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メディアグランプリ

短歌はレペットのバレエシューズのように


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邉まり子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
私は数年前から短歌を作っています。
以前、歌人の方に「短歌を始めて元気になったんです」と話すと、「めずらしいですね。元気じゃなくなる人のほうが多いですよ」と冗談なのか本当なのかわからないことを言われてしまったのですが、私は間違いなく短歌を始める前と比べて元気に楽しく生活できるようになりました。
 
元々、私は引きこもりのような生活をしていました。
12歳ごろから不安障害という病気を抱え、中学生時代は保健室登校、高校は入学後すぐに体調が悪化して通信制高校へ転校。その後も働いたことはありません。
20代前半、少しずつ外出ができるようになり、美容室にも出かけられるようになりました。(それまで髪は自分で適当に切っていました)
当時通っていた美容室で、待ち時間にたまたま手にした雑誌に現代短歌についての記事を見つけ、それがとても面白くて「私も短歌を作りたい!」と思ったのが短歌との出会いでした。
 
それをきっかけに、見よう見まねで短歌を作り始めました。今になって見返してみると、とても短歌と呼べるようなものではなく、ただ31文字にまとめた一言! という感じなのですが、私はそれを作ることが楽しかったのです。
日常で見聞きしたことや感じたことを31文字にまとめていく。
10代のころから今までに個人ホームページやブログやSNSを利用して、常に何かしらの発信をし続けていたので、私にとって短歌はその延長線上にあるもののように感じました。
気軽に日常を記録できる新たなサービスのアカウントを取得したような感覚だったのです。
 
しばらくして、短歌をNHKの短歌番組や新聞歌壇に投稿し始めました。ちょうどそのころ、ツイッターで短歌を作っている人たちが大勢いることを知って、短歌のイベントや歌会という勉強会のようなものも行われていることを知り、思いきって出かけてみることにしました。
イベントや歌会が開催されている場所は東京が多かったので、不安障害の私にとって電車で片道1時間以上かかる外出はハードルが高かったのですが、そのときは短歌に対する好奇心が勝ちました。
短歌を作っている人たちは年齢も職業もばらばらで、数年前まで引きこもりのような生活をしていた私にとって普段関わったことがない人たちとの会話は刺激的でした。それがとても楽しくて、気付けば毎月1~2回は東京に短歌関係で出かけるようになっていました。
 
それに加えて、短歌を作ることで私は自分に自信が持てるようになりました。
子供のころから病気や、学校へ通えなかったこと、働いていないことなどのせいで強い劣等感を感じて生きていたので、作った短歌を評価してもらえると嬉しかったのです。
初めて普通の人たち(健康に過ごしている人たち)と同じ場所で同じことを同じように楽しめていると感じ、それは私にとって貴重な体験でした。おかげで精神面の状態がだんだんと良くなっていきました。
 
私は短歌を始めてから、行動範囲が一気に広がり、たくさんの人たちと知り合い、自分に自信を持つことができました。(おまけに、短歌を通して出会った方と初めてお付き合いすることもできました)
数年前に美容室で読んだ雑誌をきっかけに短歌を始めたときには、こんな展開が待っているとは考えてもみませんでした。そして思うのです。私にとって短歌はレペット(repetto)のバレエシューズだったな、と。
 
「素敵な靴を履くと素敵な場所に連れて行ってくれる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 海外のことわざという説もありますが、出所は確かではないようです。
私はこの言葉が好きでときどき思い出すのですが、そのときに頭の中で思い浮かぶのが憧れのレペットのバレエシューズなのです。
甲の部分に細いリボンがちょこんとついた伝統ある名品。私の足は幅が狭いうえに薄っぺらくて靴が脱げやすいので、バレエシューズは一足も持っていないのですが、なぜかレペットのバレエシューズだったら快適に歩けそうな気がするし、ぜったいに素敵な場所に連れて行ってくれるだろうと思うのです。
 
実際にはレペットの靴は気軽に買える値段ではないのでなかなか手が出せないのですが、現代の世の中で素敵な場所に連れて行ってくれるものは、靴だけとは限らないと思います。
たまたまタイムラインに流れてきたツイートや、ストリーミングサービスで流れてきた音楽や、電車の中の広告などがきっかけで何かが変わったり始まったりすることがあると思うのです。
私の場合、それが短歌でした。
偶然読んだ雑誌をきっかけに短歌を作り始めて、短歌が私を素敵な場所に連れてきてくれたと思うのです。
きっと、こういうことは日常のなかに沢山あるのでしょう。些細なことをきっかけに想像していなかった未来が展開していく。そして、そのきっかけはいつ現れるか分からないし、身の回りのどこかにすでにあるのかもしれない。そう思うと、日々の生活がより楽しく感じられるのです。
レペットのバレエシューズはまだ買えそうにないけれど、私は私の未来が楽しみです。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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