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メディアグランプリ

人生は、スイーツ作りに似ている。


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記事:野崎美夫 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
2018年6月20日、僕の60歳の誕生日。
僕はある3つのことをやめた。
アマチュアゴルフの最高峰、日本アマゴルフ選手権出場を目指して、ハンディ8までいったゴルフ。
アマチュアボディビルダー憧れのベストボディ・ジャパン日本大会出場のための筋力トレーニング。
365日欠かさず飲み続けていたビール。
カンタンにいえば、ゴルフと筋トレとビール、僕が人生で最も愛してきた3つのことを断ったのだ。
気がつけば、なぜそんなものにただ一度きりの人生を割いてきたのだろうかと愕然とせざるを得なかった。
僕が日本一のアマチュアゴルファーになろうと、ムキムキのボディになろうと、いくらビールを飲んで酔っ払おうと、この世の中になんの貢献どころか一縷の役にも立たないことにようやく気がついたのだ。
大学を卒業してからの10年間。一流のコピーライターになりたいと、1日3時間の睡眠でコピーの勉強を重ね、仕事に没頭していた。
広告制作会社を立ち上げてからの10年間、1日15時間以上働きつづけていた。
ところが、40歳を過ぎてからの20年間、家庭も会社も顧みず、自分の妄想を追うことだけに日々を過ごしていた。いま振り返れば躁状態で、ただひたすら手前勝手な“男のロマン”とかにうつつを抜かしていたのだ。
忘れもしない60歳の誕生日の前の日、それまでずっと夫の愚行を黙って放任してくれていた愛妻の言葉が、濁りきった僕の目を覚まさせてくれた。
「あなた、ほんとうにいまのままでいいの。あなたはひとを幸せにすることが自分の幸せだといっていなかった。私のことを幸せにしてくれたから、私はあなたと結婚したの。でも、あなたはいま自分のことしか考えていないわよ」
僕は貧乏な家庭で育った。中学ではクラスでただひとり、家に電話もなかった。大学入試は、新聞配達で貯めたお金で受験料を払った。大学生時代、もちろん仕送りなどもらえず、奨学金とアルバイトで授業料も生活費も賄っていた。就職した小さな広告会社の薄給は本代で消えた。だからずっとひもじい生活を強いられていた。
そんなコンプレックスの反動だったのだろう。会社を経営するようになってから、湯水のように金を使っていた。食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、買いたいものを買い、行きたいところへ行きと、放蕩三昧だった。
でも、僕は生来、ひとに喜んでもらうことがなによりの幸せだった。
就職先で妻と巡り会い、賞を獲りたいという彼女の夢をかなえたことが結婚のきっかけだった。
経営する広告制作会社がある成功を収めることができたのは、僕がクライアントである広告主や広告代理店がどうしたら喜んでくれるか、それだけを考えていたからかもしれない。
広告制作者は自らの表現などというものを第一義にする人間がほとんどだった。特に、コピーライターブームに端を発した広告界隆盛の時代にはその傾向が強かった。僕はそんな風潮には背を向け、広告主や広告代理店の意向をつねに最優先しつづけた。利益のためではなく、それが僕の喜びであり、幸せだからだ。
僕は飼い主に喜ばれることを喜びとする犬型人間だ。それは自分を卑下することではなく、逆に僕の誇りでさえあった。
60歳の誕生日を迎えた日、僕が選んだのは音楽という生き方だった。
ギネスブックで世界で最も演奏が難しい楽器とされているオーボエの奏者になろう。
哀しいけれど未来を感じるオーボエの音色でひとを癒やし、生きる幸せを感じてもらいたいと考えたのだ。
60歳になるまで音楽とは無縁で生きてきた。音楽の才能などもちろん皆無だ。多くの音楽家が引退する年齢で音楽をはじめること自体が馬鹿げている。
しかし、なにごとも10,000時間やり遂げれば一流になれるという「10,000時間の法則」がある。10,000時間を10年で達成するためには、1年で1,000時間、1日3時間弱を休まずつづける必要がある。
小麦粉を素晴らしいスイーツに変えるのが、10,000時間の修行を続けた菓子職人ならば、ただのシニアでも10,000時間の練習で素晴らしいオーボエ奏者になれるかもしれない。
ホイップクリームを作ろうとして泡立て器でかきまぜても、なかなかクリームにはならない。ほんとうにホイップクリームの素なのかといぶかっても、まだクリームにはならない。もうやめてしまうおうかと思いながら、それでも諦めずに一生懸命かきまぜつづけていると、ある瞬間、ただの液体だったのが、突如ムクムクとクリーム状に固まっていく。
僕のオーボエ修行もこんなスイーツ作りと同じかもしれない。
ただの小麦粉を素晴らしいスイーツに変えるのは、なかなか固まらないホイップクリームの素を固めるのは、膨大な時間とたゆみない努力という、人生のすべてにあてはまる原理・原則に違いない。
人生はスイーツ作りに似ている。
ならば、人生のラストで最高の作品を作ってみたい。
その作品でひとを幸せにすることが、僕自身の幸せにもきっとつながることを信じて。
 
 
 
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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