「どうやって脚本を書いているんですか?」に具体的に答えてみた。【実録ブログ】劇団天狼院「いぶき」
このブログは、演劇『極楽こたつ』・演劇『さめないアップルパイ』の脚本担当・鳥井が書いています。
2023年3月25日(土)には演劇『さめないアップルパイ』の上演を控え、稽古の様子などを書いていきます!
「どうやって、演劇脚本を書いているんですか?」
と質問されたことがある。
もちろん脚本の書き方など学んでいるわけではないので、とりあえず、セリフとト書き(状況説明の文章)があればいいらしいということを調べたくらいで、
あとは、「えいや」である。
いや、そういうとなんかちょっと「やってみたらできました」感を醸し出している感じになるが、
知識もないし、旗揚げ公演『極楽こたつ』のときは、「え、本当に自分やるん?」と思いながら周囲の条件から固めていったので脚本を書く時間も多くは残されていなかった。
この「えいや」にならざるを得なかった環境も、私によってはよかったのかもしれない。
前回の『極楽こたつ』も今回3月に上演する『さめないアップルパイ』も、元となる小説があって、そこから演劇脚本に書き直している。
「元となる小説がすでにあるなら、脚本にするのも簡単だね!」
と思うかもしれない。実際私もそう思った。
けれどこれがどうして、意外にも筆は進まないし、あと大体シーンが足りなくなる……
「えいや」であるとは言っても、具体的にはどのような工程を踏んでいるのかを自分の中でも、これを機に整理してみたい。(2回しか書いてないじゃん、というのは一回横に置いておこう。)
まずは、大筋の流れは変わらないので、セリフを残して小説の「地の文」を削っていく。
しかしその段階で「あれ?」となる。
地の文がないとほとんど成立しないシーンがあちらこちらに出てくるからだ。
地の文で書いていた「心の中の声」「注目してほしい、視線などの細かな動き」「人物の感情」などは根こそぎ消されてしまい、いかに自分が地の文に助けられていたかを思い知る。
そうなると、シーンの“補完”が必要になる。
地の文で書いていたことを「会話」に組み入れたり、小説の時にはなかったエピソードを追加してそのエピソードによって人物の気持ちを表現したり。
何が抜け落ちていて、それをどう補完するのか、というのが、一番難しいところかもしれない。
なので、感覚としては「小説をちょっと書き換えて、脚本にしました」というよりかは、
「小説を一度ばらばらに分解して、それを脚本という形に再構築しました」というイメージなのかもしれない。
特に今作の『さめないアップルパイ』では冒頭から困った。
「おいおい、このシーン、全カットじゃん………」
初っ端から、けっこう長めの回想シーンが入っていたのである。
過去に遡ったシーンなので、登場人物の年齢が違うという問題もあるけれど、この冒頭シーンではなかなかに重要な登場人物の人間関係が描かれており、全部カットすると物語後半の盛り上がりにも影響してきてしまう。
しかも冒頭は「つかみはOK!」にしたいので、あまりダラダラとしてた感じにはしたくないし、印象的な冒頭に相応しいシーンにしたい………
………
……………
………………
「………!!!!」
考えれば、ひらめくものである。
その時、物語の装置としてはかなり有能なアレを思いつき、それを冒頭シーンには使うことにした。
これなら回想シーンを上手く拾って、なおかつ印象的なシーンにも仕上げられそう!!!!
「有能なアレ」とは何かは、ぜひ本番の公演でチェックしてほしい。(観にきて!!!)
と、そんなわけで、
小説版からセリフを抜き出し、補完すべきシーンを補完し、構造的に再現が難しいシーンを置き換えて、そこまで進むと、「音読」をする。
ボイスメモ、起動。
役者さながら、登場人物になりきって音読!!!
しゃべりにくい部分や、しゃべっていて言い回しに違和感がある部分を修正。
「これで本当にお客さんは感動してくれるかなぁ……」と独りごちる。
そうすると大体時間は夜中なので、寝支度をしてベッドの中へ。
録音したボイスメモを聴きながら眠りにつく。読者の気持ちになって聴きながら「やっぱり、ここはちょっと展開が早すぎるよなぁ。もう一回か二回は会話のラリーを追加しよう」なんて考えながら眠る。
そして、自信がないながらも私の場合は、演出家の中嶋さとさんに提出!
さとさんは、いろいろダメ出しをすることはないけれど、一言、返事をくださる。
その一言で「はいっ! やっぱりそうですよね……! そこがダメですよね……!!」となって修正。
やはり何事も「いったん完成」させたところで終わりではなく、そこから練り込むことが重要なのである。
それをわかっているのに、締め切りまでに早めに行動できずに、またも夜中に修正案を送るハメに………いつも本当に夜中にばっかり連絡して申し訳ない………
そんなこんなでできた脚本も、なんだかやっぱり、まだ全然不安である。
今日は、稽古初日で、初めて役者さんとの読み合わせがあった。
役者さんの声で、表現で、登場人物が立ち上がってくる瞬間は本当に感動する。
「そうそう!!!! そうそう!!!」
と心の中で、登場人物が目の前に立ち現れた気分になって、私は終始ニヤニヤしていた。
けれど、セリフを聴きながら
「これだとちょっと展開が急すぎるかな?」
「納得感が薄いかもしれないな」
と考える部分もある。
もちろん、演出や演技でたくさん肉付けしてもらえる部分があるのが演劇の良さだ。
けれど、そもそも脚本の部分で足を引っ張りたくはない。
そう思うと、やっぱりもうちょっとどうにかできるかもしれない、という思いは稽古中も常に頭の隅にあるのだろう。修正はまだまだ続くかもしれない。
何か新しいことを始めるときに「どうやればいいか、まず方法を知りたい」と思う。
それはもっともなことだし、用意するのは重要なことだ。
けれど、自分が「正しいやり方」と思っているものなんて、世の中には存在しないのかもしれない。
「こうすれば絶対に成功する」という方法は、あまりないのではないだろうか。
だからいっそのこと、自分独自の方法で「何がベストか?」を考えながらやってみた方が、いい結果が出ることもあるだろう。
だからもしあなたが、脚本を書きたい、小説を書きたい、映画を作りたい、音楽を作りたいなどなど思っているならば、
「えいやっ」でやってみてしまってもいいかもしれない。
そうしたら、案外、いい結果が得られるかもしれない。
さて、今週からいよいよ稽古スタート!
どんな風に、演劇『さめないアップルパイ』が仕上がっていくのか、また書いていきたい。
このブログは、演劇『極楽こたつ』・演劇『さめないアップルパイ』の脚本担当・鳥井が書いています。
2023年3月25日(土)には演劇『さめないアップルパイ』の上演を控え、稽古の様子などを書いていきます!
*おまけ
稽古初日だというのに、私はワイプの中………あぁ、コロナの自宅待機期間がにくい………!泣
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