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スメハラ・香害という静かな襲撃事件


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:清水亜美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「イヤな予感しかしない……」
ただそれだけで何がこのあとに起こるかなどは全く予想も想像もできていなかった。
 
「息苦しい」
今まで何年と同じ環境にいてこんなことになることはなかったのに……。
自分の体調が悪い?
いや、ここに来るまでは割といつもと変わらない。
強いて言うのであれば、急に気温が下がったので天気予報とにらめっこして、服装をどうしようかと悩んだぐらいだろうか。
 
とはいえ、ここ数日息苦しい状況には変わらない。
むしろ、かなり落ち着いていた呼吸器系疾患の持病が再発しかけている。
 
原因が自分にあるのか、外的要因なのかが特定できないまま時間が過ぎる。
 
人は気になることがあるとそこに意識が集中してしまう。
息苦しさを気にしながら作業はとても集中できたものではない。
 
一旦、冷静になろうと思い、その場を離れた。
数日前のザワっとしたイヤな予感を感じていたことを思い出したことで我に返った。
 
誰もが人生のどこかで経験するであろう「席替え」が会社で行われたことが発端ではないか?
今まで幾度なく、席替えはしてきているが今回ほどイヤな予感を感じたことはなかった。
 
今回、両サイドを喫煙者かつヘビースモーカーに囲まれたことが原因のようで、その“ニオイ”が息苦しさにつながったと思われる。
 
元々、においや感覚には敏感な方であるが、課の8割が喫煙者という驚異な環境でここまで苦しむことはなかった。
それは幸いなことに席が離れていたため、事態は免れていたようだ。
 
しかし、数年間一緒に仕事をしてきた仲間である。
個人の嗜好ということだけに伝えにくく、苦しみは倍増である。
 
しかし、仲間や会社に伝えたところで、すぐにこの息苦しさからは逃げることはできない。
1人苦しむ人間がいれば、どこかに苦しんでいる人間がいるかもしれないと手がかりをネットに求めた。
 
「におい 耐えられない」
 
静かにネットの検索窓に入力すると、似たようなキーワードが出てくる。
どうやら、私ひとりの悩みではないことは一目瞭然でわかったので、安心した。
 
私は周囲のタバコの“ニオイ”に苦しんでいるが、その他にも香水や最近よくテレビのCMで見かける香りが付いている洗濯洗剤や柔軟剤、制汗剤などの“ニオイ”や“香り”に悩む人達がいることも知った。
 
それらを『スメハラ(スメルハラスメント)』や『香害(こうがい)』と呼ぶとのこと。
スメハラはニオイによるハラスメントのことで、ニオイに関する嫌がらせや暴力のことをいうとのこと。
また、香害はスメハラの一種とも言われており、芳香剤や柔軟剤、香水などの香りによって気分が悪くなったり、アレルギー症状を発症する健康被害のことではあるが、「スメハラ=香害」とはならないとのことで線引はかなり難しい。
 
気になるので、調べていくと、世間ではかなり苦しんでいる人がいて、日常生活にも支障が出てしまう人、会社の同僚のニオイに耐えられず、仕方なく自分が退職せざるを得ない状況に追い込まれ、実際に退職を余儀なくされた方の体験談などを読ませてもらった。
 
タバコに関しては世間的にも喫煙所を廃止したり、分煙化をしているところや完全禁煙にしているファミレスチェーンも出てきている。
その一方で見えないところでニオイや健康に関する被害は増えているのではないかと思う。
企業の取り組みとして某リゾートホテルチェーンが喫煙者を採用しないという報道をみたことがあるが、実際に多くの企業では取り入れるまでに至ってはいないと思われる。
 
さらに調べていくと、企業の取り組みとして就労規則や服装規定にニオイに関する項目を取り入れることができるとのこと。
そうすることによって企業としての統一見解となり、当事者に注意や指摘がしやすくなるという。
 
スメハラや香害は当事者が気付いていないことが想定されるので、日常生活に支障をきたしたり、健康被害が出ていることから自覚のない静かな襲撃事件が密かに広がっているのではないかとも思ってしまう。
 
アメリカやヨーロッパなどの一部の海外では対策や規制がされているところがあり、特に市の職員など多くの人に触れる職員の方はニオイがするものの使用が禁止されている。
日本ではまだ、『スメハラ』や『香害』という言葉や概念が広まっていないように思う。
 
ニオイに対して苦しんでいる人がいるということはネットのニュースなどでは見かけたことがあったが、まさか自分が被害者になるとは予想もしていなかった事態である。
 
今回の件がなければ、知っていても「そんなことがあるのか?」程度にしか思わず、気にすらしなかったかもしれない。
 
ある日突然、スメハラ・香害の襲撃事件の被害者となり、苦しんでいる最中ではあるが、少しでも多くの方にこのようなことが日常的に起こってる、起こる可能性があるということを知ってほしいと思うと同時に多様化する現代社会のなかで誰もが生活や仕事がしやすい環境づくりはできないのだろうかとも思った。
 
 
 
 
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2019-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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