20代からの終活
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記事:吉田史香(ライティング・ゼミ日曜コース)
2019年5月。26歳の誕生日を迎えた私は、ある宣言をした。
今日から一生かけて、自分のお葬式のための準備を始めます。
きっかけは『世界のすごいお葬式』という本を読んだことだった。特にお葬式に興味を持っていたわけではなかったが、待ち合わせまでの時間をつぶそうと入った書店でたまたま見つけ、なんとなく買ったのだ。アメリカで葬儀会社および火葬場を運営するケイトリン・ドーティという女性が、世界各国で見た葬儀や埋葬、その他死にまつわるイベントを紹介している。
ちなみに彼女は日本も訪れていて、日本の章では幸國寺の瑠璃殿(ロッカー形式の納骨堂で、壁一面にイルミネーションが施されている)やお骨上げの文化が紹介されている。
日本のように施設として無機質なほどに清潔な火葬場ではなく、野原で火葬をする人たち。家族の遺体を定期的に墓から出し、きれいにしてから着替えまでさせて、家族の時間を持つ人たち。人間の遺体を肥料として活用しようとする研究。世界の人々の死の捉え方、その向き合い方は様々だ。
読み終えて、私は自分が死んだ後のことを考えた。私は幼稚園と中学・高校はキリスト教系の学校に通っていたため聖書には親しみがあるが、特にクリスチャンというわけではない。仏教の教えに興味はあるが仏教徒ではない。毎年お正月には近所の神社へ初詣に行くが、神道の信者でもない。無宗教です、と言い切るのも違う気がする。
こんな宗教に関するアイデンティティがはっきりしない私だが、何も言わずに死んだら、おそらく葬式は仏教式になるのではないだろうか。なぜなら、仏教式が一般的だから。あるのは関心だけで知識も信心もないのに、戒名を与えられて、意味もよくわからないでいるお経をあげてもらうのは本意ではないし神様にも失礼な気がする。
もしも私が死んだら、どの神様も採用せずにお葬式をしたい。来てくれる人が、もし何らかの信仰を持っているなら、それぞれの信仰に基づいたやり方で悲しみを表現してくれたらそれは嬉しい。そのやり方が、今の私のスタンスに合っている気がする。
結婚式でよくやるように、私の人生を振り返るように生まれてから死ぬまでの写真をスライドで映したりするのも良い。友人や家族には、喪服で集まって黙って座っているより、私が生きている間に行った国々や私が綺麗だと思って撮ったものの写真を見て懐かしんでほしい。
私が読んで面白かった本を会場に集めておいて、気になったものを一冊ずつ持って帰ってもらうのも楽しそうだ。
友人と二人で台湾を旅行している途中、夜市で軽い夕食を食べながら、このアイデアを話してみた。
「将来私が死んだら、お葬式ではこんな風に外国で私が謎の麺を食べている写真を流したりしたい」
彼女は少し考えた後、もしそういうことをするなら、そこで流す写真やムービーは全て生きているうちに自分で用意したほうが良いのではないかと言った。
「他人は写真写りの悪い写真を平気でSNSにアップしたりするし、そんな感じでイメージと違うものをみんなの前に晒されるのは嫌でしょう?」
彼女は、自分ではそういうお葬式をしたいとは思わないけれど、ぜひ参列はしたいので、私より1日でも長く生きるように頑張ると言ってくれた。
頑張って準備をしても、どうせ自分は見られないのだから、お葬式など何でも良いのではないか、と私に言う人もいた。お葬式は、死んだ本人のためのものではなく、生きている人がその死を受け入れるためのものだ、と。でも、と私は思う。人生で、自分が主役になる最後のイベントなのだから、見られないとしても希望くらい言ってもいいのではないか。どうせなら、私の希望する方法で私の死を受け入れてもらいたい。
だから、自分で、一生かけて準備をしようと思ったのだ。たくさん写真を撮ること。今まで撮りっぱなしにしていた写真を、(できるだけ自分の写真写りの良いものを選んで)きちんと整理していくこと。本棚の本をお気に入りのものに厳選して整理していくこと。何より、私の人生はこんなに素敵で楽しかったと、胸を張って人に伝えられるようになること。
本に紹介されていたように、近い将来、自分が死んだら死体を堆肥にしてその堆肥で木を育ててください、というような遺言も書かれるようになるのだろうか。死、という言葉には暗いイメージが付いてまわるものではあるが、死ぬまでにまだまだ用意する時間がある、と思えば明るい未来に向かっているような気すらしてくる。
未来に向かって、明るい気持ちで、自分の人生のためにどんなお葬式をしたいか、考えてみませんか。とびきり素敵なお葬式を思いついた人は、そっと私にも教えてほしい。
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