「煩わしさ」の先にあるもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:脇田知子(ライティング・ゼミ平日コース)
「逃げたい!」
「誰か助けて!」
日々こんな気持ちを抱く自分に罪悪感を覚える。
子育ては、思ったようにならないことが本当に多い。誰かに手助けしてほしいのに抱え込んでしまい、逃げることもできない……。自分が欲しく授かった子供との時間にもかかわらず、煩わしさを感じてしまう。
母親の私が子供に対して「煩わしい」と口にするのは本当に苦しい。
子育てに限らず、会社の上司や部活動の先輩、同僚や恋愛対象などコミュニケーションが深かった人との関りには、煩わしい経験がつきものだ。とりわけ両親との関りには、煩わしいと感じた経験を持つ人が多いのではないだろうか。私は両親からこんなことをよく言われた。
「こんな遅くまで誰と遊んでいるの?」
「もー、いい加減にしなさい!」
「あなたは何を考えているのかわからない」
両親の心配する気持ちに煩わしさを感じてしまい、コミュニケーション不足で悪循環に……。思春期の親子関係ではよくある状況かもしれません。
私が両親に煩わしさを感じていた原点は「自分の思ったようにならない!」この一言に尽きる。自由のない状況は、両親との会話をなくし、自宅での居心地の悪さを強めていったのを覚えている。そんな私も子を育てるようになって分かった。おそらく両親も私に対して「煩わしい」気持ちを抱いたことが何度もあっただろうと……。
互いに煩わしいと感じてしまう「家族」って何だろうと思う。
多くの人はパートナーと書類で夫婦となり、家族をスタートさせる。子が授かれば家族は大きくなり、血のつながりがつづいていく。私も夫と出会い、家族を大きくし次につなぐ努力をしている。夫婦となって15年あまり、まだまだ未熟な夫婦で家族としても乗り越える課題もこれからたくさんあるだろう。そんな私も夫に「煩わしい」という気持ちを抱いたことが何度もある。そして夫も私に対して「煩わしい」という気持ちを抱いたことがあるようだ。互いに「煩わしい」と言い合えるのは変な夫婦かもしれない。しかし言い合える関係になれたのは、これまでの夫婦生活で苦しい経験を受け入れてきたからかもしれない。その経験があって共に生きているという感覚が強くなったように思う。そういば、夫と出会う前の私はどんな苦しさを抱いていただろう。
夫と出会う前の私は、一人暮らしをしていた。会社と自宅を往復する毎日はとても忙しかったが、自由な時間と自分のために使えるお金があった。おおむね想定通りに進む日々に満足する自分ともっと上を目指したい自分。隙間ができたときには、「何かで埋めなければ!」という気持ちが強かった。私は何かを見つけては必死に埋めていた。友人と遊んだり、新しい学びをしたり、楽しい時間はたくさんあったが、何かが足りてない自分に気づいていた。心地いいのに寂しい……。当時の私は、本質的には孤独だった。
何かに没頭できる日々は本当に幸せだった。思ったように過ごせる毎日は、心地よく充実感もあった。スムーズで引っかかりの無い日々の心地よさはとても爽快だった。しかしふとした瞬間、自分の中の空っぽを感じていた。私の空っぽは「愛情」だった。私には、上司も同僚も、友人も仲のいい異性もいた。そんな私は、愛情不足には見えなかっただろう。しかし、本質的には愛情に飢えていた。
当時の私は対人関係で「心地よさ」を求めていた。
「面倒なことには関わりたくない」
「楽しい時だけ一緒にいればいい」
「相手が気持ちよくなる努力をすればいい」
職場の人間関係、友人関係や恋愛も自分が好んだ人と心地よく過ごすことで十分だと思っていた。もちろん対人関係では気遣いが必要だ。しかし心地よさを求める気遣いだけでは、対人関係は深まらない。相手にネガティブな意見を伝えたり、自分を何かを削ったり、問題を一緒に乗り越えなければいけない時もある。相手も自分も傷つくことがあるとても面倒な作業。この面倒な作業を避けていた私には、本質的な愛情が無かった。当時の私は、寂しさで溢れないよう必死に埋めていた。私は弱い人間なんだろう、抜け出したいと思った。だから私は家族を選択した。
人生では、愛情を交わす機会がたくさんある。可能な条件がそろえば、その場面で私たちは「煩わしさ」と「孤独」のいずれかを選択しているのではないだろうか。
ポジティブに捉えるなら「孤独」は自由、「煩わしさ」は共生。
どちらにも魅力があり、受け入れなければいけないネガティブな要素もある。
「家族って何だろう?」
煩わしいことを互いに受け入れていく関係。
逃げたくなるほど苦しくてツライときもあるが受け入れて前に進む。ツライ気持ちを受け入れることができた分だけ強くなる。強くなった自分は多くの人の気持ちを受け入れることができるようになる。そして、人にやさしくなれる。そんな可能性を秘めているのが家族なのかもしれないと思った。
私は「煩わしさ」を選択した。
家族という煩わしい関係はこの先もつづいていくだろう。逃げたくなるようなことがたくさんあっても、受け入れて乗り越えたいと思う。そして、人にやさしくなれる自分に出会いたい。
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