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中学受験を楽しもう!


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記事:umi(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
毎年、2月1日に首都圏の駅に一斉に貼られるポスターをご存じだろうか?
その日から始まる都内の中学受験に電車で向かう小学6年生にあてた、「がんばれ中学受験生」と大きく書かれた、進学塾のポスター。
それまで中学受験に関わったお父さん、お母さんのなかには、それを目にすると、少しばかり複雑な気持ちになる人もいるのではないだろうか。
 
何年たっても切なくなる、というママ友もいるが、私には中学受験ママは、もう一度やりたいぐらい楽しい思い出になっている。
 
ひょんなことから始まった一人息子の中学受験。それまでは、一人っ子だし、地元に沢山友達がいればいいと思っていたので、中学から電車で通学なんて、まったく考えてはいなかった。しかし、彼が小学校3年生の時、上級生のママから聞いた、私立の男子中学には「鉄道部」というものがあるという情報が、電車好きの息子の心を射止め、深く考える間もなく、我が家の中学受験が始まった。
 
親の期待も、本人の気負いもなく始まった受験生活だったが、これが小学生にさせているとは思えない重労働な3年間だった。
なにより、塾で過ごす時間が長い。その上、宿題をやっている時間が長い。
息子が通っていた塾は、成績順でクラスが上下するようなシビアな塾で、後に知ることになったのであるが、結構宿題や進度も早いバリバリの進学塾であった。
そんな事とは知らず、体験授業で問題に正解してシールをもらえた事が嬉しくて……。
単純な理由で本人が選んだ塾に、小学3年生の2月から受験終了までお世話になることとなった。
 
平日は、学校が終わってから週2日、6年生にもなると平日週3日に週末は朝から夕方まで塾で授業、そして帰ってくると宿題の山。朝、学校に行く前の算数のドリルのようなものも日課になっていた。
夜の9時に塾が終わる息子を迎えに行くときに思っていたのは、そこらのサラリーマンよりよっぽど残業しているという事。帰ってきてからも、宿題を片付けるという事が当たり前で組まれたカリュキラム。
受験をすることを選んだ家族の中には、きっとそのハードワークに、子供だけではなく親もまいってしまった人も多いのではないかと思う。
実際、私自身も、何度か「もう、やめとく?」と息子に聞いたことがあった。
しかし、電車での通塾と歴史好きにはたまらないらしいマニアックな授業、パズルを解く感覚の算数、そこに楽しさを感じていたようで、息子自身には、辞めるという選択肢は無く、結局最後まで、頑張る姿に尊敬すら感じた。
まあ、そうは言っても、塾の先生からは<省エネタイプ>という微妙な評価をいただくほど、いつも気合はどこに行ったんだというほど、やる気があるのか、ないのかわからない態度で、宿題を一問解いては机を離れてふらふら遊び、といった非効率なところは、何度も私の堪忍袋の緒が切れる原因となった。
 
それでも私が彼の勉強を見てあげなかったことで、お互いのストレスも抑えられたのだと思っている。成績は得意の科目でいい点を取って上がったと思うと、急転直下、塾の先生から電話がかかってくることが何度もあった。
 
でも、その乱高低に一喜一憂しないでいられたのには理由があった。まずは本人がそれに動じなかった事。それに、その当時私自身はフルタイムではなく、短い勤務で仕事をしていたので、時間的に多少余裕があり、通信制の大学とカウンセラーの養成講座に通っていた。
だから子供の勉強より自分の試験対策の方が大変だった。
もしかすると、子供が受験で忙しい時期は、親は何か自分自身の勉強をしてみるのも良い時間になるのでは、と思う。
受験日に保護者控室で、試験が終わるのを待つ他のお母さんの中に、法律関係の参考書を持っている人を見た時に、同じようなことを考えている人もいるんだ、と嬉しくなった。
親が受験に対して熱くなりすぎて、子供に対してパワハラになってしまい、子供が心身のバランスを崩してしまう、という話もよく聞くことだが、ただでさえ、学校の後にまた長時間机に向かうなんて、大人でも皆が出来ない事をやっているのだから、多少なりとも同じ立場に身を置くことで、自分自身もやる気が出ない時は、少しだけ優しくなってみたりした。
 
また、成績だけではなく子供の性格を、客観的に見ることも良い経験になった。最初から○○中学に入りたい!というところから始まったわけではないので、どこの学校が彼にとって良いのか、どこを受験しようかという事は、しばらく悩みの種になった。
どこが、この大事な思春期の時期に子供が楽しく通える学校か、そんな視点から、成績では絶対無理な学校も含め、沢山の学校を見学にも行った。
保育園の頃から都内の地下鉄路線図が頭に入っている息子には、学校を見学に行く時、また試験当日でさえ、都内の電車に乗っていろいろなところに行くことは、緊張以上に楽しそうだった。
2月1日の試験はさすがに周りの雰囲気から多少緊張していたが、それ以外の試験日は二人とも遠足気分だった。
テレビで見たり話に聞いていた、集団で鉢巻をしめて揃いのバックの他の塾の子達。
会場の入り口で握手をして子供たちを励ます塾の先生。
心配顔で見送る母親。
 
結果はどうあれ、1月後半からの試験が始まると、嵐のような日々は、あっという間に過ぎ去る。
合格発表の掲示板を見た時に、この不自由だった毎日から解放される嬉しさの反面、これから思春期の息子と、もうこんなに関わること、一緒に何かすることはないのかも、と寂しい気持ちになった。
 
私立中学に進学した息子は結局、鉄道部には入らなかった。そして、入った学校に馴染めたのだろう、今も相変わらず省エネタイプを貫いている。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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