鼻毛たちの復讐に感謝を
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:slowman(ライティング・ゼミ土曜コース)
鏡の前に立って顔を見る。
髪の毛はボサボサで無精髭が伸び放題。
一週間体調を崩して寝たり起きたりを繰り返していた結果が映されていた。
先週早々に咳が出始めて止まらなくなり次の日の夜にはキツい喉の痛みとともに高熱を出した。
しかし、当初こうなった心当たりが全く見つからなかったが、鏡の前の自分を見て思った。
「鼻毛たちの復讐だ」
顔に関するコンプレックスを持っている人はいると思うが、私もその一人である。
顔の真ん中にある鼻の穴が大きくて鏡にあごを引いて顔を映しても鼻の穴が映ってしまう。
母は言った。
小さい頃から鼻くそを取るのに指を突っ込んでばかりいたからだ、と。
何度注意しても言うことを聞かなかった結果だと。
そういえば、随分昔につきあっていた彼女が、しげしげと私の顔を見つめて、右の人差し指を鼻の穴に指を入れて、「(鼻の穴が)デカい」と言ったのも思い出した。
彼女の鼻はシュッとして鼻の穴は小さかったので、私の大きな鼻の穴は興味深かったのだろう。
当たり前だが、この鼻の穴には、フサフサと密集した鼻毛がある。
いつか何かで
「鼻毛は、鼻から呼吸する際にチリや微粒子をからめ取ることで異物が気管支に入り込むことを防ぐ」
と聞いたか読んだかしていた。
そういう機能があるにもかかわらず私は、大きな鼻の穴からはみ出している毛たちを一掃すべく毛抜きで一挙に抜き取ったのだ。
洗面所の排水口に向けて多くの鼻毛たちがまるで敗兵が悲鳴をあげながら退散していくかのように水と共に排水口に吸い込まれていく様子を勝軍の大将のようにマジマジと眺めていたのだ。
しかしこれで多くの鼻毛たちの恨みを買ったに違いない。鼻毛を抜いてスッキリしたかと思えば鼻の穴の内側が毛の抜き過ぎでズキズキ痛んだ。
そしてそれから何日も経たずに、咳をして喉を痛めて軽い気管支炎のような状態となり高熱状態が続いたのだ。
どう考えても鼻毛を抜いたせいだとしか思えない。
結局医者に行くことはせず、寝続けることで回復したので、本当はインフルエンザだったのか風邪だったのか分からない。しかし、私の中では、鼻毛たちから復讐されたのだという確信めいたものを感じるのだ。
風が吹けば桶屋が儲かる、ではないが、格言が浮かんだ。
「鼻毛を抜けば気管支炎になる」
そして心のうちで鼻毛たちに向けて謝罪した。
「鼻毛たちよ、俺が悪かった」
しかしそう思いつつ、鏡を見て鼻の穴からはみ出している毛がないか見ていたが、抜いてまだ一週間チョッとである。はみ出す毛はおろか、生えてきそうな様子もなかった。
そういえば、男も毛の処理が大切だとか言って、身体のそこら中の毛を脱毛して、鼻毛までも永久脱毛したとかという男性をテレビで見たことがある。その時、
「鼻毛は大切な役目を持ってるのに、この人こんなことして大丈夫か?」
と半ば呆れて見ていたことを思い出した。その時そう思っていたのに今回は、自分で同じようなことをしているのだから情けない話だ。
見た目は大切だ。
それは、自分のためもあるだろうが、自分とあった他人を不快にしないようにするためだ。ファッションはこ考え方が基本にあると教えてもらったことがある。
しかし、毛は身体の一部である以上、なんらかの役目があるわけだから根こそぎ抜き取るのは、あまり良くないことなのかもしれない。
よし、これからは鼻毛を抜くのはやめてカットすることにしよう。そうすれば抜き過ぎて痛むこともないし、気管支炎になることもないだろう。鼻毛を抜き過ぎて体調を崩すくらいならカットした方がずっといい。
そう思って鼻毛カッターをネットで探すと、案外安価に買えると分かったので購入することにした。
今回体調不良になったのがきっかけで鼻毛がマイブームのようになったが、そもそも鼻毛ってウィキペディアに載っているのかと疑問に思って調べたら載っていた。そこには機能について書かれていたが、その内容に驚いた。
私がどこかで見たか聞いたかした「鼻から呼吸する際にチリや微粒子をからめ取ることで異物が気管支に入り込むことを防ぐ」というのは、未だ確立されていない説であり、また、空気が汚れた場所にいると鼻毛が伸びるのも早くなるという話もあるが医学的な根拠がなく、伸びの速さは加齢によるものとされていた。
ならば、私が鼻毛の復讐だと信じていたというのは確信ではなく大いなる勘違いとなってしまう。なんてこった。しかも鼻毛カッターを購入してしまったではないか。
まぁいい。一週間寝込んだのが鼻毛を抜いたことが原因だと真剣に思っていたから鼻毛について考えることができたのだ。おそらく鼻毛についてこれだけ考えることも、時間をかけて文章を書くことも後にも先にも今回だけであろう。そう思えば鼻毛をたちに珍しい経験をさせてもらったのだ。鼻毛たちに感謝しよう。そしてこれからは、鼻毛は抜かずにカットしよう。もしかしたら、この私が未だ確立されていないといわれている気管支炎予防説を立証できる立役者にことになるかもしれないのだから。
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