メディアグランプリ

ピンチはチャンス


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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6月開講ゼミ:不破 肇
 
「こんな大雨の中なのに撮影に行くの?」
 
と、妻が準備をしている私を見て驚いて声を掛けてきた。
 
最大級の台風15号が接近していて、夜には関東を直撃するという予報の中、天狼院書店のパーフェクト・ポートレートゼミに参加のため、西立川にある昭和記念公園に向かった。
横浜の家を出る直前、辺りが急に暗くなってきて風も強まり、大雨が降り出した。
それもバケツをひっくり返したような酷い雨だった。
正直なところ、「これは行っても中止かな」「どうせ中止なら最初から行かない方がいいかな」と、ネガティブマインドの自分が心の中で呟いた。
更に、「今日は池袋で夕方から他のゼミを受けるし、びしょ濡れで行ったら勉強にならないかも」という声も聞こえてきた。このような状況なら行かなくても誰も責めたりはしない。
しかし、もう1人の自分が囁(つぶや)いた。
 
「だったら完全装備で濡れても大丈夫なようにすればいいだけだ」
「山登りに使っている雨対策のアイテムが全て揃っているじゃないか」
「現地のことは行ってみなければ分からないだろ」
 
ポジティブマインドの自分が奮い立たせた。
機材を守るためレインカバー付きのリュックサックタイプのカメラバック、膝下まであるレインウェア、防水のパンツと靴。完全装備で準備した。
いざ、外に出てみるとさっきまでの土砂降りが小雨になっていた。
それにちょっと明るくもなってきた。ますます気分が上がってきた。
色々と考えてしまって、思ったより準備に時間が掛かったので、早足で駅まで行って予定の電車に乗ることが出来た。
 
乗り継ぎをして、立川駅から青梅線に乗り換えたところで、今回の撮影会の講師榊智朗先生と会うことが出来た。
挨拶をして隣に座ると、
「いや〜、台風にも勝っちゃいまいた」
とサングラス越しに笑った。
というのも、榊先生は自他共に認める晴れ男。
お話では、イギリスのロンドンでもずっと雨という予報を覆し、無事にロケを済ませたというお墨付き。
そんな榊先生が、「でも、さすがに今日は中止にしてもいいんじゃないって、昨日の夜になっちゃんに言ってたんですよ」と話してくれた。
それだけ、今回の台風や大きくてやばいヤツだった。
 
榊先生がなっちゃんと呼ぶ人とは、今回のポートレート講座の主催である天狼院書店の担当 山中菜摘さんのことだ。
いざ、撮影会場となる昭和記念公園に行ってみると、なっちゃんだけがポツンとひとりで待っていた。「ひょっとすると誰もこないのではないか」という不安があったと思う。そして、別に「このような天候なので……」ということで、昨日の時点で中止にしても誰も文句は言わなかったはずである。でも、なっちゃんにはどうしても実施したい理由があった。
「ここの場所を申請するのに1ヶ月かかったんです」と言った。その言葉の裏には、この素晴らしい場所で参加者に撮影してもらいたいという強い思いがあったはず。
 
私にもこの撮影会には思いがあった。
7月から始まった榊先生のゼミの最後の撮影会になるということ。
榊先生のゼミは、参加者に写真を好きになって欲しい、写真を上手くなって欲しいという気持ちが随所に溢れていて、カメラマンとしてのスタンスや、技術を惜しみなく教えて頂ける。
そして、決してネガティブな言葉や評価をせず、参加者の良いところを伸ばすアドバイスに徹している。このポジティブさが、晴れを呼び込む力なのではないかとも思ったりする。
私はそれまで風景写真しか撮らなかったが、榊先生のおかげで人を撮るということの面白さを知った。そして、人を撮ることで感謝される機会も増えてきた。これは、自分の財産になったと思う。だから、とても感謝している。
そして何よりも、榊先生の撮影会は楽しい。そのような理由で、どうしても参加したかったのだ。
 
集合場所の昭和記念公園入り口には参加者は私を含めて3人、榊先生、なっちゃん、そしてモデルさん2人の7人が集まった。
参加者3人に対して、モデルさんが2人という何とも贅沢な撮影会になった。
 
心配していた雨は、前半はたまにポツポツ降ったり止んだりだったが、途中からは青空さえ顔をのぞかせる天気になった。
そして、台風が運んできた雲が太陽を薄く多い、いい感じに光が回っていた。いわば、天然のスタジオだ。これはどんな優秀なスタジオマンでも作ることが出来ないのだ。
撮影中、様々な美しい光がモデルさんを包み込んだ。
人がほとんどいない状態で、しかもほぼマンツーマンで撮影が出来たことでモデルさんもとてもリラックスして素晴らしい表情を見せてくれた。
何もかもが、予定調和を超えたとても贅沢なロケになった。
 
撮影をした写真を榊先生に見せると、
 
「これイイ!イイじゃないですか」
「もう何も教えることはありません」
 
と言って頂いた。
お世辞だと思うけれど、とても嬉しかった。
 
私は以前、星空撮影を行うために上高地から3時間のキャンプ場に1泊2日行ったことがあった。その時の天気予報は、ずっと雨だった。キャンプ場を管理している山小屋の人たちも私が星空を撮りにきたと伝えると、
 
「今回は難しいかもしれませんね」
「でもひょっとすると、少しは星が顔を出すかもしれませんよ」
 
と、ほぼ絶望的な気持ちになっていた私に希望の光のような言葉をくれた。
その言葉に後押しされて、夜中に起きて驚くような満天の星空を撮影することが出来たことがあった。
 
振り返ると、今回の撮影会もよく似ている状況だったと思う。
誰もが諦めてしまうような状況でも、希望を持って思い切って行動する。
そうすれば、思いもよらな状況に出会えることが出来る可能性がある。
でも、行動をしなければ何も始まらない。
そして、それを出来た人にだけ与えられるシャッターチャンスがあるのだ。
だから、写真撮影を行う場合はどんな環境でも、まずは現場に足を運ぶことが良い写真を撮るための条件なのではないかと思う。
 
これは、何も写真撮影に限ったことではないのだ。
日頃のビジネスにおいても、私生活においても、常に前向きに物事を捉えて行動する。
どんな過酷な状況でも決して諦めず希望を持って、物事に取り組む。
そうすることで、目に見えない力が働いて、奇跡と言われるような出来事に出会うチャンスが生まれるのだと思う。
 
「ピンチはチャンス」
 
これからの人生においても、たくさんの苦境や困難に出会うことだろう。その時に、決して逃げずに希望と勇気を持ってそれに向かっていく。そうすることで、とても素晴らしい体験や結果が待っている。しかし、いつもそんなことが起こるとは限らない。いや、起こらないことの方がむしろ多いかもしれない。それでも挑戦し続けることが大切なのではないかと思う。
 
今回の撮影会終了後、そんなことを思いながらあずさ21号に乗って新宿に向かっていた。
車窓から虹が見えた。
「その考え方でいいんだよ」
と大きな力が後押ししてくれた気がした。
 
 
 
 
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2019-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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