肩書きなんてどうでもいい事
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:藤崎 香奈子(ライティング・ゼミ木曜コース)
人に自分の職業を説明する時、便利なのが肩書きです。会社員であれば、○○会社で営業をしています、事務をしています、と説明するでしょう。そんなに悩む事もないかもしれません。ですがフリーランスの場合は自己紹介をする時、ズバリと一言でわかってもらう事が大切になってきます。
私はフリーランスのエクステリア&ガーデンデザイナーです。「エクステリア」とは戸建住宅の外周りの事を言います。具体的には門や塀、フェンス、車庫などです。「ガーデン」はもちろんお庭の事ですね。基本的には注文住宅で家を建てる方、戸建の自宅をリフォームする方としかお会いする事はありません。世間的にほとんど知られていない職業だと思います。
私は千葉大学園芸学部を卒業し、建築会社に入社しました。そこで主に分譲住宅のエクステリア設計に携わりました。会社にエクステリア担当は私ひとり。年間400棟、全ての住宅の現場を確認し、設計を行ってきました。
建築業界というのはブラックな職場環境で有名です。労働時間は長く、一日12時間以上働くのが当たり前。休日はあってないようなもの。お客様の都合で簡単に休日は飛んでしまいます。
私も御多分に漏れず、長時間労働をしていました。朝は8時半始業で毎晩21時過ぎまで会社にいるのが普通。お休みは毎週日曜日と隔週の土曜日。それでも休日出勤はしていなかったので、マシな方だったと思います。
30歳が近づいた頃、この環境で働き続けるのは無理だと思うようになりました。そこでかなり悩みましたが、残業のない事務仕事に転職することにしました。
ところが、フラフラしてるなら手伝ってよと前職のお取引先から図面のお仕事依頼が入るようになりました。事務の会社は副業禁止ではなかったので、アルバイト気分でお手伝いしているうちにだんだん依頼が増えました。結局、私は図面を描くのが好きだったのですね。事務に物足りなさを感じていた私は会社を辞め、フリーランスの図面描きとして仕事をする事になりました。
覚悟を決めてフリーランスでやっていくとなると、悩むのが肩書きです。私はオリジナルのデザインを描く事もありますが、メインは人が下書きした絵を清書する仕事。これはデザイナーと言っていいのか、それともオペレーターと言うべきか。
デザイナーと聞くと、お客様と打ち合わせして図面を描き、施工現場を管理してお花まで植える、そんなイメージを持つ人が多いようです。でも私がやっているのは図面を描くところまで。フリーになってからは現場を見に行く事はありませんし、もちろん施工にも関わりません。肩書きをデザイナーとする事はおこがましいのではないか。そんな風に自分を卑下する事もありました。
しかしオペレーターというのも少し違う。私は下書き通りに清書しますが、法的、施工的に問題がある所は指摘しますし、曖昧な箇所は調整して綺麗に納まるようにかきかえてしまう事もあります。それはある意味デザイナー的な仕事でもあります。
じゃあ何だったらしっくりくるか。色々考えた挙句行き着いたのが「職人」です。オペレーターとして図面を納品していると、藤崎さんの図面を使うと成約率が上がると言われる事が増えてきました。それだけ見やすくクオリティの高い図面を納品できているという事だろうと、今では自信を持っています。また作図実績は6000棟を超えます。これは一軒一軒、打ち合わせから施工まで担当するデザイナーさんでは無理な数字。より多くの現場に関わってきた、その事実がコンプレックスを消してくれました。
自分の名前は表に出ないけれど、商品の価値を上げる事ができる技術力。これは職人と言わずして何でしょう。
私はエクステリア&ガーデンの図面職人です! うん、しっくりくる。
でも残念な事に、この肩書きでは今までにも増して、いちいち説明が必要です。一言でわかってもらうのは不可能。まずエクステリアが通じにくい単語ですし、図面職人に至っては私の造語です。
さて、どうしたものか。結局、一周回って元どおり。エクステリア&ガーデンデザイナーと名乗っています。
世の中には自分かしっくりくる肩書きを持っている人は少ないかもしれません。一口に営業や事務と言っても、業態は様々。私のように職人のつもりで仕事をしている事務の人がいるかもしれませんし、複数のジャンルにまたがる仕事をしている人もいます。
結局、肩書きなんてどうてもいい事。苗字のような記号でしかないのかもしれない、そんな風に思うようになりました。これから世の中の仕事がますます多様化していく中で、一言で表されるような業務は少なくなっていくでしょう。
それならいっそ、仕事ぶりで語りたい。それがまさしく職人魂。そんな事を思いながら、しれっとデザイナーと書かれた名刺を交換する毎日なのです。
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