あなたはイメージの奴隷ではなく……
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記事：赤木 広紀（ライティング・ゼミ日曜コース）
「今月はなんとか売り上げがあがったけど、来月はどうなるだろう……」
20世紀末にサラリーマンを辞めて、2001年からコーチングのプロとして独立。
まだ日本に紹介されて2，3年しか経っていなかったコーチングを職業にして、いつの間にか気がついたら今年で19年目を迎える。
「19年も続けていたら、もう安泰じゃない？」
「売上の心配をすることなんて、もうないんですよね？」
などと言われることもあるが、いやいやそんなことは全くない。
「来月はどうなるだろう……」
正直、この気持ちは独立してから一度も変わっていない。
ただ、19年前と今とでは、一つだけ変わったことがある。
「来月はどうなるだろう……」
19年前に独立したときは、この言葉が頭の中でリフレインするたびに、不安で不安で胸が押しつぶされそうになった。
売上のめどが立つとホッと一息つけるが、月末が近づくと、また、
「来月はどうなるだろう……」
と、頭の中でリフレインする。
売上が上がらず、家賃の支払いがとどこおり、今の家を出ていくことになる。
食べるものも買えず、住むところもなくなり、路頭に迷って野垂れ死にしてしまう……
最悪のイメージが繰り返される。
うまくいった最高に素敵な未来は、なかなかイメージできない。
だた、うまくいかない最悪の悲惨な未来は、ありありとイメージできてしまう。
「いやいや、絶対にそんなことはない。そんなこと起きるはずがない！」
そう、自分に必死に言い聞かせても、ネガティブなイメージは消えることはなかった。
「リアルなイメージを心にありありと思い描けば、その通りになる」
巷の自己啓発書に必ずと言っていいほど書かれている言葉だ。
成功者といわれる人が何人も何人も同じことを言っているのだから、きっと事実なんだろう。
ネガティブなイメージを描いているとネガティブなことが起きてしまうから、ポジティブなイメージを描かなければ！
そんな強迫観念から、ポジティブなイメージを頑張って描こうとしたこともある。
確かに自己啓発書を読んだり、モチベーションアップのセミナーを受けた後は、一時的にポジティブなイメージを持つことができる。
けれども、日常生活に戻ると、また元の木阿弥。
自然とネガティブなイメージが浮かんでくる。
じゃあ、実際にそのネガティブなイメージ通りのことが現実に起きたのか？
結論から言うと、一度も起きなかった。たった一度も。
リアルにネガティブなイメージをしたのに実現することは一度もなかった。
自己啓発書に書かれていることはウソだったのか？
いや、そうではない。
イメージしたものが実現するには、イメージだけでなく、もう一つの要素が必要だったのだ。
もう一つの要素とは、「行動」すること。
特別なことでもなんでもない。
非常にざっくりとした方程式で表すとしたら「イメージ＋行動＝現実」となるだろうか。
今ならわかる。
あれだけリアルにネガティブなイメージを描いたのに、それが実現しなかったのは、
ネガティブなイメージを「実現させる」ための行動を取ったからではなく、
ネガティブなイメージを「実現させない」ための行動を取ったからだと。
とにかく人に会った。
コーチングをしているということを伝えた。
コーチングを受けるとどんないいことがあるかと熱く語った。
「あなたがコーチングを受けたら、きっとこんな未来になりますよ！」
自分のポジティブな未来をイメージは、枯れた井戸のようになかなか出てこないのに、
相手のポジティブな未来をイメージは、かけ流しの温泉のようにどんどん湧いてくる。
不思議と目の前の相手にコーチングの話をしているときは、不安や恐怖はなかった。
結局、野垂れ死にすることは一度もなかった。
リアルなネガティブなイメージは実現しなかった。
19年前の私は、イメージの力だけを信じていた。
ネガティブなイメージを持つと、それが実現してしまう、引き寄せてしまう。
だから、勝手に湧いてくるネガティブなイメージが作り出す不安や恐怖におびえていた。
だが、今は違う。
イメージはあくまでも映画館のスクリーンに映し出された映像にしかすぎず、それを本当に血の通ったリアルな現実にするには、行動が必要だということを知っている。
それが19年前と変わったこと。
「ポジティブなイメージがなかなか浮かばないんです」
「ネガティブなイメージばかり浮かんで、消えないんです」
もし、あなたがそう思ったとしても心配はいらない。
イメージはひとりでに現実にはならない。
イメージを現実のものにするのは、あなただから。
あなたの「選択」と「行動」が、どのイメージを実現するかどうかを決定する。
そう、あなたは、
イメージに支配される奴隷ではなく、
イメージを支配する主人なのだから。
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