メディアグランプリ

我が家のトイレは「伝わる空間」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本 陽子(ライティング・ゼミ平日コース)

みなさんのご自宅のトイレは、どのような空間でしょうか。

好きな雑誌や本などを置いて、リラックスできる空間でしょうか。
飾り物など敢えて置かずに、シンプルな空間を演出されているでしょうか。
私はどちらのタイプも好きです。

しかし、ここ最近の我が家のトイレはそのどちらでもなく、常に紙が数枚貼ってあるというトイレになりました。
これにより家族が日々成長しています。

初めはスケジュールを書き込んだカレンダーと小さな絵が飾ってある、よくあるトイレだったのが
家族が増え、課題がでてくるごとに変化しました。

育児と家事に翻弄されていた数年前のある日……。
些細なことで夫婦喧嘩にあなりました。
1人で回らなくなっていた私の気持ちが爆発して、夫に家事手伝いをヒステリックに求めました。その後、「1週間に1回の洗濯物、子供の寝かしつけをやる事……」など約束事を決めました。
最初の数週間はきちんと守って手伝ってくれていた夫でしたが、忙しい日常に流されてそんな約束をしたことをお互い忘れてしまっていました。
夫の手伝いの無い中で再び私の負担が増し、そのうち「なんでいつも手伝ってくれないのか。なぜ私ばかり……」と喧嘩が始まります。恥ずかしい事ですが、これを何度か繰り返しました。

そこで私は、1枚の紙に、その約束事を書いてトイレに貼りました。

忙しい仕事から疲れて帰ってきた夫に、私が「家事も手伝ってよ」というのはもちろん嫌がれますし、まして感情的に伝えると喧嘩になりやすかったからです。

毎日トイレでその約束事を目にする家族、
夫は意識して週2くらいのペースで洗濯を手伝ってくれるようになり、最近は娘が、「パパ洗濯物やった?」と気にしてくれています。

また別の日のこと、

ピアノを始めた娘が、音符をもう少し早く読めるようになりたいと悩んでいたので、毎日少しづつ一緒にやろうね、と伝えましたが、私も働いて保育園のお迎えから帰ってご飯作ってお風呂……。と日常を過ごしていると、毎日楽譜を用意して一緒に読むという時間がなかなかとれず、結局何もやらない日が続いてしまっていました。
たまに頑張って準備をしても、娘の方が勉強の気分ではないなどの理由でやらない! となるので私はイライラしました。せっかく用意してるのにと。

その用意した1枚のプリントをトイレに貼りました。

娘はトイレに入り気が向いたときに、自分で音符を読もうとしていました。時々私に質問してきたりもしました。
娘は、1週間後には貼った音符がよめるようなりました。

それどころか、兄や夫までその音符をよんで娘と音符の話で盛り上がったりしていました。
娘は、目の前にはってある音符のクイズをもっと作ってほしいと言い出しました。

文章にしてトイレに貼って伝えると、皆素直に聞いてくれて、やる気までも引き出すのはなぜなのでしょう。

先日、仕事柄デザインに関する書籍を読んだとき、
「良いデザインの条件」の紹介の一部に
・良いデザインは、控えめで日常的である
・良いデザインは、状況に合わせる
・良いデザインは人間の能力を強化する
という内容がありました。
これだと思いました。

私が感情的に、大きい声でヒステリックに伝えても伝わらないということ。
その時にインパクトは伝わっても、内容が持続しない。
また、相手にその内容を受け入れられるコンディションとそうでないコンデイションがあるということ。
伝わりやすいタイミングがあり、伝わったときにやる気が出るのだということを知りました。

トイレに貼ってあるたった数行のメッセージは、控えめで、日常的なのです。
そして、自分のコンディションがよいときに目に入ると素直に聞き入れ自分のものにして、自主的に行動に移せるのです。

トイレという空間は、他に情報が少なく狭くてシンプルなのでしょう。
押しつけがましくなく、個人の状況に合わせてくれる「伝わる空間」になっていたのです。

今は昔と違って、自宅のパソコンやスマホで様々な情報がすぐに手に入ります。
すばらしい先人たちの知恵や経験なども豊富にあふれています。

直接話すと感情が入り喧嘩になってしまうようなことも
ネット上にある第三者の客観的な意見として文字にする。

それを「伝わる空間」にセットすると、家族にじわじわと伝わっていくということです。

今、その「伝わる空間」に私が置いたメッセージは、

サッカー選手になりたい息子へ、
「ネガティブな気持ちをポジティブに切り替える方法」
試合で失点してしまうと、ネガティブな気持ちをひきずってしまう息子のために、こちらもネットから知恵をいただき、プリントしたものを「伝わる空間」へ貼りました。

数日後、それを読んだ息子が
「ママー、気持ちの切り替え方がわかったよ。今度落ち込んだ時、切り替えるから見ててね」

と言っています。すぐは成功できないでしょうが、毎回その紙を見るたび、
繰り返し気持ちの切り替えが上手になるようにチャレンジしてくれると思います。

私が同じ内容を言うと反発して絶対に聞かない第一反抗期の息子が、
素直にチャレンジしてくれるのです。

我が家の一畳ほどの小さなスペースでの話ですが、
確実に我が家を成長させてくれる空間になっています。

感情的になってしまう、または押しつけがましくなってしまう内容だけど、家族に伝えたいことを、さりげなくトイレに貼ってみてはいかがでしょうか。

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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