断酒はパーソナルトレーナー
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:藤原 幸生(ライティング・ゼミGW特講)
「イテテ……」
2016年2月9日の朝,場所は,単身赴任先の大阪にある自宅マンションの一室。
右足母趾球の痛みに目が覚めた。足首あたりも腫れている。
ベッドのヘッドボードに上半身をあずけ,長座の姿勢で太ももの上にPCを置き,ネットで病状を検索した。
痛風
それまでに尿酸値が高かったこともあり,どうやら間違いない。
痛風とは,尿酸が結晶化することで,それが関節の中で生じることで激痛となる。結晶を砕くことができる薬は,まだ十分には開発されていないらしい。
激痛をおさえるための薬はあるのだけれど,副作用として腎臓へ負担がかかる。腎臓の老廃物を排出する大事な機能が低下してしまうのだ。その結果,尿酸が血液の中にたまり,結晶化がさらにすすむ。
つまり,鎮痛剤を飲むことは,負のスパイラルを巻き起こすきっかけにしか過ぎない。一時の痛みはおさえられても,根本的な治療とはほど遠いのである。
どうするか?
東京に暮らす家族の顔が思い浮かぶ。情けない気持ちで,一杯だ。足の痛みと同じくらい,心が痛い。痛飲で痛風となり,そして,心痛へ至ったのだ。
自業自得。
バーに入り浸り,ラフロイグのソーダ割りを飲み続けた。家族と離れて暮らす寂しさを理由に,夜ごと飲み歩いた結果だ。
どうしようか?
血中の尿酸濃度を上げてしまいそうで,うかつに一粒の涙でさえ流すことはできない。
そこまで追い込まれて,3つの覚悟を決めた。
・ウォークマット2を踏み続けること
・酒をやめること
・毎日水を1リットル飲むこと
ウォークマット2というのは,足裏療法のツールで,その上で足踏みすることで足裏のツボを刺激する。全体重をのせるので,自分の手で押し込むよりも,しっかりと力が入る。薬で溶かすことができない結晶を物理的に砕く作戦だ。痛いに決まっているが,それくらいやったほうが,心の痛みはかえって治まると考えた。
いつでも酒をやめる自信はあった。かつて,千日断酒を成就したことがある。その時と,同じやり方をすればいい。やり方は誰でも知っている。ただただ,飲まなければいいだけ。簡単だ。しかし,誰もが知っていて簡単なことほど,続けるのは難しい。
大丈夫,「禁酒セラピー」を読めばいい。同じ著者の「禁煙セラピー」で煙草をやめた。かつて成就した千日断酒も「禁酒セラピー」を読んだおかげだ。
覚えておくべきことは,3つ。
・酒は毒
・酒を飲まなくても,みんなと一緒にご飯を食べて話をするだけで楽しい
・「一杯だけ」という飲み方はできない。その一杯が,延々と終わりなくチェーンのようにつながっていく(詳しくは同著を参照されたい)。
今日で1174日目だ。
激痛に襲われ,家族への申し訳なさに心を痛め,やっと覚悟がきまってから千日成就した後も,断酒は続いている。
最も厳しかった局面は,海外出張が続いたときだった。韓国,台湾,深圳,シンガポール,ベルギー,カリフォルニア,ミシガンと,2ヶ月ほどの間に駆けずり回ったときがあった。空港での待ち時間,長時間のフライトでのストレス,そして,解放されたときのゆるみに魔が差しそうになるのを乗り越えることができた。
断酒は,僕のパーソナルトレーナーだ。
この1174日の間,一日も欠かすことなく「断酒」は,僕を励まし続けてくれている。一日,まったく何もやる気が起こらなくて,無駄に過ごしてしまったと後悔する日があっても,「断酒」だけは,“プラス1点”毎日コツコツ励ましてくれるのだ。
「断酒」がもたらしてくれたことは,単に痛風からの恐怖だけではない。バーに費やしていたお金も時間も減り,睡眠の質も時間も向上して,経済的にも,時間的にも,肉体的にも改善された。これだけだと,マイナスがゼロに戻っただけかもしれないけれど,精神的に成長できたことは大きい。
「断酒」という誰もが知っている簡単なこと,でも,だからこそ実践するのが難しいことを続けられるようになって,ほかにできることが増えた。
・ヨガ:全米ヨガアライアンス認定ティーチャーズトレーニングRYT200修了
・早起き:朝4時起床
いずれも,今までの自分とは真逆のこと,超苦手だったこと。
そして,東京の家族と離れて暮らしていることの寂しさは,生まれ故郷の大阪と家族のいる東京と,二拠点生活が味わえるという楽しみに変換できた。
まだ,うまくいかないこともある。「脱スナック菓子」と「毎日のブログ更新(できればPVを増やしたい)」。失敗しても,またがんばろうと思えるのは,「断酒」という毎日必ず励ましてくれるパーソナルトレーナーのおかげだ。
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