「桃源郷」から学んだ本当の豊かさとは
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:有村奈津美(ライティング・ゼミ日曜コース)
夏の暑いときには、クーラーをつけて、冬の寒いときには、暖房をつける。
お腹が空いたら、コンビニに立ち寄る。
欲しいものがあったら、ネットで買って、家まで届けてもらう。
新幹線や飛行機や電車が定刻通りにきて、短時間で移動ができる。
これらの生活を「特別」だと感じる人はどれくらい、いるだろうか?
少なくとも、東京に住んでいる私にとって、これらの生活は「あたりまえ」だった。むしろ、電車が数分遅れただけで、イライラすることさえある。
こんな「早くて便利」な生活に慣れ親しんだ私が、心の底から、毎日が豊かだな〜幸せだな〜と思った暮らしは、とても便利とは言えない村での暮らしだった。
ラオスの古都、ルアンパバーンからバスで山道を走ること4時間。そして、そこから今にも沈みそうな木造の船に乗り換え、川を下ること1時間。
計5時間かけた先に、その村、ムアンゴイはあった。ラオス最後の秘境、桃源郷とも呼ばれているそうだ。
ムアンゴイに着き、船を降りると、にこやかにおばちゃん達が出迎えてくれた。村に来たことを歓迎してくれていると思ったら、
「今夜、うちの宿に泊まっていかない?」
という勧誘だった。初日は宿を予約していたので、自分が予約している宿の名前を伝えると、明日はうちにおいでね、なんて言いながら、親切にそこまで連れていってくれた。宿に着くと、そこは扇風機とベッドがあるだけの質素な部屋。ドアの鍵もかかりづらかったり、シャワーもお湯が出たり出なかったり、と快適とは言えなかった。
くつろげるほどの部屋でもないので、荷物だけ置いて、町に観光に出てみた。観光といっても、そこにあるのは200mの一本の通りだけ。一本しか通りがないので、何回もそこを往復していると、サバイディーって子供も大人も笑顔で挨拶してくれた。挨拶以外の言葉は交わしていないものの、温かく迎え入れてくれている、そんな気持ちになった。
そのまま、ぷらぷら歩くと、現地の暮らしを見ることができた。
まだ小さいのに、鎌を持って、稲の収穫をする子供たち。
気持ちよさそうに水浴びするアヒルや自由に歩き回るニワトリ。
レストランで英語を話そうとすると奥からさっと出てきて対応してくれる
中学生くらいの女の子。
その横で呑気に寝ている犬。
通りで炭火をおこして、お肉を焼き、それを売っているおばさん達。
夕方になるとどこからともなく、おじさん達が集まってきて、ビールを飲みながら鉄球を投げて遊び始めた。
「あなたも参加しなよ。」
そう言われて、渡されたのはコップに入った冷たいビールだった。結局鉄球を投げて遊んでいるゲームのルールはわからなかったけれど、おじさん達が楽しそうに笑っているのをみて、一緒に笑っていた。
たくさんの人や動物でにぎわっていた一本の通りだが、夜8時くらいになり、あたりが暗くなると、人っ子ひとりいなくなった。ここでは、大きな街から遠く離れているため、電気も最小限しか届かないのだ。私も、手に持っていた携帯のライトを頼りにしながら、宿へと帰った。
「なんか今日は楽しかったな〜」と思いながら眠りについた。
次の日は、5時半にニワトリのコケコッコーという鳴き声で目が覚めた。
東京で暮らしているときは、7時半にセットしたアラームを何度も止めながら、やっとの思いでベッドから起き上がるのだが、この時は驚くほどに、スッキリと起きられた。
朝の散歩に出かけようと思うと、6時過ぎからたくさんのテントが張られ、そこには小さなマーケットが出来上がっていた。そこに並ぶのは、畑から採ってきたばかりのような土がついた野菜や、鳥の形がわかるお肉など。ご近所さん同士、仲良さそうに会話している姿も見受けられた。
その場で調理して、スープを出してくれるところもあり、私もみんなと一緒に食卓を囲んでみた。英語は通じないので、会話はあまりできなかったが、一緒の空間で、ご飯を食べられているということに喜びを感じていた。
そんな感じの日々を3日ほど、このムアンゴイという町で暮らしてみたのだけれど、
「あー幸せだな。」
そんな言葉を何度呟いたかわからない。
市場でみる生身のお肉や魚のかたまり、採れたての野菜は、命をいただいて生活してるんだよなー、と思い出させてくれ、
夜になると真っ暗になり、朝になるとみんなが活動を始める、そんな生活は日々の生活の中に「朝」と「夜」があったことを気づかせてくれる。
普段、すでに加工された食品をスーパーやコンビニで食べ物を買い、深夜でも明るい東京の街を歩く中では、つい忘れてしまいがちである。
そんな普段の「あたりまえ」の生活の中に隠れている「ありがたさ」に気づかせてくれたのは、電気も物も十分にない、ムアンゴイでの日々だった。
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