さようなら天狼院ライティング・ゼミ!
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:渡辺ことり(ライティング・ゼミ平日コース)
6月の頭に、創作ワークショップの講師依頼が来た。
「文章で豊かになる」というテーマである。
依頼主は仕事でお世話になっている方だった。
私は40歳から物語を書き始め、今年で創作歴12年になる。
文章がうまいわけではないが、書くことが習慣になっているのは事実だ。加えて、情報収集が得意で、文章、物語にまつわる情報に鋭い。
だからお声がかかったのだろう。
しかし私には大きな懸念材料があった。
52年間の人生で何度か言葉を失った。
いじめが原因で、口がきけなくなったのだ。
その後遺症だろうか。
今でもかしこまった場所に出ると、緊張してしどろもどろになる。
情報交換会や勉強会などの簡単な挨拶で、声が裏返る人間なんて自分以外に見たことがない。
そんな私が人前で何かを話すだなんて、できっこないのだ。
しかし結局私は依頼を引き受けた。
コミュニケーションの苦手な私が、壇上に立つ。
私にとっては難易度の高いこのミッションをクリアできれば、物書きとしても人間としても、大きく成長できるに違いない。
人生には負荷が必要だと思っている、少年漫画脳の私は、今までもそうやって生きてきた。
私は早々にワークショップ用の原稿を書き上げた。
12年間の創作活動で培ったノウハウを、その中にたっぷり詰め込んだ。
さて同時期に、私は天狼院書店ライティング・ゼミへ入会した。
「人生を変えるゼミ」とのキャッチコピーに一抹の胡散臭さを感じたものの、秘伝のタレと言われる「ABCメソッド」への興味には抗えなかった。
月2回ある三浦講師の講義は、目から鱗の連続で、通信受講ではあるが、月謝以上の価値があると感じた。
毎週月曜日ごとに2000文字の課題が課せられていて、スタッフの選考を通過するとオフィシャルサイトに掲載される。
受講期間4ヶ月の間に掲載チャンスは16回。
私は講義で教わったポイントをきっちり守り、課題を作成した。
PTAでの出来事、幼少期のいじめ体験、魔女のように恐ろしい先生との遭遇、中学2年で「ミス不細工」に選ばれたこと。
振り返ってみれば普段の私なら、絶対に書かないタイプの記事ばかり。
自分のことを話すのは嫌いだ。特に過去の自分になど一切興味ない。
常に前だけを向いていたい。普段の私はプライベートな話も思い出話もめったにしない。
記事にするなんて論外だ。しかし、三浦さんの教えを守れば、自然に過去と向き合う流れになっていく。
ありがたいことに14回、天狼院のサイトに掲載された。
すると数々の奇跡が起きた。
「1作目から面白いなって思って、3作目で我慢できずに感想を送ってしまいました」
ある受講生仲間からのメッセージが、皮切りだった。
「こんな言葉がふさわしいかどうかわからないんだけど、面白かった。私は子供の頃のあなたと友達になりたい」
これは中学時代の同級生にかけられた言葉だ。
「私もライティング・ゼミに入会しました」
恩師からそんな報告が届いた。
恋の話が掲載された後は、5人の女友達から「ときめいた!」とコメントをもらった。
作業場のメンバーから、たくさんの感想を頂いた。
そしてなんと8月には、遠方にお住まいの受講生仲間が、私の作業場に立ち寄ってくださった。
時は命だ。その時を費やして読まれると言う事は、誰かの命を頂くということだ。
たくさんの人たちが、私の作ったコンテンツに時間を費やし、様々なアクションをとってくださった。
なんとありがたく贅沢なことだろう。
これ以上の幸せは無い。
9月第3週の水曜日、最後の講義が終わった後、私は1週間後に迫っていたワークショップの原稿を、ビリビリに破り捨てた。
「自分への負荷をかける」だなんて、甘っちょろい考えなど、吹き飛んでいた。
大切なのは自分じゃない。
来てくださる方々に、どれだけのものを伝えられるか。
それ以外はゴミみたいなものだ。
どんなに悲しいときも、私のとなりにそっと寄り添ってくれた物語。
それは膝を抱えた私に差し出された、1輪の花だった。
そして私はこの4ヶ月で、多くの方々からたくさんの花をいただいた。
私の中のささやかな物語を、テキストにのせて開示する。
天狼院ライティング・ゼミに入らなければ、三浦さんに、そそのかされねば、絶対にやらなかった行為である。
その結果、たくさんの奇跡が落ちてきて、私の人生は4ヶ月前とは、まるっきり違うものになっていた。
書く喜びを、物語に触れることで得られる幸せを、一人でも多くの人に味わってほしい。
物語は人生を変える。
書くことで、本当に人生は豊かになる。
花を差し出す人生に、片足を一歩、踏み出してみよう。
あなた達の作った物語が、誰かの胸に届いた時、きっと奇跡が落ちてくる。
花に囲まれて、生きてみようよ。
私はワークショップの受講生に、そう伝えたくて、必死にキーボードを叩いた。
そしてワークショップの日がやってきた。
緊張など、まるでなかった。
思いはただ一つだけ。
「来てくださった人たちを幸せにしたい」
私は語り始めた。
「ある小説大賞に応募した時、評価はEランクだったんです」
ノウハウなんて必要ない。書き方の本なんて、山程ある。
大切なのは、目の前の人の感情を揺さぶること。
そのためには、まず自分をさらけ出す。
ライティング・ゼミで叩き込まれたメソッドだ。
ワークショップが終わり、受講生から温かい言葉を頂いた。
「何かをやってみよう、という情熱が蘇っただけでも、足を運んだ甲斐がありました」
「はっきりわかっている事は、今日が私のリスタートだと言うことです」
伝わった。
9月26日の出来事だった。
4ヶ月間のライティング・ゼミ生活で起きた、最後の、そして最高に嬉しい奇跡だった。
そしてとうとう、これが最後の課題だ。
エピソードを書き上げて、後はオチをつけるだけ……それなのに、指が動かない。
通信なのに。モニター越しの講義だったのに。課題に毎週四苦八苦していたのに。
自分の居場所をひとつ、失くしたような喪失感に見舞われて、思わず顔をゆがめて笑ってしまう。
16回目の記事を提出して、メディアグランプリの結果が出れば、4ヶ月の闘いは終了だ。
私は別なフィールドで、教えられたことを試していく。
そのために、ライティング・ゼミの門を叩いた。
私は大きく息を吸い込んで、最後の言葉を打ち込んでいく。
伝えたいことは、2つだけ。
さようなら。天狼院ライティング・ゼミ。
ありがとう。天狼院ライティング・ゼミ。
胡散臭いと感じたキャッチコピーは、本物だった。
少なくとも、私にとっては。
「誰かの人生を変える」仕事を、私も一生追い続ける。
物語という、美しい花束を、両手いっぱいに抱えながら。
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