新宿の中心で私が見つけたもの
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記事:飯田峰空(ライティング・ゼミ木曜コース)
2018年11月25日、私はある初体験をした。
毎年11月の酉の日に行われる「酉の市」に参加したのだ。きっかけはラジオで聞いたこの言葉だった。
「酉の市では商売繁盛を祈願して熊手を買うんだけど、気にいった熊手の金額をお店の人に聞いて、まず値切り交渉をする。そして、まけてくれたら、その分はご祝儀だと言って定価を渡すのが、粋な買い方なんだよ」
このシステムにしびれた。なんてカッコイイのだ、私もやってみたい。急に興味がわいた私は、新宿にある花園神社に向かった。
まず神社に到着して驚いたのは、人の多さだった。すれ違う人と触れてしまうくらいで、一歩ずつじゃないと参道を進めない。どうやら3日間で約60万人が訪れるらしい。そして、60万人の商売繁盛を引き受ける熊手屋台は、なんと50軒以上もあった。その屋台で売られている熊手も、お店によって作りが違い、それぞれに個性がある。
人の波に流されながら、一軒ずつ飾られている熊手を見る。その傍らで、熊手を買った人の繁盛を願って、職人さんによる三本締めが行なわれている。
酉の市では、一つの店を決めたら毎年同じ店で買うこと。一年ごとに少しずつグレードの高い熊手を買っていくのが流儀らしい。一回きりでなく、これから一生の付き合いになるお店を決めると思うと、最初の熊手選びは結婚相手を探すくらい重要になる。とりあえず全体を把握するのに一周、気になる候補を探しながら一周と、じっくり2時間かけて見て回った。
そして、ようやくこれだと思う熊手に出会った。いざ例の値切り交渉、と意気込んだその時だった。
「はい、この熊手の真ん中にご祝儀挟んでね」
という言葉が飛んできた。あれ? マニュアルにないぞ。
と思ったのも束の間。反射的に1000円を挟んだ私は、状況を理解する間もなく、江戸っ子おじさん達によって、あっという間に三本締めで繁盛を祈願された。
結局、粋とはほど遠い、たどたどしい熊手デビューだった。しかし、悩んで選んだ熊手を見ると愛おしい気持ちと達成感に溢れた。
この酉の市。威勢と景気が良くて、華やかでわくわくする。混んでいるのに、神社だからかどこか秩序があって、目に余る光景がなくて安心できる。そして、来ている人がみんな上を向いて笑顔でいる。屋台を見ながら歩いてみるだけでも、とても心地のいい空間なのだ。
なぜ、もっと早く酉の市に参加していなかったのだろう。
思えば、酉の市のことを名前だけは知っていたが、そこまでの興味はなかった。今回、参加しようと思ったのは、ラジオの話のおかげだ。そのラジオのトークには、酉の市が好きだとう熱を感じたのだ。
情報を知っている状態から、実際に行動するまでには大きなハードルがある。それを超える決め手になるのは、誰かの感想だ。その人がどう感じたか、説明の具合に熱があればあるほど、魅力的に感じ、ぐんと興味が湧く。そして、実際に自分も経験してみたいという気持ちになれる。あのラジオのパーソナリティが、熱量や熱狂をもって話してくれたおかげで、私は楽しい世界を新しく知ることが出来た。
そして、この酉の市には最後にして最大の流儀があった。買った熊手が壊れないように、家までの間で福をかき集められるように、熊手を掲げて帰宅するのだ。
神社を出てもやるのか……と少し悩んだが、熊手ハイになっていた私は、新宿の街で買った我が子を高々と掲げた。日曜日の新宿で、すれ違う人の視線が集まるのを感じる。
普段、あまり目立つようなことはしたくない性格なのだが、この時はある一つの思いが私を突き動かしていた。
それは、ラジオのパーソナリティのように、想いを発信することだ。新しく知った楽しいことを、一人の心の中だけで温めるのではなく、誰かに伝えたいと思ったのだ。
話すことは苦手だ。面白くタイミングよく話せないことに、コンプレックスがある。
書くことだって、好きだけれど得意ではない。文章がうまく書けないと、できない人間が偉そうに発信しようとするなよ、と自分を全否定したくなる。でも、突き動かされて感動したことを私も伝えたい。拙くても技術を磨いて、発信して、楽しさの連鎖を生み出したい。そう強く思ったのだ。その想いが、なせだか私の腕を上へ上へと動かした。
私が手にした熊手は、魔法のステッキだった。思わぬパワーを私にくれた。福と一緒に情報をかき集めて、これからの私をパワーアップさせ、また新しい世界を教えてくれるだろう。そして、私もその集めたパワーを発揮して、自分の熱を誰かに届けたい。誰かの行動のきっかけになるような魔法をかけたいのだ。
まず、最初の魔法としてこの文章を書いた。この熱が誰かに伝わることを願って。
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