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メディアグランプリ

フードロス削減は、日常にワクワクを与えてくれる「宝探し」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石崎彩(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
都民になって2ヶ月が過ぎた。
「田舎育ちの自分が23区内に住むことになるなんて人生わからないもんだ」
と、多少鼻を高くしつつ、浮き足立って近所を散策するのを当初は楽しんでいた。
 
コンビニなんて歩いて0分。
つまり住んでいるマンションの1階。驚きの近さである。
 
実家に住んでいた頃は、広がる畑の脇にプレハブが建ち、工事中の看板が立てられると
「いよいよわが町の地区にもコンビニが来たか!」と、毎回期待した。
けれど、いつも山を掘削するための資材置き場となり、結局車を使わずに店舗に行ったことはない。
 
それが今や車を使わないで、ましてやほぼ歩かないで24時間飲食物が買える便利さ。
少し怖ささえ覚える。
 
しかし、別の意味で怖さを覚えたこともある。
たくさんあるが、その一つが食材の高さ。
 
東京に引っ越すと同時に、初めて2人暮らしを体験しているので、何かとお金がかかるのはしょうがない。そのうち無駄な出費がなくなり安定してくるだろうと思っていた。
ところが、自炊しているのに明らかに生活費が高い。1人暮らしの時×2人以上に支出している。
 
これはまずいと、家計簿を見直すと「あーやっぱり、食材費が高いなぁ……」ということに行き着いた。
でも、近所のスーパーはだいたいチェック済み。
相場よりも安値であればわかるようになってきていたし、なるべく安く買うようにしていた。
 
お弁当や夕飯の品数を減らすか、同居人である彼氏から食費をもらうか……と、やりくりに悶々とする日々が続いたある日。
いつも行くスーパーに必要な食材がなく、いつもは行かないスーパーに行くことに。
「反対方向だし、ちょっと高い……。けどしょうがないか」と住んでいるマンションを通り過ぎて歩くこと2分。
 
コンビニよりも狭くて、看板も何もない店舗。一見何屋かわからなくて、いつもだったら通り過ぎてしまうところだった。
奥に配置されている冷蔵ショーケースに入っている商品はまばらで、空きが多い。手前に配置されている青いコンテナには何やら野菜が入っているようだけど、なんだかよくわからない。
何屋なのかわからないけど興味を惹かれたのは、その店の狭さに見合わない客の多さだった。
 
多分私の6畳の部屋より少し大きいぐらいの広さしかないのに、10人くらいが何やら商品を物色している。
様子を伺っている間にも、小学生の子供たちが店の扉を開けて中に入って行く。
どうやら店のスタッフさんとも顔見知りらしく、入って行くと同時に「こんばんは!」とあいさつ。
いよいよ何屋なのか気になった私も扉をくぐると、そこには目を疑う食材が並んでいた。
 
正確には、コンテナやショーケースに並んでいる野菜や乳製品、肉類などのパッケージに貼られた「値段」に目を疑った。
小松菜が1束60円、セロリも1本60円、キャベツ1玉100円、国産鳥もも肉1枚150円……。
今まで買っていたスーパーよりも、下手したら半額の値段である。
しかも、売っている商品も市販されているもの。
例えば、ブルガリアヨーグルト400gが100円で販売されているのだ。
 
「ここは、今日だけの出張八百屋みたいな、ボーナス的なアレなのか……?」
驚きのあまり疑ってしまう。
疑いながらもとりあえず、袋に商品を入れて行く。その間にもお客さんは入ってきて、レジに並ぶ人の列で身動きが取れなくなる。
 
「牛乳、牛乳の値段が知りたい……!」とヤキモキしながら少しずつ動く人の流れに乗って、冷蔵ケースの前まで移動。
スタッフさんもこの混み具合で、商品の補充がままならないようである。
冷蔵ケースは、もう売り切れてしまったのか空きが多く、驚異的な値札だけが残されていた。
 
子供達は、商品を買い求めるお母さんを迎えにきているらしく、お母さんたちもスタッフさんと仲良く話している。相当近所に根付いたお店なのだ。
「本当にこのお店はなんなんだろう?」と、疑問で頭がいっぱいになった頃に私のレジの番が回ってきた。
 
そこでレジ横にある商品に再び驚いてしまう。
「10円コーナー」
そう書かれたポップが置いてあるスペースには、カップのヨーグルトが。
これは、コンビニにあったら120円はするヨーグルトでは⁉︎
 
「このお店、なんでこんなに安いんですか⁉︎」
思わずちょっと食い気味にレジのおじさんに聞いてしまった。
 
「今日ここに来るのは初めてですか? ここはね、『フードロス削減』を目的としたお店なんですよ」
 
フードロス? 名前は聞いたことはあるけど、よく知らなかったので詳しく聞いてみる。
スーパーなどで賞味期限が近くなってきたものは廃棄するけれど、廃棄するのにもお金がかかるとのこと。そこで、廃棄予定食品や、そのほかにも箱つぶれ商品、過剰在庫などを店舗から買い取り、格安で提供しているそう。
 
農林水産省発表の食品廃棄物量は、平成28年度推計で1561万トン。その内まだ食べられるけど捨てられてしまうフードロスの総量は643万トン。
あまりピンとこないが、これは1300万人(東京都の人口くらい)が1年間に食べる食事量に匹敵するらしい!
 
これはもったいない!
家計が助かるだけではなく、経済・環境問題にも貢献できるならば、積極的に利用するしかない。
フードロス削減活動をしているNPO法人はほかにもあり、ぜひ多くの人が知り積極的にアウトレット食品を活用するようになればいいなと思う。
 
最後に、この近所の小さなアウトレットスーパーの店員さんが言った言葉が印象的だった。
 
「いいものありましたか? ここは宝探しのお店だから、よく見ていってまた来てくださいね」
 
翌日、その店舗で安いから買ってみた製菓用のストロベリーチップで、初めてスコーンを作ってみる。
ストロベリーチップなんて初めて買ったけど、何にしようかワクワクしたし、作る途中もワクワク。そして、食べてもらうことを想像してワクワクした。
 
捨てられてしまうものの中に宝物がある。
食材そのものはもちろん、その食材が与えてくれる楽しい時間もまた宝物であることに気づかされた出来事だった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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