忘れやすい自分を諦めたら人生が上向いた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:池田哲平 (ライティング・ゼミ日曜コース)
「あれっ、財布がない?」
「どこに置いてきたのよ?」
妻が眉間にしわを寄せながら聞く。
「レストランの椅子に掛けたままだと思う」
あいまいな記憶のまま答えた。
12年前の新婚旅行での出来事だ。
今でも妻は覚えている。
「綺麗な夜景を見に行こうとしていたのに、財布の入ったカバンを忘れてあわててレストランに戻ったんだよね!」
そう僕は良く忘れ物をする。
約束も。
仕事も。
物も。
友人と夕飯で出かけた時、話が面白すぎて鞄を忘れた。
郵便物を出しにいった時に何か考えことをして、銀行の融資申し込み書類をまるごと忘れたこともある。
作業をしていても何か考え出すと止まらない。
そうなると他のことがいっぺんにできない。
考えが生まれることにエネルギーがいってしまい、大事なことを忘れる。
仕事でも起きる。
ミーティングの帰りに顧客にどういう提案をするかと考え始めると、同僚や部下の話しかける声や質問は耳障りでしかなくなる。
「哲平さん、聞いています?」
「なんで質問にこたえてくれないんですか?」
「無視しないでくださいよ!」
ミーティングの後にいつもこう聞かれていた。
スイッチが入るとそこに没頭しやすい。
過集中の傾向だ。
しかし、集中スイッチが切れるとなかなか集中が戻らない。
突然、さっきまで集中していたフル回転の頭が止まる。
ミーティングの内容を思い出そうとしても思い出せない。
思い出すことできないので、アイディアが出てこない。
再びクリエイティブモードになるためにありとあらゆることをする。
「でてこない」
「なんだっけ」
考えの堂々巡りが始まる。
そして固まる。
子供のころからそうだった。
一旦集中すると強いのだが、注意がそれると全くダメになってしまう。
飽きが早いのだ。勉強も分かったら勝手に教科書の問題を全部解いてしまう。
オンオフが激しい性格なので、悩んだ。
過集中から離れるためにはどうしたら良いのか。
注意散漫になった時に再び集中するにはどうしたら良いか考えてきた。
自分の特性はわかっているものの、上手くいかせないでいた。
余計に悩むと引っ張られる。
アポイントの時間を忘れる。
メールの返信を忘れる。
請求書の請求を忘れる。
仕事が上手く回らなかった。
忘れないようとタスク管理に入れておくと、そこに情報を入れておくことすら忘れてしまうようになった。
「なんでお前はこんな大事なことを忘れるんだ。馬鹿なのか?」
「おまえ社会人なんだろ。ちゃんとしろよ。くず」
「ふざけんなよ、おまえ!足手まといだからやめちゃえ」
どうして自分はこうなのだろうと落ち込んだ。
自分のできなさや上手くいかないことを考えてしまう。
そして悩むがゆえにまた他のことが上手くいかなくなる。
あるとき似たような忘れる傾向があるという先輩からこういわれた。
「哲平、どうせ忘れるんだから。覚えなきゃいいじゃん、忘れそうなことは他人に任せたら」
「えっ、どういうことですか?」
「スケジュールとかさ、書類送付とかもう他に頼めばよいじゃん。最初は説明とか引継ぎで大変かもしれないけれど、これでハッピーに忘れられるよ」
「忘れるってことはお前の人生には重要じゃないことなのかもなあ」
少しだけ気分が楽になった。
業務フローを変えてみた。
ミーティング後は自分一人で考える時間を取るようにした。
1日のスケジュールに考え事をする時間、自由にできる時間を埋め込んだ。
得意なことだけをやるように仕事をするようになった。
少しだけ仕事が回るようになった。
過集中の傾向が研究や学習に使えることがわかった。
カレンダーを関係者に公開し自分が何をしているのか分かるようにした。
周りの人間が僕を追っかけるようになった。
「あれ、送りました?」
「この間の件、送付終わっていますか?」
周りが確認することによって忘れることは急激に減った。
鞄・財布・鍵の置き忘れも、指さし確認をするようした。
店を出るとき、タクシーを降りるとき、場所を変えるとき指さし確認をするようにした。
出張でホテルをチェックアウトする時にも徹底するようになった。
ベットの上OK、机の上OK、冷蔵庫OK、クローゼットOKとまるで工場の安全確認のようにするようになった。
先々月こんなことが起きた。
会議の進行や、研修の内容について担当者と話しながらその日一日のセッションの片づけをしていた。
セッション内容の質問があるので参加者の何人かも残っていた。
質問に答えながら片付けをした。
家に帰って自分のセッションの報告書を記述する。
翌々日、PCのACアダプターがないことに気づく。
また忘れたのだ。
そう、やはり、何かいっぺんにやると忘れてしまうのだ。
自分の気質は変わらない。変えようとしたがだめだった。
良く他人は変えられないというがその通り。
さらに自分は変えられない。
日曜日、福岡空港で朝の便を待っていた。
「今日の夜の天狼院の第3講楽しみだな、第2講確認しておこう」
朝ごはんを食べ、ゲート3番に向かった。
「スタフライヤー42便 東京行きは全部のお客さんをご案内します」
よし乗ろう。
「かばん。OK。スーツの入っている鞄。えー!!!ない。傘? ないじゃん」
「あっつ!朝ごはんの場所に忘れた」
走ってピックアップした。
今日も何か忘れていないか、確認している。
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