メディアグランプリ

大阪人との友情は、ロックフェスのコール&レスポンスで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:緒方愛実(ライティング・ゼミ特講)
 
 
最近、関西圏、特に大阪府出身の友人が増えた。彼らと交流することで色々とわかったことがある。
 
彼らは、とても好き嫌いがはっきりしている。
一度好意を持った事柄や人物への情がとても厚い。困ったことがあると、すぐに助けに来てくれる。さすが、ボケとツッコミの県民だ。レスポンスが早い。
だがその反面、嫌いだと思ったら、よほどのことがない限りは、その思考が覆ることはない。無理に説得しようとすると、謎の独自の理論を展開されて、泥沼になってしまう。そういう時は、早々にあきらめて、「へーそうなん」と返すしかない。
 
一番興味深いと思ったのは、フレンドリーの度合いが違うことだ。
私は生まれも育ちも九州だ。
九州の県民たちも、関西圏の方々と負けないくらいリアクションは大きい。そして、人懐っこく、もてなしたがりだ。
飲み屋など自分の行きつけの店に、他県、外国からの観光客がいるとすぐに話しかけてしまう。新しいもの、異文化への興味が昔から強いのだ。
そして、郷土愛がとても深い。自分の故郷を自慢したくて自慢したくてたまらず、ついつい勝手に説明をしてしまうのだ。
大阪の方もそうなんだろうと思っていたが違うらしい。
 
先日、一人で大阪に滞在することになった。丁度大阪の友人Aさんの住まいの近くを訪れることになったいたが、知らせずにいた。他の友人との約束もあったし、どうせなら日を改めてゆっくりと会いたいと思ったからだ。
後日、ボランティアサークルの会議があった。各県のメンバーが久しぶりに集まったので、せっかくだからと、懇親会を居酒屋で行うことになった。そこにはAさんも出席していた。
懇親会が佳境に入った時、つい私はポロっと先日の大阪滞在の話をしてしまった。
「Aさん、実は私この間、大阪にいたんですよ」
「え?」
笑顔でビールをジョッキであおっていた、Aさんの手がピタリと止まる。
「Aさんの家の近所のホテルに泊まっていたんですけど、じっくり会えないからいいかなと思って言わなかったんですけどね」
「はぁ!?」
テーブルに叩きつけるような勢いでビールジョッキが、ドンッと置かれる。
「何でそんなことするんですか!? 水臭いでしょ!!」
私はAさんの反応に目を丸くしてしまった。
他の県のメンバーは笑いながらなだめているが、Aさんは腑に落ちないらしくまだ何やら叫んでいる。
あの、温和で、いつも冷静なAさんが、本気ではないだろうが声を荒げている。
それだけ彼の中で重大なことだったのだろう。
 
九州人の友情は歌謡ショー。そして、大阪県民はロックフェスだ。
九州の人たちは、友人がいるとテンションが上がる。相手の反応、パフォーマンスに対してすぐさま反応して、合いの手を入れて返す。会いたかった、大好きだと、声援を送る。相手の大好きな物を事前にリサーチして、完璧にもてなすことを喜びにする。相手がよろこぶことが一番のよろこび。熱くしんみりと投げかける愛情だ。
対して大阪人はさらに熱い!
友人が訪れたら、全力投球。相手が親愛を投げかけて来たら、すぐさまそれ以上の熱いレスポンスを贈る。すると相手側のテンションがさらに上がる。そのレスポンス合戦を行うことで更にテンション、親密度を上げるのだ。
まさに、倍返し。ロックフェスのコール&レスポンスのように、お互いの信頼が目に見えて、さらに肌で感じるくらい、熱いお互いの愛情の返しが必要なのだ。
所変われば品が変わる、というけれど、友情のはかり方、表現の仕方もそれぞれ違うのだと、しみじみと思った。
 
もしかしたら、大阪人はさみしがり屋な県民なのかもしれない。
人が大好きで、親密につながっていたいのだ。きっと、私たちが気づかないところでも、ずっと気にかけていてくれるのだろう。元気にしているだろうか、大阪に来て楽しかっただろうか、また会いにきてくれるだろうかと。
なんて、あたたかく、やさしい人たちなのだろうか。
 
あなたの友人に関西、特に大阪の人がいたら気にかけてあげて欲しい。
明るい笑顔の裏側で、あなたのことをあなたが思っている以上に思って心配してくれているかもしれないから。
そして、同じレベルで気持ちを返して欲しいと密かに思っている。
彼らのレスポンスには、同じくらいの熱さで。何たってボケとツッコミの県民。返しのスピードも大切だ。
ロックフェスのコール&レスポンスの様に、タオルを振り回す勢いで、明るく熱く楽しく、交流を楽しんで。
でも、盛り上げすぎにはご用心。私たちは他県民。生粋の彼らに勝てるはずがない。テンションの急激な上げ過ぎで、倒れてしまうかも。
何事もほどほどに。笑顔で相槌を打って、さりげなくお土産やもてなしも返して上げよう。
 
飲み会が終わり、みんなで店の外に出た。
Aさんの隣に並んで肩を叩く。
「Aさん、今度はきちんと大阪に来るとき教えますね」
「いいですよ、もう」
Aさんがため息交じりに言う。
なんだかすねてしまった様子が、普段と違っていて私は笑ってしまった。
「約束しますから」
右手を彼に差し出す。
「わかりました、約束ですよ!」
彼がしっかりと私の手を握る。
九州人と大阪人は、笑顔で約束の握手を交わした。
 
今度はロックなレスポンスが返せるよう、練習をしておくので、待っていてください。
ただし、貧血で倒れない程度の。
 
 
 
 
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2019-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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