みうらくん彼女さんの教えリターンズ①「大丈夫、こんな状況余裕で切り抜けられるよ」
昨日の記事「福岡天狼院、つくろうと思います。」を読んだ、ひとりの読者から強烈なクレームがございました。
「ちょっとー! あれじゃ、私、悪者じゃん! 私が夢を反対したけど、みんなの応援でうまく行きましたみたくなってるじゃん!」
あ、来たな、と思いました。書いている最中に、もしかして、来るかも知れないなと頭をよぎったのですが、まあ、本当のことだし、いいっか、えい!とアップしたのでございました。ある意味、想定内のクレームです。ですが、思ったよりも強烈でした苦笑。
僕に強烈なクレームをしてきたのは、彼女さんでした。
あるいは、昔から僕の個人ブログを読んでおられた方は、覚えているかもしれません。
二年ほど前、僕はアメブロで「みうらくん彼女さんの教え」というシリーズの記事をアップしていました。
(*恥ずかしいので検索しないでください笑)
今でも特に女性の方にこう言われることがあります。
「みうらさんの彼女さんってステキですよね! 彼女さんの教え、本当に勉強になりました!」
でも、そのシリーズは実は5,6本しか書いていないんです。それなのに、なぜか多くの女性に突き刺さって、今でも覚えてくれている方が多い。不思議なものです。
それで、彼女さんから強烈なクレームを受けた僕は、やれやれ、とこうしてこの記事を書き始めたのでした。
やれやれ、真意がまるで伝わっていない、と。
ということで、本当に久しぶりに「彼女さんの教え」でございます。ちょっと間が開きすぎているので、「リターンズ」として書こうと思います――
彼女さんは恋人であると同時に、僕の一番のコンシリエーレ、すなわち相談役です。
僕が間違った方向に行こうとするといつもたしなめてくれます。
彼女さんは、僕よりも起業家として先輩で、僕よりもはるかに有名で、しっかりと稼いでいます。
そう言うと、もしかして、「あ、そうか、彼女さんの資本が入っているから天狼院はオープンできたのか」と思う人も多いかと思いますので、はっきりと言わせてもらいますが、僕の会社にも天狼院にも、彼女さんからの資本は1円も入っておりません。保証人にもなってもらっていません。(僕の会社の株式は100%僕が保有していて、銀行からも会社と僕個人の連帯保証で借り入れております)
ただし、経済的な面での援助以上に、彼女さんはコンシリエーレとして、常に僕の良き相談者であってくれます。
僕は、ちょっとぶっ飛んだところがあって、猪突猛進で、もっと言っちゃえば高校時代から司馬遼太郎先生の本を読んでいたので誇大妄想家でもあるのですが、それとは対照的に彼女さんはリアリストです。
僕は常に楽観論を口にして、「じゃあ、フルスロットルで行こう!」と突っ走ってしまうのですが、彼女さんは違います。
天狼院をオープンする際も、
「待って。それって本当に大丈夫なの? キャッシュフローは? 採算は? 最悪のケースの時にお金を貸してくれる先は確保できているの?」
と、僕がげんなりするほどに超現実的なことを言います。
そのときは水を差された感じがして、「わかってるよー、ちゃんと大丈夫だよ」と言うのですが、あとで振り返ってみるとたいていの場合、彼女さんのほうが正しい。
経験上、それを知っているので、僕は迷った場合、必ず彼女さんに相談するようにしています。
僕はスーパーポジティブなので、常に未来を超楽観的に描く癖があり、僕が超楽観的に語るとたいていの人は「それいいね! 面白そう!」とそれを肯定してくれるのですが、彼女さんは違います。彼女さんは超リアリストで、リアルよりも悲観的に想定するということを知っているので、あえてバランスを取るために彼女さんに相談するのです。
あれは、天狼院オープンするために資金調達に奔走していたときのころでした。
まるで、『華麗なる一族』の鉄平さんが、自分の高炉を建設する資金を調達するために数々の銀行を回ったときのように、僕も池袋中の金融機関を回って、天狼院の『半沢直樹』を探し続けていて、ようやく、説きに説いて何とか店が立ち上がる程度の資金の調達に成功したのですが、それを聞いたとき、彼女さんは少しもうれしそうな顔を見せませんでした。
