自分を変えたければ、過去をふり返れ!~平成最後の学び~
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記事:西元 はる香(ライティング・ゼミ土曜コース)
平成最後の1か月、なにかモヤモヤとした黒いものが、私のまわりを漂っていた。新しい元号をスッキリとした気持ちで迎えたいのに、どうすればいいのか分からないのだ。新しい仕事をはじめたり自己啓発本を読んだりしてみたが、そのモヤモヤは浮遊し続ける。もう3年ほど、やる気がマックスに到達しない日々が続いていた。
そんなこんなでモヤモヤと格闘しているうちにも、月日はどんどん流れる。カレンダーを見上げると、『4月26日・ゴミ出し』と書かれているのが見えた。
そうだ、片付けしなきゃ!
そう思ったのが午前10時。平成最後のゴミ出しが、今日の夜に迫っている。私の住む街ではゴミ収集車が来るのは夜なので、タイムリミットは約12時間だ。私は重い腰をあげ、次々と不用品をゴミ袋に入れていった。
古い年賀状、雑貨、ずっと着ていない服、子どものプリント。続いてアクセサリー類の引き出しを開けた瞬間、作業を進めていた私の手がぴたりと止まった。
手に取ったのは、友人であるAちゃんがくれたネックレスだ。その傍から、Aちゃんがくれた手紙や雑貨が次々と出てくる。
この3年間、Aちゃんとの関係にずっと悩んできた。というか、私はAちゃんのことが苦手だ。私の手が止まったのは、そのせいだろうか。真っ先に捨てたいもののはずなのに、なかなかゴミ袋に入れることができない。まるで、私とAちゃんの関係性を表しているかのようだった。私はネックレスを握りしめ、Aちゃんとの思い出をふり返ってみることにした。
「あなたの書く小説、とても素敵ですね!」
2015年の暮れ、Twitterの創作アカウントに、見知らぬ女性からメッセージが届いた。彼女の名前はAちゃん。ネットでの友達が少なかった私に声をかけてくれ、私たちはすぐに仲良くなった。おかげで創作友達も増え、Twitterを開くのが楽しみになっていった。
そのうち、仲の良い友達同士のグループLINEができた。Aちゃんが作ったグループだ。はじめのうちはみんなで笑い合う仲だったのだが、段々とその関係性は変わっていった。その場にいない人の愚痴大会がはじまったのだ。言いはじめるのはいつもAちゃん。女子特有のこういう場面は、小学校の頃から何度も経験してきた。だから、その場を適当にやり過ごすのが一番いいと知っている。何か言うと、今度は自分が標的になるからだ。イヤだなぁと思いつつも、適当に合わせやり過ごす日々が続いた。そんなことが3年も続き、私はすっかり疲れて果てていた。
「Aちゃんとの付き合いを、やめよう」
大量のゴミ袋の中で、私はそう思った。今、彼女との思い出をふり返って、分かったことがある。私はこれまで、全てをAちゃんのせいにしていた。
人の愚痴を言うのが好きじゃないのに、Aちゃんに毎日愚痴を聞かされる。前向きな性格なのに、ネガティブな発言ばかり聞かされる。そうしているうちにストレスが溜まり、家族にAちゃんの愚痴を言うようになった。ネガティブな気持ちを受け止めていたら、自分もネガティブになった。そういうふうに自分の性格が変わっていくことも、全てAちゃんのせいにしていた。
彼女と繋がっていることを選んだのは、だれでもない自分自身だ。イヤならば付き合わなければいいだけの話だ。それなのに彼女との付き合いを選んだのは、自分を守りたかったからだ。 毎日なんとなく過ごしていたせいで、そんなことも分かっていなかった。
私は思い出の品をゴミ袋に入れ、それからTwitterを開いた。Aちゃんと繋がっているアカウントを消すためだ。Aちゃんとの付き合いをやめるためだけじゃない。そこには、彼女のせいにした『私のネガティブなツイート』が山のようにあったからだ。ログインして設定ボタンをタップし、『アカウントを削除する』と書かれたボタンを押す。
『アカウントが削除されました』
そう表示された瞬間、私の周りを浮遊する黒いモヤモヤは、綺麗さっぱり消えていた。
きっとあの黒いものは、『彼女のせいにする自分』に対するモヤモヤだったのだろう。だからやる気も出なかったし、スッキリした気持ちになれなかった。時間をとってふり返ったおかげで、そのことが分かったのだ。
そういえば、『今の自分を作るのは過去の自分』という言葉を聞いたことがある。それならば、『未来の自分を作るのは今の自分』だろう。今度は人のせいにせず、自分の足で、自分の気持ちを大事にして歩こう。時々自分の行いをふり返りながら。
平成の終わりに令和の自分のことを思いながら、そんなことを考えたのだった。
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