思いという名のボールは、つながれる
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:山田 楓(ライティング・ゼミ木曜コース)
「この場所、めっちゃなつかしいな」
そう何度も言いながら、この前久しぶりに、高校の部活に同級生3人と一緒に参加した。
現役の高校生は、わたしたちより4つ以上も年下で、自分が部活をしていた頃がはるか昔のことのように思えた。
部活はバレーボールで、バレーは6人のチームでボールをつなぐスポーツだ。
ボールを自分たちのコートに落としたら、相手に点数が入ってしまうというルールである。
現役の高校生と試合をさせてもらって、私たちは1つのボールをつなぐということに、久々に一生懸命になった。どうにかしてコートに落とさないように、次の仲間が受け取りやすいように、必死に1つのボールをつないだ。
それにもかかわらず結果はさんざんで、次の日には全身がひどい筋肉痛になり、ロボットみたいな動きしかできず、母親に笑われたんだけれども。
現役生のプレーを間近で見ながら、私はなんだかすごく感動した。
私が高校生のときに部活をしていた同じ場所で、同じスポーツをしている。
練習内容やあいさつの仕方など、変わるものも変わらないものも両方あるんだけれど、確かに感じたのは私たちのときの面影が残されているということだった。
そのときにふと思った。
「わたしたちが後輩に渡した思いは、ちゃんとつながれているんだなあ」って。
もちろん4つ以上年下の子たちなので、世代的に直接的なかかわりがあったわけではない。
私たちが先輩から思いを受け取ったように、後輩も私たちの思いを受け取ってくれていて、その後輩もまた後輩に思いを渡していて、そうやって今の現役の子たちにつながっているんだなと思った。
この思いが、世代を超えて、人と人との間をつながっていくことが、まさにバレーボールみたいだなと感じた。
実際に試合のときにバレーで使うボールは1つだけれど、日常生活に置き換えて考えてみると、ボールは1つではなくいろいろな種類があるんじゃないかなと思った。
例えば、私は偶然出会った人が、大切な友達になり、その友達から「書く」ことのボールを受け取った。さらにその友達からやわらかな軌道で「ライティング・ゼミ」というボールを受け取ったのだ。
その友達には、私がもし普通に過ごしていたら出会うことはなかったと思う。
私と彼女が同じタイミングで、たまたま同じプログラムに参加したから出会うことができ、たまたま本が好きだという共通点からライティング・ゼミのことを教えてもらったのだ。
今回はたまたま書くことに関するボールだったけれど、毎日のなにげない生活の中には、もっとささいな、意識しなければ気づかないようなボールもあると思う。
「わが家の卵焼きの隠し味」とか、「旅行の醍醐味」とか、「兄弟への優しさ」とか。
読んだ本や、行った場所、会った人からも、知らず知らずのうちにボールを受け取っている。あの本の、あの文章に影響を受けたとか。あの人の、あの場面での、あの言葉に影響を受けたとか。
こうやってボールは偶然なのか必然なのか定かではないまま、次の人へ、次の人へとつながれていく。スポーツのバレーと違うのは、3回以上ボールを触ってもいいことと、ボールを落としてもまた拾えばいいということ、そして勝ち負けがないことなんじゃないかなと思う。
ボールの形はいろいろあって、ちゃんと丸い形をしたボールもあるんだけれど、トゲトゲした形のボールもある。丸いボールは渡しやすいし、受け取りやすい。
一方で、トゲトゲしたボールは不完全で、渡す方も不安だし、受け取る方も不安になる。
でもそうやって、渡そうとする人がいるから、受け取る人もいる。
そうやって今までたくさんのボールがつながれてきたんだと思う。
自分も知らない間に相手にボールを渡していたり、受け取ったときもすぐには気づかなかったりするのだろう。ふと振り返ったときに、今の自分のこの部分を構成しているのはあれのおかげだと気づくことがある。そのときに初めて受け取ったボール、つまり思いに気づくのだ。
こうやって人と人の間を、知らないうちにいくつもの思いが行き来しているのではないだろうか。ボールは確実につながれているのだ。
私が受け取ったであろういくつかのボールを、私は次の人につなげることができたかな。
そもそも今の私は、どんなボールを持っているんだろう。
それがわかるのは明日かもしれないし、1年後かもしれないし、わからないかもしれない。
でもきっと私の思いは誰かにつながっているし、私も誰かからボールを受け取ることをやめれないんだと思う。
人と人の間を行き来する思い。
思いという名のボールは、コートに落ちることなく、次の誰かにつながれて、また次の誰かにつながれて、終わることなくつながっていく。
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