未分類

何もない名古屋に彼女とデートスポットができた《名古屋ウォーク・トリップ》


※この話はフィクションです。

 

何もない。

ゴールデンウィークなのに予定が何もない。

そりゃそうだ。

名古屋でどう遊べばいいんだ。

なにより俺には友達がいない。

彼女なんて夢のまた夢だ。

詰んでいる。

俺のゴールデンウィーク、暗黒週間確定だ。

 

この道路を見てくれ。

人っ子一人いない閑散具合。

俺の心を表し過ぎじゃねぇか、休日のオフィス街。

ああ無常。誰も求めていない感じ。

 

……誰かいる。

誰だ?

やせいのおんなのこがあらわれた!!

 

……なに? 迷子?

いや大人だからなぁ……。

というかめっちゃこっち見てるんだけど……?

なかまになりたそうな目線を感じるんだけど……?

 

えっ、一緒に遊ばない?

的な表情でいいの?

一言も喋ってないからわからないけど。

あれ、俺ついに熱中症で倒れたのか?

名古屋の暑さは地獄って言うからな。

それでアッチの世界にトリップしちまったのか?

だからこんな素敵な女の子がついてきてくれるのかな。

 

うん、そうに違いない。

絶対間違いない。

これは現世で幸のなかった俺に対するご褒美だ。

遊ぶしかない。この何もない名古屋も彼女と一緒なら輝いて見えるかもしれない。

といってもどこにいきゃいいんだ?

 

チョン、チョン。

えっ、こっち?

 

何だこれ?

神社?

 

那古野(なごや)神社?

この都会に本格的な神社があるのか?

なになに? ここは名古屋の地名の元ネタになった由緒ある神社だって?

愛知県は実は京都より神社と寺の数が多い?

なんかジェスチャーで説明してくれてる感じだけど、おみくじ持ってる君がかわいすぎてそれどころじゃないんだな?

 

いやしかしギャップがやべぇな。

都会に神社が平然とありやがるんだから。

たまらねぇな。

 

ちょっと歩いたらいい感じの和菓子屋さんがあるのもたまらねぇな。

「一緒に食べよ?」って神が言ってきてるじゃねぇか。

デート場選びも神か。

 

ん、そうかここは円頓寺商店街。

最近、再開発が進んだといっているがまだまだ昭和の雰囲気が残っている場所だ。

何よりゴールデンウィークなのに人がほとんどいねぇ。

女の子撮れるスペースがあるってどういうことだよ大都会で。

このくらいの人通りがストレスなくてたまらないんだよなぁ。

 

……なんかカフェを指さしている。

食べたいのか? さっきかしわ餅食べたばっかだけど。

いっぱい食べる君は好きだぞ?

とりあえず食べるか。

 

ここは商店街でも老舗のカフェでオススメはたまごサンドらしい。

彼女のチョイスはもちろんそれだ。

 

でも俺は空気を読まねぇ。

男は黙ってナポリタンだ。

えっ? 子供っぽい?

知るか。

 

ああ美味かった。

ん? 名古屋弁おみくじ?

 

なんだそれ? 名古屋弁ようわからんだで?

とりあえずやってみるか?

 

……やたら女運について辛辣なことを書いてきやがる。

まあ妄想で女の子生み出してるからな俺。

 

しかしこの円頓寺商店街、カオスだなぁ……。

各々が好き勝手やっている。

このアウトドアの店とか己の趣味を満たすために全力出しているじゃねぇか。

この硬派な感じ嫌いじゃねぇぜ。

 

この四間道(しけみち)もいい味を出しているじゃないか。

京都に負けねぇんじゃねぇかなこの具合は。

ほれ、いい感じの雰囲気の窓もあるし。

 

……ってなんだ?!

いきなり走り出したんだけど??

結構速いぞ??

ついていけるか?

いかないでくれ!!

俺のゴールデンウィーク!

俺の青春!!

前世で女の子と縁がなかったんだぞ?!

あの世でもあっという間におさらばなんてやめてくれよ!!

 

……ハァハァ……。

やっと追いついた……?

え、なに?

ケーキ。

あ、ケーキが食べたかったの?

 

なんか和風全開の外装なのに中はガッツリケーキ屋ですな。

というかめっちゃ目が潤う。

花とかいっぱいあるし。

これは食べたくなりますなぁ。

 

 

……走って疲れたし甘いもの食べてもカロリーゼロだよな?

買おうか……。

俺はこの「いちごとジャスミン・ミルクティー」ってやつにするぜ。

そして彼女は……。

4つ? えっ4つ行く。

食べるねぇ……。

元気だねぇ……。

 

ってもうこんな時間か……。

意外と遊べるもんだな名古屋。

何もねぇ街だなって思っていたけど、案外その気になれば遊べるもんだ。

それともこの子が一緒にいてくれたから輝いて見えたのか?

 

いや違う。俺の目が腐っていたんだ。

何もないと思っていたから何も見つからなかったんだ。

大事だったのは、今ある景色を楽しむことだったんだ。

この女の子のおかげでようやく気づくことができた。

これを生きているうちに気づいていればよかったなぁ……。

 

……はっ?

ここはどこだ。

 

ああ、国際センター駅か。

名古屋駅の1駅となりなのにGW中に人っ子ひとりいねぇんだ。

あっ?

そうか。

夢を見ていたんだ。

どっか行こうと思って座って途方にくれていたらいつの間にか寝ちまっていたか。

 

しかし、いい夢だったな。

あの中に出てきた店から遊びに行けば時間も潰せそうだ。

ひょっとしたら可愛い女の子に出会えるかもしれないしな。

 

「あれ、○○くん?」

 

モデル:のん
記事・写真:名古屋ウォーク・トリップご参加者


2022-05-04 | Posted in 未分類

関連記事