メディアグランプリ

表彰状ノスゝメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長島綾子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なにやら表彰状をいただきました。適正飼育なんてたいそうなものではなく……。この15年間、辛いときも悲しいときも一緒にいてくれる相棒への感謝しかありません」
 
実姉のFBの投稿を見つけた。相棒の名はえびせん。15歳のおじさん猫だ。彼の飼育に対してこのような表彰状をもらったというのだ。確かにエビは15歳には見えない。毛並みも美しく、去勢手術をしているからかつぶらな瞳がなんとも愛くるしい。猫の扱いを全く知らない私は、会うたびに嫌がる彼を無理やり追いかけ抱っこしようとする。エビが幼い頃、「シャーッ」と背中の毛を逆立てて牙を剥き、飛びかかってきたことがあった。猫と人だが、犬猿の仲である。
 
そんなエビなので、はじめに投稿を見たとき「それなら子育てしてる私も欲しいよ」と思った。
だが、待てよ。表彰状は特別感がある。もらうとくすぐったいものだ。もっと活用すべきではないか。
 
学生時代は何度かもらったことのある表彰状。作文コンクールや消防車の絵を描いたとき、入選して先生からもらった記憶がある。表彰状を手渡され、くるりと後ろを向き生徒にお辞儀をするとき、ついニヤけた。後から「変な顔してた」と冷やかされる。
社会人になってからは、会社で10年勤続表彰などをもらったことがある。辞令なども小さな表彰状のような形で、上司からうやうやしく手渡された。もらうことによって自分はこれだけの時間この会社にいたのか、と時の重みを感じることができた。書かれた文字を目で追うことにより、実感として体に刻まれるようであった。
 
大人になると、普通に暮らしていて表彰状をもらう機会はぐっと減る。みんな、日々頑張っている。そんなことで一々表彰する必要は無いというかもしれないが、たまには表彰状をもらいたい。
 
「教えてもらったことを実践したいけれど、私なんかがやっていいのかと躊躇してしまいます」
先日自身が講師として登壇した場で、受講者のお一人がおっしゃった。「そんなことを思ってはご自身に失礼ですよ。こんなに素敵なのですから自信を持ってください」と伝えたが、この心のブロックは丁寧に扱わなければと自身に警鐘を鳴らす出来事であった。
 
人が行動に移せない原因は、たいてい自分の心の中にある。「あのとき人にこう言われたから」「笑われたから」などの記憶を元に「私はそんなことをしてはいけない人」という強いブロックを作ってしまう。ブロックが頑丈であるほど人は行動に移せず、してはいけない理由を探してしまう。そのブロックに気づかせ、ブロックを取り払い、新たな一歩を踏み出す手助けをすることが、講師としての力量でもある。
 
そのブロックを壊す有効な手段の一つが、表彰状ではないか。表彰状は、紙として存在し、記載された文字を目で追い脳に刻むことができる。誰かに読んで手渡してもらえれば、相手から発音された音声として脳にインプットされる。読んでもらう相手は、できれば尊敬する相手が好ましい。表彰状で褒め称えられた行為を、尊敬する上司に読まれ認められた、という満足感が脳に広がる。さらにその上司や同僚が、自分の行為を褒め称えるために時間を作ってくれたということが喜びとともに自信に繋がると思う。
 
だが一つ問題がある。表彰状をもらった後の取り扱いについてだ。学校からもらってくる表彰状はくるくると丸められ筒の中に入れられたが、筒を持って帰るのが煩わしかった。家に帰ってからは収納場所にも困る。社会人になってからもらった辞令や勤続表彰なども扱いに困る。仕方なくクリアファイルに入れておくも、どこに入れたか記憶の彼方に追いやられてしまうのだ。
 
先日一年生の娘が学童でけん玉大会があり、優勝したと表彰状を嬉しそうに持ってきた。こちらはラミネート加工されており、早速リビングの壁に貼った。娘は時々しみじみとそれを見つめ、思い出したようにけん玉に向かう。
 
これだ。しばらく目につくところに貼っておく作戦である。くるくると筒に入れて押入れの奥にしまわれては、大切な自信も一緒に奥に引っ込んでしまう。目のつくところに貼ってみよう。額が必要と思われるかもしれないが、時間もお金もかかり躊躇する原因となる。ラミネート加工したり、厚い紙ならばそのまま貼ったり、目のつく場所に貼って時々もらった時の記憶を蘇らせよう。
 
表彰状をもらうほど褒められることなどしていない? いやいや、とんでもない。誰もが日々一生懸命生きている。それをまず、ご自身で認めて欲しい。なんなら、自分で表彰状を作ってしまってもいいではないか。そして誰かに読み上げて渡してもらおう。そこで視覚と聴覚から入る情報で生まれた自信をもとに、どんどん新しいことにチャレンジしてみて欲しい。最初は人に笑われることもあるかもしれないが、そんなこと気にする必要はない。そもそもこの人が笑うという行為も、相手の羨望の気持ちの裏返しだったり、自身の思い違いであることが多いからだ。
 
今や「WEB表彰」なるものが存在するらしい。早速自身の名前を入れ、日々のささやかな努力を一人こっそり讃えてみた。うん、悪くない。褒めることを誰かに求めるのではなく、自分自身で自分を認めることは大切なことだ。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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