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メディアグランプリ

本質を見抜く力は、黒いニワトリに潜んでいる。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:東 みわこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「おまえ、ウソつくなよ」。
夢中で絵を描いていた私に、男子の声がいきなり刺さった。
小学校に入学して初めての写生大会。学校で飼育しているニワトリ小屋から元気いっぱいのニワトリたちを解放し、屋外に作られたスペースを自由に歩かせる。それを生徒たちが思い思いに画用紙に描く。
 
私が最初に「人間らしいモノ」を落書きしたのが2歳の時。それから40歳になった今もイラスト活動を続けている。あの「写生大会」は私にとって事件であり、なにか壁にぶつかればこの話を思い出す。
 
私は1羽の黒いニワトリに完全にロックオンし、ひたすら「黒ちゃん」を追ってクレヨン描きを進めていた。クラスごとにカラー帽子を被っていたので、突然私に文句を言ってきたのは同じクラスの男子だったと思う。
私がなんて反論したのかは全く覚えていない。ただ、男子の言葉がひどく強烈で、たぶん「相手にしない」ことで自分を守っていたように思う。
「おまえのかいてるニワトリ、黒いじゃんか。なんで他の色のクレヨンたくさんつかうんだよ」。
それでも私は黒いクレヨンそっちのけで、赤や黄色、緑、茶色を交互に何度も繰り返し使い「黒ちゃん」を描いていく。黒いクレヨンは「黒ちゃん」の身体の輪郭や、絵の一部に使っているだけ。
「ふん、見たままかけよ」
同級生がなぜそこまで私に突っかかったのか、本当に謎である。
私は悲しくて悲しくて、涙をこらえていたように思う。
 
家に帰ったあと、私はすぐ自分の大好きな知育絵本を開いた。
「あか と しろ を まぜると ピンクになります。では ちゃいろ は どんな いろ で できているでしょう?」
シリーズの中で「色の話」をしている巻が大好きで、私は悲しみを埋めるように絵本のイラストを見つめる。
このときすでに、私は色というもののすべてが単色で成り立っているものではないことを理解していた。
ニワトリの「黒ちゃん」は、太陽の光の下、黒羽が光って玉虫色に輝いていた。ああ、やっぱり黒はすべての色を混ぜたもの。私はそれを描きたい。そう思って24色セットのクレヨンのほぼ全てを使ったのだ。
母に写生大会での「事件」を話すと、「みわこが見えたものを描きなさい」と笑ってくれた。
 
この話は、物事の本質へ自分がどう切り込んで中身を正確に把握するか、という「視点」の話でもある。
男子生徒が言ったように、黒いものを、黒を使わず表現することは、ある視点では「嘘」だ。見たままではないから。また、黒いものなら黒を使えば簡単に表現できる。単純で明快だ。
だが、もしも「色は混ざり合ってできている」という別の視点をことを理解していたらどうだろう?
 
物事つまり悩み、課題、目標といった自分自身に関わることや、社会的な問題、流行、時事ニュースに至るまで、私たちは目の前に現れた事象に対して本質を常に掴む必要がある。
 
例えばよく耳にするこんな話。「友達や同級生がどんどん結婚していく。来るのは招待状ばかり、出ていくのはお金ばかり。アタシの未来には独身のアタシしか見えない。だって仕事がとても忙しいし、役職までついたし、出逢いなんてあるわけない」
こんな状況だったとして、「仕事が忙しい・責任ある立場・出逢いの望めない生活」が物事の「表面」だとしよう。
だが、この生活を分解してよく見てみれば、実は「仕事が充実して楽しい・趣味にお金を使いたい・一人暮らしの自由さが自分に合っている・無理して恋人を作る必要はない・将来は起業したい」という本音が隠れているかも知れないのだ。
 
とりあえず義務教育を終え、就職活動して安定した生活を20代のうちに作る。安心感の得られる恋人を見つけて結婚する。30代では小さくてもマイホームを持つ。40代では昇進を続ける。産まれた子どもを優秀な人間に育てる。
これが長い間日本の「ステレオタイプ人生」だった。結婚の招待状を開くたび、この流れが勝手に頭の中をよぎる。結婚する二人には「幸せ」しかないように思えるからだ。しかし本質を掴んで冷静に考えれば、まったく羨ましいことではない。いつの間にか離婚しているかも知れない。成人までかかる莫大な教育費と死にたくなるような家の35年ローンに耐えられるかなんて、誰にも分からない。
 
本質を掴むチカラを自分のものにすれば、まず焦ることがなくなる。一喜一憂することもなくなり、自分にとって本当の喜びはなんなのか、嫌なこと・やりたくないことが強い輪郭となって浮き彫りになる。
ということは、「行きたくないなら結婚式に行かない」選択ができるのだ。勇気を持って、堂々と。
 
きっと、私を嘘つき呼ばわりした男子は、私がなぜ黒いニワトリをカラフルに描いているのか本質を掴めず混乱したのだろう。
私の描く「黒ちゃん」は、最終的に黒のクレヨンでまとめられていった。そこまで見ないと「なぜ」「どうして」が解決しない。
物事の表面だけなぞってしまう思考は、短絡的とも言える。深い思考ができれば、未来のビジョンが直々に今の自分へ声をかけてくる。
その声を聞いてワクワクするならば、今すぐにでも本質を掴むチカラを鍛え始めよう。
 
ニワトリの絵は、校内写生コンテストで金賞をとった。折紙で作られた金色の札が、「黒ちゃん」を誇らしげに見せていた。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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