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若者よ! シルバーシートに座れ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 清水佳哉(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「しょせんお前は、偽善者なんだよ!」
 
上司が返してきた言葉がこれだった。
 
困っている人がいたら助けたい。
道を教えてあげるとか、席を譲るとか、献金や献血や、世間一般のそんなこと、とどめに、「ドナー登録をしたい」と話をしたときだったと記憶している。
 
「なんで偽善者なんですか?」
 
「そんなん、お前が良い人になりたいだけやんけ」
 
上司曰く、別にその人のためにやっているんじゃないだろうと言うのだ。
 
「ただの自己満足!」
「良い人のふりをした偽善者! そういうこっちゃ!」
 
確かにそうなのかもしれない。
 
「自分がここで何かをしなければ!」と思うことは、まさしく私の勝手で、相手が望んでいることとイコールではないかもしれない。
 
とはいえ、だからといって、「見て見ぬふりが出来るのだろうか? この私に……」
 
偽善者かどうかは別にして、「見知らぬ誰かが、他の誰かを思いやる」そんな世の中であって欲しいと思っている。
 
昔々、中学校の通学路で、こんなことがあった。
 
なんとも寒い日の朝、学校に向かって自転車を走らせていると、田舎の山道なのに、珍しく人がたくさん集まっていた。
 
その人だかりの中心に、横倒しになったバイクと、仰向けに倒れている中年の女性が見えた。
 
事故か? 「痛い! 痛い!」とうめいている。
 
「警察呼んでこい!」
「救急車は!?」
「そっちはもう電話した!」
 
まわりの大人たちの声も大きい。
 
「助けてぇ! 痛い! 痛いよぉ!」
「大丈夫だ。救急車が来るから待ってろ!」
 
私の学校はその先にあり、必然、事故現場を横目に見ながら通り過ぎるような格好になった。
 
大人たちのやり取りを聞きながら、その場所をあとにした。
 
でも、現場を通り過ぎながら見たその女性の足は、太ももからあらぬ方向を向いており、どう考えても大腿骨骨折という重症だった。
 
現場に背中を向けて遠ざかりながら、私は自分に問いかけた。
 
「お前、本当にそれでいいのか?」
「確かに、警察も救急車も誰かが呼んだあとで、お前のすることはなかった。そうかもしれない。でも、本当にそうなのか? まっすぐに学校に行くことって、そんなに大事なことなのか?」
 
「あんなに痛がってんだぞ。しかも、痛さと寒さとで、ブルブル震えてたぞ」
「お前、ちゃりんこ降りて、おばちゃんの手を握ってあげたって良かったんじゃないのか?」
 
自分の心が苦しくなった。
 
「おばちゃん、大丈夫だよ! すぐに救急車が来るし、それまで一緒にいるから安心してね! って、言ってあげてもよかったんじゃないのか?」って……。
 
「通りすがりの中学生にだって出来ることはあったんじゃないのか!?」って。
 
「あの人、あれからどうなっただろう?」
 
気になって気になって。
その後、何年も、何年も、ずっと頭からあの光景が離れなくなった。
 
もう、「後悔」以外のなにものでもない。
 
だから決めた。
 
「困っている人が居たら、苦しんでいる人を見かけたら、手を差し伸べよう」って。
 
そう、確かに、偽善者なのかもしれない。
先に自分が居るから。
 
自分がそこで後悔したくないから、人助けをする。
 
自分が先、相手が後。
 
でも、それでも良いんじゃないかと思っている。
声をかけられた側だって、選択出来るわけだし。
 
援助申し入れなんて、いくらでも断ることが出来る。
 
「重そうですね。その荷物、お持ちしましょうか?」
「いえ、結構です。ありがとう」
 
そんな感じだ。
 
そのやり取りで、私の気が済み、相手も選択の機会を得るならば、それで良いじゃないか。
そう、偽善者かどうかなんて、どうでも良い。
 
社会の中で、お互いに助け合うシステムって、昔はきっと自然に機能していたのだと思う。
いまはそれを、仕組みで補おうとしているように見える。
 
例えば、電車やバスのシルバーシート。
 
これは「お年寄りや妊婦さんに席を譲りましょう」という特設席。
 
仕組みとしては面白いけれど、それって、「そこ以外は好きにして!」にも聞こえるし、なんだか、シルバーシートをめがけてその前に立つのは、年配の方のプライドも許さないかもしれない。
 
実際の現場でも、働き盛りのサラリーマンがふんぞり返って座っていたり、あまり機能していないようにも見える。
 
シルバーシート以外の場所でも、松葉杖の方や、妊婦さんが「いつまでも席に座れない」状況を目にすることがある。
 
仕組みで何かやろうとするのは、案外難しいのかもしれない。
 
やはり我々の「行動」で改善していくべきなのだろう。
 
そんなわけで、最近私は、意識して「シルバーシートに座る」ことにしている。
 
私が座ることで、その席を本来の形、「お年寄りや妊婦さんの優先席」として確実に機能させることが出来るからだ。
 
そして、「そういう人が増えたらいいな」と思っている。
 
「最近の若いヤツは……」というセリフがあるけれど、見ているとそんなことはなくて、若者の方こそ率先して席を譲っているように見える。
 
だから期待したい。
 
「若者よ、シルバーシートに座れ!」
 
是非、心ある若者にこそ、率先してシルバーシートに座ってもらいたい。
そして、他者へ席を譲ることを、どんどん実践してもらいたい。
 
慣れるまで、抵抗があるかもしれないが、声をかけることが得意ではなかったら、目で合図して、手招きだけして譲れば良い。
 
それにも抵抗がある人は「忍者方式」だ。
年配の方や妊婦さんを見つけたら「そっと席を立ち、居なくなる」方法で、恥ずかしがり屋さんにおすすめの方法である。
 
若者から始まり、まわりのみんなも慣れてきたら、そのときには、シルバーシートに限らず、どの席でも当たり前に席を譲り合う景色に変わるはず。
 
世の中はもっと良くなる。
確実に、着実に。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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