グーテンベルグは二度革命を起こす
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記事:大矢亮一(ライティング・ゼミ日曜コース)
「父の目が最近急に悪くなって、大好きな本が読めなくなってしまったの」
カミさん方の法事で親戚一同が集まった際、いとこのリエちゃんが何気なく漏らした。本好きの私は、それが気の毒だと思い、ある提案をした。
本好きの私は昔からどこへ行くにも本を数冊、必ず鞄の中に入れて持ち歩いていたような本の虫だったのに、最近はほとんど本を持ち歩かなくなった。
但し、本を持ち歩かなくなったと言っても、紙の本のことである。ピンときた方もいると思うが、理由は電子書籍を利用するようになったからだ。
電子書籍端末を手に入れてから、生活が激変した。と言っても大袈裟ではないだろう。
説明するまでもないと思うが、電子書籍端末というのは、書籍を電子データにして端末にダウンロードする事で、一台の端末の中に数百冊から数千冊の書籍データを保有することができ、いつでもどこでも本が読める、歩く本棚と言っても良い。
最近では、スマホに同様の機能を持ったアプリも存在し、電車の中で、スマホを使って小説を読んだり漫画を読む人が増えている。
冒頭に登場したリエちゃんのお父さん、つまり私にとっては義叔父にあたる方だが、八十代中盤の比較的高齢にあたる年齢層に該当しながら、趣味の旅行で撮影したデジカメの写真を、自身の所有するノートパソコンでアルバム管理したり、所有する土地や金融資産を表計算ソフトで管理するなど、同世代の方に比べるとI Tリテラシーが非常に高い珍しいタイプの方だが、電子書籍端末を使ったことはなかったようで、私が電子書籍端末を使って本を読んでみないかと提案したところ、目を輝かさせた。
義叔父は最近、白内障の手術をしたことで、それまで老眼鏡を使わなくても読めていた新聞を、最近では虫眼鏡を使わないと読めなくなってしまったとかで、少なからず落ち込んでいたという。
電子書籍端末の良いところは、文字の大きさや行間を好みのサイズに変更できるところにある。急速に進んでしまった老眼の方でも、文字サイズを大きくすればスラスラと本が読めるに違いない。
実際のところ、電子書籍端末を手にした義叔父はフォントのサイズを大きくしたり小さくしたりしながら、嬉しそうに
「こんなに見やすいとは思わなかった」
と喜んだ。
他にも良い点がある。義叔父は夜寝る前にベッドの中で本を読む習慣があると言う。私も同じ習慣があるので、その気持ちがよく分かる。
そんな時でも電子書籍端末は役に立つ。
最近の電子書籍端末は電子インクの性能が良く、画面の発光を極力抑えても十分に文字が認識できる。更に電子書籍端末なら、厚手のハードカバーの本よりも軽いため、ベッドに横になったまま片手で本が読める。筋力も衰えてくる高齢者には、ハードカバーの大作を、持てないという理由だけで断念せざるを得ない場合があると聞いて驚かされた。
他にもまだ良い点がある。
寝る前にベッドで本を読む際、ウトウトし始めると、本を閉じてベッドサイドに置き、明かりを消すという一連の作業は、意外に面倒であり、冬の寒い日などはそれだけで眠気が覚めてしまうこともある。電子書籍端末なら、初めから電気を消していてもディスプレイが発光して本が読め、眠くなったらそのまま寝落ちしてしまっても、ページめくりが一定時間行われなければスリープモードに入ってくれる。
寝る前にスマホやケータイの画面を見ると、返って目が冴えてしまうという人もいるが、これはスマホやケータイのディスプレイから、脳の活性を促すブルーライトが照射されているからで、私が義叔父に差し上げた電子書籍端末は、ディスプレイからのライトにブルーライトの成分はゼロ。そして、ディスプレイライトの照射が、見ている人に向かって照射されるのではなく、逆向きに照射され端末内で跳ね返った光で電子インクを浮き上がらせている。これはつまり、部屋の明かりで例えると間接照明と同じ原理だ。直接ライトの光を浴びるよりも視覚への刺激も和らぎ、むしろ心地よさから睡眠導入までの時間が短縮されると言っても良い。
「電子書籍というのはすごいな。十五世紀にグーテンベルグが発明した印刷という偉大な革命が、現代のテクノロジーで今また為されたようだよ」
博学な義叔父らしい含蓄のある発言である。
どうやら電子書籍端末を気に入ってくれたらしく、早速インターネットで電子書籍を購入し、話題の新書を読み始めた。娘のリエちゃんも嬉しそうだ。
思えば、八十半ばで日々新しい情報へ能動的に触れ、テクノロジーには臆する事なく好奇心を持って触れ、昭和生まれのこの世代の向上心があったからこそ、今本人が手にしている電子書籍端末のようなテクノロジーがこの世に誕生したのかと考えると、見ているこちらの感動は一塩である。
同じ本好きとして、義叔父がこれからもまだまだ生涯読む本の数を増やしていくことに対し、敬意を表し、また自分の向上心のモチベーションとして応援したいと思う。
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