メディアグランプリ

【拒否と選択と人権】


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:飯田あゆみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
 
 
たぶん、彼を知らない人には、「嘘」とか「作り話」に聞こえるかもしれない。
でもこれは、本当の出来事。
私は今、目の前で、すごい子育てを見せられている気がするので、それを記録しておきたくてこれを書く。
 
Aくんは、2019年現在3歳、お母さんが国家資格を持つバリバリ現役のカウンセラー。
そのお母さんが持てる限りの心理学の知識を総動員して育ててきた子だ。
 
言葉が話せなくてもコミュニケーションに苦労しないようにと、生後2か月の頃から、「選択」という行為を教え、「拒否」を教え、「何をするにも、あなたの気持ちを一番に考えることが大事なのよ」と伝えて育ててきた。
 
(「赤ん坊にどうやって選択を教えたの? 話もできないのに?」と思うかもしれない。でもこれは、自閉症の子供に「選択」や「拒否」を教えるのと同じなのだ。要は、「行為」と「その意味」のマッチングができればよい。例えば、おもちゃを二つ見せて「どっちで遊びたい」と聞く。二か月だとまだ、筋肉のコントロールがうまくいかないので、狙ったところに手が伸ばせない。でも、視線は動く。「その視線が、たまたま向いた方のおもちゃを渡す」ということを繰り返していると、子どもは、「見た方をもらえる=見ることで選べる」と学習していく。学習とは全てマッチングなのである)
 
さて、そのAくん。
一歳半過ぎても歩かないので、検診で引っかかり、保健所から「障害の疑いあり。脳の検査をしたいのでCTを撮らせてください」とお達しが来た。お母さんは、毎日、Aくんと過ごしているし、子育ては初めてでも人間観察のプロなので、我が子に障害がある、とはどうしても思えなかった。当のAくんは、毎日、元気にハイハイであちこち探検しまくっているし。
 
そこで、そのお達しを拒否したら、必要な医療的ケアを拒否したということで、「虐待の疑いあり。要観察」とブラックリストに載ってしまった。困り果てたお母さんは、「ねえ、Aくん。お母さんさ、Aくんが歩きたいタイミングで歩いてくれたらそれでいいや、って今まで思ってたんだけどさ、ちょっと困ったことになっちゃってるんだよね。お願いだから、歩いてくれないかな?」と頼んだんだそうだ。
すると、Aくんは、こくんとうなづき、サッと立ち上がると、そのままスタスタ歩き出した、と。つかまり立ちはしていたけれど、歩いているのは見たことがなかったお母さんは相当驚いだらしい。
「なんでできるのにしなかったんだ?!」と思って聞いてみると「歩かなきゃいけないとは思ってなかったから」なのだそうだ。
 
そんな感じで、色んな逸話を持っているのだけれど、今回、さらにすごいことをやってくれた。3歳にして、自らの進路問題(幼稚園選び)で、親と対立した、というのだ。
 
お母さんは、体の発達に比して、心の発達や、知能の発達が早いAくんが、同年齢の幼い子どもたちの群れの中で、理不尽な目に遭うことのないよう、飛び級ができる園を選び、そこにしようと願書も取り寄せていた。
が、ここにきて、Aくんが猛反発を始めた。
「これは、Aの進路でしょ? お母さんがAのことを決めるのは、おかしいと思うの」
「Aのことは、自分で決めたいの」
「口出ししないで!」
と泣きながら訴えるらしい。
 
そして、お母さんと一緒に見にいき、体験した20数園の中で、自分でここだ、というところを選んだのであった。
 
ちなみに、何度も書くけれど、これは大学進学に悩める高校生の話ではなく、幼稚園選びで対立する親子の話。
 
お母さんは根負けして、Aくんの意思を尊重することにした。が、先日寂しそうにポツリと呟いていた。
「幼稚園選びくらい、親がするもんじゃないのー?」
 
人権の尊重って、選択と拒否を認めることから始まる。
 
「まだ小さいから」
「この子には無理だから」
「知的障害があって選択なんてできないから」
 
そう決めつけて、選択と拒否を奪うことをしてないだろうか?
 
 
 
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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