チームワークとブイヤベースのおいしい関係
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:美友(ライティング・ゼミ土曜コース)
「締め切りに間に合わないなら、事前に連絡ぐらいはして欲しい!」
金曜日の夜、珍しく私はブチ切れそうになった。
締め切りが過ぎても、お客さんに送るべき資料が彼からまだ来てなかった。
仕事で同じプロジェクトに関わる彼(仮に、ここではハリーポッターとしておこう)に、何度も電話とメールをしたが、返信がなかった。定時を過ぎた頃に、ようやく折り返しの電話がきた。
「予定より時間かかっちゃってさ。ははは」
陽気にハリーポッターは笑う。はははじゃない!
数日前に、金曜日までの提出は全然問題ないですよ、とお客さんの前で余裕をかましていたのは、どこの誰でしたっけ?
最悪の1週間の終わりだった。
みんなが言っていたのは、これのことだったのか……。
1月から新しいチームへ異動になったのだが、メンバーみんなが彼に困り果てていた。
なぜか。
いつも自分、自分。「自分ファーストさん」なのである。
皆さんの職場にもいないだろうか。
自分のやったことをは称えられたり、認めてほしいけど、自分が中心だから、ギリギリに仕事を頼んできたり、丸投げしたりで、他の人の仕事を増やしたりする人。
自分が終わったら、終わりなのである。後工程のことはどうやら眼中にないらしい。
ギリギリになって仕事を丸投げされたりが何度も続けば、誰も一緒に仕事をしたいとは思わない。異動してきた時、チームメンバーはそんな彼に疲れ果てていた。
ようやく彼もこのままではよくないと気づいたようで、やる気を見せようとしていたのだが、その矢先にまたこれだ。
ぐったりと疲れが尾を引いた週末。
土曜日、丸1日寝て終わってしまった。もったいない限りである。
日曜日、だるい体を起こしながら、何かあったかいものが食べたい。心が温まる何か。
冬の定番、普通の寄せ鍋もなんだか少し飽きてきた。
料理雑誌を立ち読みした際に見たあれにしようか。
普段は忙しさを言い訳に自炊をさぼっているが、たまに異様に創作意欲が湧き、凝ったものを作りたくなる衝動に駆られる。
無性に、口に入れた瞬間に広がるなんとも言えない魚介の旨味を味わいたくなった。
そう、ブイヤベース!
トマト味の魚介たっぷりの洋風寄せ鍋である。
フランス料理は敷居が高い感じがして、できるかな?とズボラな私は思ったが、
極力簡単にできるレシピを検索して選んだ。
ズボラポイントとしては、寄せ鍋セットの活用だ。たら、鮭、渡り蟹、頭がついている海老、ホタテ、鯛のアラが入っていた。こしたりはせず、野菜ものそのまま残したが、出汁をとるところだけはしっかりした。旨味を引き出すことが大事と書いてあった。
最後に、ローリエで風味づけだ。
ん?封を開けたら、漂う良い香り……
ではなかった。
ローリエ自体単独では、なぜだが今の私には、とても強烈で、一瞬入れるのをためらった。でも、煮込み料理には欠かせないし、とりあえず、葉っぱを鍋に放り込んで蓋をした。
さあ、お味はどうだろう。
1時間もかからず、ズボラな私の即席ブイヤベースは完成した。
「ん……!」
我ながら、声が出ないほど美味しかった。なんとも言えない達成感。
たくさんの魚介の旨味と野菜の優しい味が、絶妙なハーモニーを醸し出している。
単発だと癖が強かったローリエも、この旨味たっぷりな多様な食材たちの中に入れると、いい感じに味がまとまっていた。
美味しい熱々のブイヤベースを、はふはふと食べながら、ふと思った。
ハリーポッターってこのローリエの葉っぱみたいだな、と。
不思議なもので、個人だけをみると、人の弱みやアクの強さは目につきやすいのだ。
でもそれで相手の良さが見えなくなるのは、もったいない。
チームのメンバーの持ち味が十分に活かしきれていないと、個性や意見がぶつかってしまい、うまくまとまらない。お互いにイライラしてしまう。
冷静になってみると、余裕がない自分は、彼のよくないところだけにフォーカスしてしまっていた。質を重視するあまりに、時間感覚があまりないということ、でもアイディアを出したり広げたりが得意だということが、今回よくわかった。彼の旨味はそこなのだ。
チームワークって、なんだか、このフランス生まれの洋風寄せ鍋のようではないか。
魚介の旨味がきちんと引き出されることで、ただのごった煮が、最高のご馳走になるのだ。1つの食材では表現できない、絶妙な相乗効果が生まれる。
もしまた彼と一緒に組む時には、どんどん出てくる彼のアイディアを聴いてあげて、お客さんが喜んでくれるようないいアイディアを引き出して、整理したり、時間管理を特に注意して行うのは、私がすれば良い。私が得意なところは、私がすれば生産性も上がる。
ローリエも他の具材と一緒に煮込めば、なんとも言えない風味を引き出すことができる。
そんな風に、次回は彼の旨味を引き出すサポートができると良いなと思う。
チームワークとブイヤベースのコツは一緒だ。
個性のある魚介の旨味を十分に引き出すことが大事だ。
それぞれのチームメンバーの強み、つまり旨味を引き出せるかどうかが、「おいしい」成果を味わえるかの大きな分かれ目である。
これから私たちのチームはどんな味になっていくのだろうか?
昨日作ったブイヤベースをもう1度コトコト煮込みながら、ふとそんなことを考えていた。
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