「それじゃあ、足りないね。先々、キャッシュフローで苦しむことになるよ、きっと」
本当に少ない可能性を切り抜けて、何とか調達した資金だったので、さすがにむっとして僕は彼女さんに、
「大丈夫だよ、いざとなれば自分の会社の収益もあるし、そこで補填するから問題ない」
と、言ったのですが、今になって思えば彼女さんの言ったことは正しかった。
たしかに、天狼院は11月で早くも単店黒字を達成しました。それは僕の会社の収益を入れずに単体での達成だったので、そこまでは僕の思惑通りでした。
けれども、僕は書店経営の本当の難しさをその後に痛いほどに思い知ることになります。
黒字になっているはずなのに、資金がまるで残らないのです。むしろ、バケツに穴があいたように銀行の口座からは資金が流れ落ちていく。
最初は何が起きているのか、理解に苦しみました。
けれども、伝票を突き合わせてみて、気づいたのでした。
在庫が想定していたよりも、120万〜150万円ほど多い。
書籍とは富山の家庭常備薬のような「委託品」ではありません。「返品条件付き買取商品」です。
つまり、在庫が増える分だけ、翌月に支払いをしなければならないということです。
書籍にはそういった特性があるので、他の業態とは違って、在庫が増えるということは資産が増えるのと同じようなかたちになり、在庫が増えることはバランスシート的にはまるで問題がありません。けれども、キャッシュフロー、つまりは動かせる現金が増えた分だけ枯渇することになります。
まさに、彼女さんが数ヶ月前に予言したとおりの状況に僕は陥りました。書店経営の「落とし穴」に僕ははまってしまったのです。
対処としては、多い分の在庫を返品すればいいのですが、けれども、それではすぐに資金が戻ってくるわけではありません。
しかも、在庫の見誤りと同時に初期在庫の3ヶ月延勘定が一気に押し寄せるということで、ダブルパンチを受けました。
参ったな、これはいけないかも知れない。
超ポジティブな僕でも、さすがにそう思いました。そこへさっそうと現れたのが彼女さんでした。
「支払いを遅らせられるものある? 逆に払込を早くしてもらえるものある? 優先順位として家賃とかは遅らせられないから、遅らせられるものは遅らせて」
まるで、宇宙人に侵略されて狼狽えた兵士を鼓舞する司令官のようでした。
「キャッシュフローを健全化させること。それが最優先だよ」
そして、最後に笑顔になって彼女さんはこう言ったのでした。
「大丈夫、たかのりくんなら、こんな状況余裕で切り抜けられるよ」
起業とは崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるようなものだ。
以前に言った講演会で、アメリカのエンジェル投資家であり起業家でもあるリード・ホフマンさんがいった言葉です。
まさにそうで、待ったなしの状況が次々に襲いかかってきます。それに対処しながら、しっかりと飛び立つことができる機体も構築しなければなりません。全て、同時進行しなければならない。
普通に大きな企業に勤めている人には、この感覚はわからないかも知れません。
けれども、我々、起業家はこの社会が「銃声なき戦場」であることを、体感としてわかっています。
そう、ここは戦場です。何としても、勝ち抜かなければなりません。
「わかった。そうだね、余裕で切り抜けられる」
戦場を生き抜くパートナーとしても、彼女さんほど頼りになる人はいないと改めて思うのでした。
ちなみに、このダブルパンチさえしのげれば、天狼院はバランスシート的な観点だけでなく、キャッシュフロー的にも大きく改善します。そして、来年12月のニ店舗目のオープンが本当にリアルになるのです。
正念場の年末を全力で駆け抜けようと思います。
そして、思い描く未来をつかみ取ろうと思います。
さて、こんな感じで、彼女のクレームは収まるでしょうか笑。
ちょうど、彼女さんは出張先で飛行機を降りて、この記事を確認している頃だろうと思います。