メディアグランプリ

時代は八島未樹を求める


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記事:大村侑太郎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
中学生の頃、僕は修学旅行に行きたくなかった。短い期間とはいえ、自分の思い通りにならない集団生活をしいられることがたまらなく嫌だったからだ。
今思うと笑い話だが、当時は本気で休む方法がないか探していたものだ。真剣に僕は嫌だった。
そんな心境だったから旅行はあまり楽しいものではなかったが、泊った旅館でとある出会いがあった。
 
相田みつをとの出会いだ。
 
旅館の土産コーナーに氏の作品のポストカードなどが売られていて、そこに書かれた言葉に衝撃を受けた。
行きたくもない旅行に必死に耐えている僕の心を励ます言葉がそこにはあった。
多くの作品の中で「道」という詩に特に心を打たれた。嫌なこと、逃げ出したいことを持つ自分の心に自分がどう向き合えばいいかを考えさせられた。
それは、遠からず義務教育を終えて守られていた世界から外に出る自分への心の支えにもなった。
 
そして今、相田みつをに出会った時と同じ感覚を僕にくれた人がいる。
 
福岡の路上で出会った、シンガーソングライターの八島未樹だ。
 
なぜ彼女の歌に相田みつを作品と同じ感覚を持ったのか?
その理由は八島未樹の歌が「自分自身との関わり方」について究極的な見方を持っているからだ。
彼女の歌には強者が弱者に自分の意見を押し付けるような上から目線の力がない。逆に弱者、あるいは平凡な力しか持たない者の側に立ち寄り添う力がある。
そして彼女の歌は周りの世界をどう打ち倒すかではなく、その世界の中で生きる自分が自分の心とどう向き合うかを描いている。
 
それは苦難に見舞われながらも自分の在り方を見つけていく、アメリカのヒーロー映画「スパイダーマン」のようにも感じた。
 
僕が特に好きな八島未樹の曲に「あめのちくもりときどきはれ」という歌がある。
頑張っている人にエールを送る応援歌のような爽やかな曲であるが、その歌詞は「頑張らなくてもいい」と歌っている。
普通は「頑張れ」とか「あきらめるな」とか想像してしまうところだ。しかし彼女の曲は違う。頑張らなくても自分は既に散々頑張ってきた、だから自分で自分を認めてあげることをこの歌は歌っている。
 
僕はこの歌にとても救われた。
 
そうなのだ。普段色々な人に「頑張れ」と言ったり「頑張ってください」と言われたりするけど、口に出すまでもなくみんなが既に頑張っているのだ。もちろん、自分を気遣って言っていただける言葉には深く感謝する。
頑張って、頑張って、それでもおいそれと認めてもらえないのが世の中だ。あるいは認められているのかもしれないけど、それが実感として感じられない時に僕らは深く傷つく。
潰れてしまう時もあるかもしれない。そうならないために大切なのは自分が自分を認めること。
とても大切な自分との向き合い方だと思う。
 
さらに、個人という枠組みを超えて人間という存在を考えさせる曲がある。「16時」という歌だ。
 
人間が何故歩くことを覚えたのか?
人間が何故笑うことを覚えたのか?
 
中途半端な文系人間である僕も時にはそんな哲学的なことを考えることもある。だけど、考えても考えても答えは出ず、かといって抽象的な美しい言葉すら浮かんでこない。
しかし八島未樹はその問いにとてもしっくりくる答えを示している。しかも、それを美しいメロディーと歌声にのせてだ。
彼女の持つ人間へのまなざしの深さは計り知れない。
 
中学生で相田みつをの詩と出会ってから随分な時間が流れた。時代は大きく変化し生活の便利さの度合いは遥かに進歩している。
しかし、その一方で自分を省みた時に自己肯定感が持てず苦しむ時がたくさんある。
仕事を持ちきちんと給料をもらい、曲がりなりにも生活ができているにも関わらずだ。
 
もちろん恋愛や金銭といった普遍的な悩みもある。それに加えて、SNSやネットを通してあまりにも簡単に多くの価値観に触れられることが揺るぎない自分の価値観を持つことを困難にしている。
自分の意見を言えば炎上する恐れが常にある。だから思うようなことが言えない。確かな自分の価値観の無さが自己否定へと繋がっていく。自分というものを持つことがとても難しい時代だ。
 
だから、自分自身との関わりを歌い続ける八島未樹の歌は今の時代に求められている歌だと僕は思う。
相田みつをの詩がバブル崩壊を経験した平成の日本でそれまで以上の人気を得たように、新しい時代をむかえて大きく変化している令和の時代に八島未樹の優しい歌声が届いて欲しい。
 
今日も八島未樹は歌っている。
彼女のことを文章で書きたい。そう思ったこともライティングゼミを受けた理由の一つだ。
間違いなく彼女の歌は人の心を動かす。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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