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メディアグランプリ

なんてこった! いい意味で裏切られた老舗和菓子屋のかき氷は、まるでくすりのようだった。その理由とは?

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:廣瀬昌代(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「こんなのおいしいに決まっている……!」
7月のある日、テレビで老舗和菓子屋のイチゴのかき氷が紹介されていた。
天然氷をふわふわに削り、上から山のように盛られた美味しそうな生のイチゴをぎゅっと絞ってシロップにしたものがかけてある。
 
見ているだけで、よだれがたれてしまいそうなくらい美味しそうだった。
それに、私はこの老舗和菓子屋の大ファンなので、このかき氷が自分の舌にあうのを確信し、
 
これは食べにいかねば……!
 
と、すぐさまスケジュール帳を開いた。
 
待ちに待ったお休みの日の朝。
さっさと身支度を済ませて、お店に向かうために最寄り駅まで早足で歩いていた。
 
改札をくぐり、電光掲示板を見ると次の電車まであと5分。
電車がくるのが待ちきれない。
 
駅のホームでそわそわと、体が揺れる。
まだかまだかと、腕時計をチラチラと見てはため息をついた。
待ちきれず線路を見ると、遠くから電車がこちらに向かってくるのが見えた。
 
やっと来たー!
 
車両に乗り込むとクーラーがきいてひんやりとしている。
体は冷えてきたが、気持ちは冷めることなく味を想像してワクワクしていた。
 
新鮮なイチゴをたくさん使っているってテレビで言っていたし、甘くてとてもおいしいだろうなぁ~。
 
ドアの横に立っていたので、にやけた顔が窓に映る。
 
いかん。怪しい人になっている……。
しかし、にやけた顔はなおらない。
 
人目が気になったので、鞄から小説を取り出してにやける顔を隠しながら電車で過ごした。
 
ようやく到着し電車を降りると、お昼前だった。
 
時間的に家を出た時よりも暑い。
7月らしい夏の日差しはギラギラとしていて、肌が焼かれるようだ。
アスファルトの照り返しで、下からも熱を感じる。
汗がだらだらととまらない。
 
あつい。早くお店で冷たいかき氷が食べたい。
 
30度を超えるなか20分くらい歩き、ようやくお店に到着した。
 
暖簾をくぐり店内に入ると、すぐに羊羹の並んだショーウィンドウが見える。
1階は持ち帰り用の和菓子を販売しており、2階がイートインスペースになっている。店内は黒を基調とした落ち着いた雰囲気だった。
 
入り口横の階段を上がると開店して間もない時間だったが、少し列ができていた。さっそく自分も並ぶ。
 
期待値はピークに達していた。
 
「お次の方ぁ」
 
10分ほどして、店員に呼ばれ席についた。
時期的に半分くらいの人がかき氷を食べている。
ふと、隣のテーブルにおいてある宇治抹茶のかき氷に目がいった。
 
ああ、宇治抹茶も美味しそう。
思わず目がハートになる。
 
いやいや、イチゴ。イチゴ。
罠をのりこえ、無事イチゴのかき氷の注文を完了した。
 
ほどなくして、黒いお盆に乗せられたイチゴのかき氷が運ばれてきた。
黒に赤がはえて、より一層キラキラして見える。
 
胸をたかぶらせ銀色のスプーンで、氷の頂きからキラキラと輝く赤いひとさじを口の中へ運ぶ。冷たさと味が舌をとおして、ふわっと口の中いっぱいに広がった。
 
「……トマト?」
最初のひとくちの正直な感想である。
熟していないトマトの味がした。
 
いや、そんな馬鹿な……。
 
もうひとくち食べてみる。
 
トマト……。うん、トマトだなぁ……。
 
頭の中が混乱する。
 
トマトのかき氷?
あれ? イチゴは? イチゴ頼んだよね?
テーブルの伝票を手に取ってみる。
確かに店員の字で「イチゴ」と書いてあった。
 
いや、なにかの間違いかもしれない。
 
もう一度口へ運ぶ。
 
えー? なんで熟してないイチゴ?
 
「甘くて美味しいイチゴのかき氷」を食べに来た期待感が、心の中で宙にういたまま、スプーンで氷を口に運び続けた。
 
ところが1/3くらい口に運んだところで、体に変化が訪れる。
 
暑さで蒸した体が、胸のあたりだけ森林の湖にいるように爽やかなのだ。
例えるなら、朝の軽井沢。
澄んでいて、ひんやりとしていて、そしてさわやか。そんな感じに体の中が変化していた。
 
そこでようやく気が付く。
 
「あえて、熟していないイチゴなのか!」
 
老舗和菓子屋のかき氷は、まさに”くすり”のようであると思った。
医師のごとく相手の体の状態を考え、症状にあわせて和菓子を作る。そんなふうに思えた。
 
職人の方に確認したわけではないので、完全な主観ではあるが、客の体は夏の暑さで熱がこもっていることをきちんと理解し、食べ終えた時の体がどうなっていると良いのかが考え抜かれてあるように感じた。
 
猛烈に感動して、食べかけのかき氷をまじまじと見てしまった。
相変わらず、氷はキラキラと輝いているが食べ始めの時とは違う本物の輝きを見た気がする。
 
スプーンですくい、ひとくち味わう。
最初に期待していた甘いイチゴのかき氷よりも、何倍もおいしい。
体の中がすっと整い、全身がさわやかさに包まれていた。
 
 
 
 
***
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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