メディアグランプリ

ファンが付く講師はトリカブトの毒をもつ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤根悦子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私はペットの食育を教える講師業を始めて12年目になります。
個人事業主ではあるものの、協会に所属して、その規約の中で 協会から提供されたテキストを使った講座を開催しています。
その協会には、私と同じ立場の講師がたくさん所属していて、受講者が誰の講座を申し込むのかは、協会のHPから会場の場所や日程を見て、それぞれの講師に直接申し込むシステムになっています。
しかし、あることを始めたら、私の講座を選んで受講してくれる人が増え始めました。
地方からわざわざ飛行機や新幹線を使って、または宿泊してまでも、受講しにくる人が増えています。
そして、毎回満席になるという現象も起きています。
その、あることとは⋯⋯。
 
毒をもつこと!
 
1年前から、協会のテキストを使わない、オリジナルの新しい講座を作って開催し始めました。
その講座の対象は、ペットの食事や健康に関心がある飼い主です。
または、もうすでに体調を崩しているペットを抱える飼い主がほとんどになります。
おそらくその飼い主たちの多くは、ネットで情報をむさぼり、フードジプシーをしたり、サプリメントを購入したり、健康に関心を持って取り組んでいると思いこんでいます。
それが他力本願であることには気づいていません。
 
ネットで無料で得られる情報などは、ものを売るための情報がほとんどですから、うってつけのカモになっていることさえ気づきません。
それにも関わらず、ペットのために自分は一生懸命にやっているつもりになっていますが、実際には自分の手では何もやっていないのです。
ただ、ネットで見た情報を真似ているだけにすぎません。
自ら時間とお金をかけて、学んだ情報とは質が違います。
検査結果に一喜一憂して、自分なりにいろいろやってみては、望む結果が得られなかった人がたどり着く講座でもあります。
そのような受講者たちに、私は日頃の食生活やケアの方法などに潜んでいる、危険なものを容赦なく伝えます。
中には、間違った生活をしていたことに驚き、ショックを受けて自分を責める人もいます。
しかし私は、そのような人を慰めたりはしません。
 
「えっ? 療法食では病気は治りませんよ!」
「薬で症状を止めるのは、治ったことにはなりませんよ!」
「薬をやめたら、また症状が出るのは治っていないからでしょ!」
 
などと、どんどん傷口に塩を塗るように、ショックを与え続けます。
講座の最中、毒を浴び続けて死ぬのかというと、もちろんそんなことにはなりません。
不思議と怒る人もいません。
寛大なのか、呆気にとられているのかは定かではありませんが。
しかも、この毒には中毒性があるので、あれほどショックを受けたのにも関わらず、また浴びたくなるのです。
受けたショックが大きければ大きいほど、中毒性が増します。
受講生に感想を書いてもらうと、一番多いのが
「目からウロコが落ちました」
本当にポロポロとウロコが剥がれ落ちたのだと思います。
 
トリカブトは、昭和61年に保険金殺人事件で有名になった、植物界最強の毒花です。
しかし、その毒の強さとは裏腹に、見た目は紫色の優しい花を咲かせます。
モミジ型をした葉は、食用になるヨモギやニリンソウとよく似ていて見分けがつきにくいうえ、同じ場所に混ざって生えていることも珍しくありません。
間違えて摘んで誤食してしまう人もいて、毎年数件の中毒者が出ています。
トリカブトは、花の先から根の先まで、全身が猛毒の植物です。
 
しかしこの猛毒の植物は、適量を用いれば漢方薬として効果を成す、デキル植物なのです!
漢方薬のトリカブトは「附子(ブシ)」という名前がつけられており、キンポウゲ科シナトリカブトの子根を乾燥したもので、醜い容貌の代名詞である「ブス」の語源であるといわれています。
可憐な花を咲かせるのに、「ブス」とは失礼な!
とも思ったりもしますが⋯⋯。
 
トリカブトは体を温め、新陳代謝の機能を高める作用を持ち、利尿、強心、鎮痛、鎮静などに効果があります。
トリカブトも講師も、使い方によって毒にも薬にも成りえるというわけです。
 
毒をもつ講師は、その毒をショックという方法で煎じて、勉強意欲という薬に変えることができます。
その毒のショックに、心地良さや潔さなどを感じた受講者がファンになり、また別の講座を次々に受講して知識を深めて行くという現象が起きています。
また、熱心に勉強を積み重ね、ペットフードではなく手作りの食事を与えている飼い主は、最愛のペットが亡くなったときに、ペットロスになる確率が低いというデータも出ています。
 
しかし、見るからに毒々しいのは講師として見苦しいので、「ブス」ではなく、紫色の優しい花を咲かせる植物であるということも意識しつつ、私はこれからも毒をもち続け、講師界のトリカブトで居続けようと思っています。
 
 
 
 
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2019-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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