自分が好き、とは
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Hawa(ライティング・ゼミ日曜コース)
「あなたは、自分のことが好きですか」
小学校の何年生だったかの道徳の授業参観で、この質問にみんなで答えよう、というのをやった。大好き、まあまあ好き、まあまあ嫌い、大嫌いの四択からえらんで答える。大体の人が、まあまあ好き、まあまあ嫌い、ぐらいに収まっていた。クラスメイトの何人か、自分に自信のありそうな人は、大好き、と言っていたような気がする。わたしはただ一人、迷うことなく大嫌いと答えた。
自分のことが好きな人なんて、いないと思っていたし、好きという感情は、他人に対してのみ持つものだと思っていたから、大半のクラスメイトが自分のことが好きなのだという事実に驚いた。
わたしは、わたしが嫌いだった。好きになる要素なんて、ないと思っていた。
わたしは、大人に振り向いてほしくてたまらなかったのだけれど、思うようには振り向いてもらえない子供だった。大人に振り向いてもらえない、かまってもらえない子は悪い子だ、と思っていたから、そんな自分が嫌いで仕方がなかった。
三人兄弟のいちばん上で、しっかりすることを強要されるシーンが多かったからか、齢のわりに大人びた、扱いづらい子だったと思う。そしてそもそも、ちっちゃくて、目がクリクリで、ロングのストレートヘアで、にこにこ笑っている「かわいらしい」 子供とは正反対だった。
わたしの他人からの評価は、いつも「しっかりしている」で、「かわいらしい」ではない。それがすごく嫌だった。かわいい子には人が集まるのに、しっかりしている子は放っておいても大丈夫だと思われるから。でも、しっかりしなくなるとわたしの居場所がなくなる。そっちのほうが怖かった。
ちょっとでも、かわいい子に近づこうと、鏡の前に立って、笑おうと思っても笑い方がわからない。アニメのキャラクターみたいに口角を上げてはみるけれど、その顔すら気持ち悪い。無表情のほうがまだマシ。だから、小学校の頃のわたしの笑顔の写真は、超レアだ。
こんな自分、大っ嫌い。
わたしだって、もっと、かわいらしくなりたい。
まあ、図体がでかいのはしょうがない。目がクリクリしてないのもしょうがない。笑顔が気持ち悪いのも、これはどうしようもない。でも、髪の毛をロングのストレートにすることはできるんじゃないだろうか。
と思ったわたしは、小学6年の時、ストレートパーマを当てた。
これが、失敗だった。もう、大失敗。
念願かなってストレートヘアを手に入れたのだけれど、薬剤が強すぎて髪がごっそり抜けてしまったのだ。幸い、ハゲはしなかったが、けっこう落ち込んだ。
やっぱり、自分は自分であって、変えられないんだ。
こう思ったからといって、自分が好きで好きでたまらない人に突如変身できるわけではなかった。変えられないことを、しかたがない、と受け入れられるようになるまで、小学校を卒業してから2年くらいはかかったような気がする。
それは、持って生まれた容姿以外で、自分を輝かせる方法があると知ったから。というか、思いのほか、自分ってかっこいい、って思えたから。
それは、一生懸命部活に打ち込む自分の姿だった。
中学のころ、わたしは卓球部にいて、毎週のように試合をし、試合の反省をするためにその様子をコーチが録画していてくれていた。そのビデオを見せてもらったときに、
「なんか、自分、いいな」
と思った。
卓球をしている自分は、勝つことに一生懸命で。決め球が決まった時の顔は、とてもうれしそうで。
「卓球をしている自分は好きだ」
と思えるようになった。
べつに、かわいくなくてもいっか。
何かに一生懸命になれる自分。それをして、輝いている自分。そんな自分が好きだ。
そして、高校生活を経て、今。
わたしは、どんなときも自分が好きだ。
容姿も性格も昔のまんま。人間は、そうそうかわらない。ちょっとは成長しているだろうけれど、根っこの部分は同じ。目が小さくて髪がもっさりしていて、かわいげがないところはそのまんま。
でも、それも丸ごと全部、好きだ。
もちろん、自分がいやになることはある。思うようにいかないことだらけで、落ち込むこともある。逃げ出したくなる時もある。
それでも、好きだ。
自分が好きって、きっと、そういうこと。欠点ごと自分を受け入れてあげること。変えられないところは、変えられないって認めて、前向きにあきらめること。笑って、しょうがないじゃんか、と思えるようになること。
別に特別自分が好きになれるような、素晴らしい部分はなくてもいい。ただ、自分の存在を肯定してあげること。
好きになるって、そういうことなんだと思う。
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