フィリピン人留学生が気づかせてくれた大切なこと
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記事:前田 政哉(ライティング・ゼミ平日コース)
大阪の街を歩いていると、昔と比べて明らかに外国人の数が増えてきている。大阪ミナミの繁華街を歩いていると、日本語が聞こえないくらい沢山の外国人が行き来している。
たまに外国人に道を聞かれたりするが、中学校から大学まで英語を勉強していたと思えないくらいに、口から英語が出てこない。簡単な英単語とジェスチャーとスマートフォンの地図アプリを見せて、ようやく道順を伝えることができる。
世界人口70憶人の4人に1人、つまり17.5億人が英語を話すそうだ。もう少し英語が話せたら、日本人だけではない、もっと沢山の人と話せて面白いのになと思い、何度か英会話にチャレンジしたことがある。本を買ってみたり、英会話教室に通ってみたりしたが、いつも途中で挫折してしまっていた。
英会話教室に通っていて気になっていたのが、英語ネイティブの先生が私の名前を少し呼びにくそうにしていたことだ。私の名前は「まさや」というのだが、どこにイントネーションを置いたら良いのか分からないようで、担当の先生は「マサーヤ」と「サ」の部分にアクセントをつけて私のことを読んでいた。
今私が働いている会社では、外国人も働いており、その外国人スタッフは私以外のことは名前で呼んでいるのに、理由はわからないが、私のことだけ苗字で呼ぶ。やはり、私の名前が呼びにくいのか、もしくは嫌われているのかはわからないが、あまり名前で呼んでもらえない。
外国人に名前を呼んでもらえない経験より前から、私は自分の名前があまり好きではなかったし、自信が持てなかった。
親に名前の由来を聞いても、父親の名前から一文字もらって、占い師に名前の漢字の画数をみてもらって決めたとのこと。理由はこれだけでもよいが、少し物足りない。もう少し、深い思いや願いや思いが込められていてもよい気がする。
それに、私は名前で呼んでもらった経験が少ない。私は長男で弟がひとりいる。物心ついたときから両親には「お兄ちゃん」と言われていた。じいちゃんばあちゃんや親戚の人からは「まさや」という名前なので「まあちゃん」と呼ばれていた。
小学校から高校までは、顔がおさるのモンッチッチに似ているということで、「モンチ」と呼ばれていた。中学校の時には先生からもモンチと呼ばれていて、授業中にあてられたときも、「モンチ」と呼ばれていた。
ニックネームで呼ばれることは多かったが、本名である「まさや」と呼んでくれる人は、数えるほどしかない気がする。
そんなに私の名前は呼びにくいのだろうか。もっと呼びやすい名前に改名しようかと何度も考えたりしていた。
そんな時、私のことを苗字で呼ばない外国人インターンシップ生がやってきた。私が勤めている会社では、外国人学生の向けのインターンシップ制度がある。その制度を利用してやってきたのが、フィリピン人インターンシップ生のワキール君だ。
彼はフィリピンの大学を卒業したが、やりたい事が見つからず、就職せずにインターンシップに参加したりしているそうだ。お父さんはフィリピンで会社を経営、お兄さんはシンガポールで会社を起業していたりして、ビジネスに関して才能のある家系のようだが、ワキール君自身はアルバイトもしたことがないと言っていた。
素直でとても良いやつだったが、少し子供っぽかった。暇があれば、ドラゴンボールの話をしていた。鳥山明先生はとてつもなく最高だとよく言っていた。フィリピンにいるときは、よく夜遊びをしていたそうだが、インターンシップが休みの日は家でアニメを見ていてほとんど外出をしていなかった。
インターンシップが始まり1か月くらいたったとき、ワキール君にあまり元気がなく、体調が悪そうだった。ご飯は作って食べているのか聞くと、コンビニ弁当を食べているという。
毎日コンビニ弁当だと体に悪いよというと、「日本の食べ物は全部体に良いと思っていた!」と本気で驚いていた。
そんなワキール君は、私のことを「ボス」と呼んでいた。一緒に働いているときは、よく雑談をしていた。「ところで、ボスの名前は何て言うの?」と聞かれ、「まさや」だよと答えた。ワキールは「マサヤって、ハッピーだよ!」と言い出して、私はまったく意味が分からなかった。よく話を聞いてみるとフィリピンの公用語であるタガログ語「マサヤ」はハッピー、幸せという意味だという。発音も全く同じで、スペルも「MASAYA」とのこと。
このことを知った時、私はとても嬉しい気持ちになった。今まで自分の名前に自信がなく、意味のない言葉だと思っていた「まさや」に、「幸せ」という意味が隠れていたのだ。両親は日本人だし、先祖にフィリピンの人が居たとも聞いたことがないから、分かって名付けたわけではないだろう。
幸せと一緒に生きていると思うと、それだけで幸せな気持ちになってきた。幸せがこんなに身近にあったとは考えもしなかった。こんなちょっとした気づきだが、自分の名前にも自信が持てるようになった気がする。教えてくれたワキール君には本当に感謝しているし、名付けてくれた両親にも感謝している。
30歳を過ぎ、この先人生をどうやって過ごしていこうか少し悩んでいた私は、せっかく名前の中に幸せが入っているのだから、自分の幸せだけではなく、周りの人も幸せにしていかなければと思うようになった。
思ってもいない偶然の出会いから、大切なことに気づかされることになった。
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