲みしたい」と自分が書き込めば、また仲間が集まってワインを飲む。
やりたい事の循環。
そんな中で大学時代から抱いていた、「自分の会社を持ちたい」という夢をそのグループに書き込む。
あれ、自分の会社を持つのって登記するだけの話だから、いつでもできるはずだなと気付く。
何の事業をするか決めてから準備してといった段取りを取っていると、もっと自分の会社を持つのが遅くなる。
やりたい範囲の事業領域を書き出し(具体的な事業はひとつも決まってないけれど)、一昨年に登記し、無事会社を持つにいたった。自分の会社の社名を考える時は最高に楽しかった。
なんでも先延ばしにせずにやりたい事をやっていくものだ。
36歳に楽しく暮らすと決めて3年経った。
先月、14年間勤めた大手企業を退職し、今月から自分の会社をメインに働き出した。
勢いで作った会社でやっていくことになろうとは当時思っていなかったけれども、自分がアクションを取って掴んできたものはConnecting the dotsのように繋がっていくものだと感じている。
現在39歳。13時。
そろそろお昼休みが終わって午後の仕事が開始する。17時までは休まず走り続けたい。
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