かもしれないの恐怖と、ファンを得る喜びと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:松崎めぐみ(ライティング・ゼミ秋の9日間集中コース)
「いっちょ表に出してみるか……」
それを決意したのは、2018年の春のことだった。
私は絵を書くのが好きだった。といっても、漫画を書く知識は一切ない。色を塗る作業もわからない。自力で本を作ったこともない。落書きレベルのものだ。
私は好きなアニメを見たことをきっかけに4コマを書き始めた。丸い頭に丸い目、口はミッフィーのようなバッテン。
そんな絵しか書けないことは自分にとって、コンプレックスではあった。しかし、絵を書くことは楽しかった。4コマはシンプルだったからこそ、自分に合っていた。自分の中で膨らむ話を形にすることは自分の中でとても満足できる行為だった。
それから、今やっているゲームをネタに4コマを書き始めた。最初は頑張って原作の絵を真似て書いてみた。けれども、いっこうにうまくはならない。焦りだけがあった。それになんだかテンポも悪かったし、自分で読んでも面白くもない。
その一方、インターネットでは気軽に漫画を読む環境ができていた。同じゲームのファンの人たちがきれいなイラストや楽しいまんがを見て楽しませてもらった。プロの人は少ない、みんな趣味で書いている。それなのにレベルが違う。私には自分の書く4コマを外に出す勇気などなかった。
何一つ勝負できるものがなかった。イラストの美しさも面白さも何一つ世間に見せられるものではない。
それでも私は4コマを書いていた。私の大好きはその作品の二次創作をすることで満たされていた。
出来上がった学生時代の友人に見せていた。友人は同じ作品が好きだったとはいえ、よく付き合ってくれた。書いては個人のメッセージで見せていた。
とにかく応援してくれた。
「みんなに見てもらえばいいのに」
と言ってくれた。けれども、私には自信がなかった。そのゲームは人気コンテンツだったから気が引けた。
私は誰かに呼んでほしいと思う反面、誰かに自分が書いたものを否定されるのは怖かったのだ。
そのうち見てくれる友人が題名を付けてくれた。「じじまご」。私の書きたい「おじいちゃんと孫のほのぼの生活」を言い表してくれた、素敵な題名だった。私はただ書きたいだけ書いていて、それらの作品群に名前すら付けていなかったのである。
その時初めて、自分の作品を否定していたのは、他でもない自分だったのだということに気づいた。
気づいてから、より一層書き上げた4コマを丁寧に扱った。ただボールペンで書くだけではない。パソコンに取り込んで、汚れを取り除き、文字も手書きではなく、わざわざテキストを入れた。
そうやって作品に手間をかけていると作品に対して愛情も増した。
そして、私は決断した。
「いっちょ、表に出してみるか」
2018年の春、私は友人だけに見せていた作品群を書き直し、pixivというファンの交流サイトにあげた。
美しい元のゲームのキャラクターを2頭身にして、あくまでもゲームをもととしたファンアート。自分の世界の話だと注意書きをして、私はどきどきしながら13枚の話を上げた。
そしてツイッターも創作アカウントを改めて作り、4コマを上げていった。
反応はあまりなかった。
私が危惧した、元のゲームの熱烈なファンからのコメントもなければ、いいね! がつくこともほとんどなかった。
なんだか、肩透かしを食らったが、それでもその2、その3と作品を少しずつ上げていった。
それが3か月ほど続いたころだろうか。ぽつぽつといいね! が増え始め、Twitterに見知らぬアカウントからのフォローがあった。
友人はもともとアカウントを知っていたから、彼らではない。私はその人を知らなかった。
「最近の私のお気に入りの作品。すごくほのぼのしてて好き」
私の作品にファンができたのだ。
それは私にとってとてつもなく大きなことだった。とにかくこの人の期待を裏切らぬよう心掛けた。あげる前の清書は丁寧に、話もとにかく楽しく読んでいて気分が良くなることを心掛けて書いた。
それからしばらくしてに友人に言われた。
「最近4コマ上手くなったよね。絵が……というよりも、テンポが良くなったし、読みやすくなった」
「本当? 最近人が読んでくれるのが嬉しくて……」
「えー! それは絶対嬉しいことじゃない! あなたの作品を待っている人がいるんだよ」
それは何よりの誉め言葉だった。人の目に触れる。人の期待に応えようとする。ファンができるたことで、私の中に会った意識は大きく変わった。そして、周りから見てもわかるほど、作品が成長したのだ。
絵は上達しなかったが、今でも私は4コマを書いている。私の話を楽しみにしてくれる人がたくさんいる。誰かが応援してくれる、自分の作品を待っていてくれるということはとてもうれしいものだ。何より私が自分という存在を肯定できた。
ファンを得るという行為は難しいことだろう。それでも、勇気を出して書いて、公開しなければ、作品が誰かに届くことはない。
その最初の一歩は誰だって怖い。けれども、誰かに見られることで作品はより良くなる。そしてファンがいるという存在は何があっても自分の作品を否定しないという強い想いにつながる。
否定されるかもしれない恐怖を乗り越え、ファンを得る喜びを一度味わえば、どんなジャンルであっても成長へとつながるだろう。
まずは初めの一歩を!
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