メディアグランプリ

ママ友を作ろうとするのはもうやめた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【3月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《火曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:月山ギコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ついにこの日がやってきてしまった……。足取りが重くてしょうがない。
すでに7キロ近い4ヶ月の娘を抱っこしていることもあるが、それだけが理由ではない。
 
昔から感情がすぐ顔に出る性格が災いして、私の転職の理由はいつも人間関係だった。
先輩のご機嫌取りは苦手で、相性がいい人とは一瞬で仲良くなれるのに、そうでない人とはいつまでたっても仲良くなれず、広く浅い人間関係がとっても苦手な私にとって、かなりハードルの高い1日になりそうだ。
 
そう、今日はママ友交流会の日。
 
今住んでいる区は、毎月新生児の身体測定と一緒にママコミュニティの場を設けてくれていて、特にお金もかからないので、誰でも気軽に参加できるようになっている。
 
「参加必須でないのなら、行かなければ良いのでは?」
 
そんな声が聞こえてきそうだが、自分は社交的でない、という苦手意識がある私は、そんな親のせいでこの子も引っ込み思案になったらどうしよう。ひとりっ子だし、友達は必要だよね。この子の将来のためにも、母親である私が頑張らなきゃ!
 
そんな気負いがあって、無理やり参加しようとしているのである。
 
身体測定を終え、会場に入ると、手前は生後3ヶ月までの赤ちゃんママ、奥は5ヶ月までのママに区切られていたので、奥の方に座る。
 
「こんにちは~」
 
次々とやってくるママ達は、20代後半から30代までと年齢層は幅広く、月齢が近いとはいえ、赤ちゃんの身体の大きさやキャラクターはさまざまだった。
 
「そのベビー服かわいいですね~! どこのですか?」
「吉祥寺の丸井は貸出用のベビーカーを外に持ち出せるらしいですよ」
「もうすぐ離乳食ですね~。製氷皿は蓋付きが便利って近所のママ友が言ってました」
 
空気が読めないなりに頑張って空気を読んで察するところ、このコミュニティではママ同士の自己紹介はしなくていいらしく、我が子の名前だけ教え合うものらしい。
なんとなく、バックグラウンドが分かってしまうような、どこに住んでいるかとか、旦那さんの職業とか、自分が仕事をしているかとか、肩書的なものは聞いてはいけないらしく、ただただシンプルにママとしての情報交換をする、という体のようだった。
 
『同じ時期に子供を産んだ』
 
そんなただひとつだけの共通項でつながっている私達。
とはいえ、初めての育児に対する不安、悩みなどはお互い共感できるところが多いもので、意外にも話に花が咲いて、時間はするすると過ぎていった。
 
「時間となりますので、皆さまお帰りの準備をお願いします」
 
区職員の声がけがあり、皆そろそろと準備を始める。
特にお互い連絡先を交換するわけでもなく、それぞれが静かに帰っていった。
 
「なるほど。こういうものなのね……」
 
帰り道、すやすやと眠る娘を見つめながら、私は自分の愚かさを恥じた。
 
そもそも、友達は作ろうとして作るものではないのだ。それはママ友だって同じである。
1度や2度で、仲良くなろうなんて、無理に決まっているではないか。
 
就職、転職、結婚、出産。女にはさまざまなライフイベントがあり、そのたびに“親友”だと思っていた人が離れ、“友達”だと思っていた人がいなくなっていくことはザラだ。良い悪いではなく、そういうものなのだ。だから、今私の友達でいてくれる人は本当に貴重で、大切な、素晴らしい存在なのだ。
 
そんな存在は、気づいたらそばにいてくれるものであって、自ら求めて得られるものではない。
 
ただ同じママとして、その場で楽しくおしゃべりをする。今日はそれだけで良かったのだ。
そりゃあ気の合う人がいたら嬉しいけれど、それを目的にしてはいけない。そもそも娘のためにとか、自分のエゴのためにママ友が欲しいなんて、考えが浅はかすぎる。
 
これから先、娘はどんどん成長し、保育園、小学校、習い事……とさまざまなコミュニティに接していくことになる。私にとってのママ友の子供が、娘にとっても友達とは限らないし、本意でなくても付き合っていかなくてはいけない関係もたくさん生まれるだろう。
 
母親になったからといって、今ある自分を劇的に変えられるわけではない。
母親になったからといって、無理やり社交的になる必要は、どこにもないのだ。
 
どんな状況でも、自分らしく自信を持って生きていることが、親としての最低限の努めなのではないかと
思う。もちろん多少なりとも愛想笑いは必要になるだろうけれども。
 
“ママ”というカテゴリーで生きていく時間はそう長くはない。中学生くらいになったら娘の意識はどんどん外へ向かっていくだろうし、私がうんうん悩んでいるうちに娘はあっという間に成人するだろう。それなら、今は“ママ友”を無理に作ろうとするのではなく、子供と向き合う時間を第一に、1日1日を大切に過ごそう。
 
「ママはあなたのことが世界で一番大切なんだよ」
 
母として娘に絶対に伝えなくてはいけないことはそれだけだ。
だから私は、ママ友を作ろうとするのはもうやめることにした。
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/69163

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-02-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事