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男性がラッピングに時間とお金を掛ける訳


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林れい(ライティング・ゼミ 平日コース)

私はラッピング専門店を経営している。もともとはラッピング教室の講師として起業した私だが、
「ラッピングを習いたいわけではなく、実際に贈るプレゼントを包んで欲しい」
という、一通のメールがキッカケで「持ち込みラッピング」というメニューを加えた。
その依頼をしてきたのは、30代半ばほどの男性。彼女に贈るプレゼントをネットショップで購入したが、ラッピングがされていない状態で届いたという。
当時私は一軒家を借りて、自宅兼仕事場、という形にしていたため、見知らぬ男性が仕事場とはいえ、自宅に来られることに抵抗があった。だが、どうしても、ということで、来てもらうことにした。
男性が持ってきたものは小さなアクセサリーの箱。彼はとうとうと彼女への思いや購入に至るまでの経緯を話しだした。
「つきあって一年目の記念日なんです」
「サプライズで渡したくて」
「以前、このお店に行った時に、こういうデザインが好きっていっていたから」
など。聞くと、車で30分ほどのところからわざわざやってきたそうだ。ネットで買った理由は、仕事の時間も不規則で、店が開いている時間に買いに行きづらいということ。
また、女性もののお店にひとりで入りづらかったこと。
ネットで注文したはいいが、ブランドのマークが付いた簡易な袋に入っているだけで、せっかっくだから、もっと豪華にしてほしいと思ったという。
「なかなかこういうサービスしてもらえる店ってないんです。本当に困って、行き着いたのがこちらのラッピング教室でした。ラッピングが出来る人なら、やってもらえるかなと思って」
いろいろ話しを聞きながら、私は、彼が本当に彼女のことが好きなんだなと感じ、いかに喜んで貰えるか?を一生懸命考えて、包装紙とリボンを一緒に選んだ。
最終的に、そのブランドのイメージカラーと、彼女が好きな色の組み合わせ、ということでコーディネートは決定し、包む時間は1~2分。話していたのは3~40分だろうか。
彼は仕上がりを見て
「きっと喜んで貰えると思います。来て良かった」
ラッピングのテクニックとしては、一般的なことしかしていない。が、リボンや包装紙の組み合わせで豪華に見えたのか。その時は喜んで貰えてよかった、としか思わなかったが、後日また、同様の問い合わせがポツポツ入るようになった。
依頼してくるのは一様に男性。主に彼女か妻への贈り物。儲け云々より、このサービスを必要としている人がいるのではないだろうか?そう思って、料金やプランを考え、HPに掲載したところ、案の定予約が入り始めた。
もともとクリスマスや母の日のラッピングサービスのイベントをしていた私だが、
そして年々予約や依頼が増えていく。殆どの品物が男性からの依頼で
「ネットで買ったけど、ラッピングがされていなかった」
「よそで買ったけど貧相なラッピングだった」
など「翌日当日配達」が当たり前で、スマホなどから簡単に商品は手軽に入手できるようになったが、ネットショップもコストダウンのため、ほとんど包装はされないまま、贈られてくる。あったとしても袋にいれただけ、そもそもラッピングサービスはない、というところも多い。また、
「リクエストされたものを買っているので、相手も中身はわかっているんです。だからせめてラッピングで気持ちを込めたい」
という男性もたくさんいる。
確かに昔は相手を思ってプレゼントから選んでいたが、イマドキは皆、欲しいものをダイレクトにリクエストしているのかもしれない。
しばらくすると、幾人が常連となり、結婚記念日や誕生日には必ず訪れるようになった。時々、綺麗に包装されているのをもう一度包みなおして欲しいという人も出てきた。
私は疑問に思い、聞いてみた。
「どうしてきれいに包まれているのに、わざわざうちに来てくださるんですか?」
「うーん、なんででしょう。最初にここのラッピングでものすごく喜んでくれたんですよね。だからももう普通のラッピングには戻れないというか。専門店だから、100円ショップにあるリボンや包装紙とは、やっぱり違いますよね。ここで彼女のことを考えながら、包装紙やリボンを見せてもらう時間がすごく楽しいんです」
女性であればラッピングは自分で出来そうだし、彼氏や夫など、近しい関係ほど、100円ショップの包装紙でいいや、と思っているのだが(実際私の店に来て、女性は値段を見て驚いて帰る人が半分くらいいる)、男性はとてもロマンチストな人が多いのだなあ、と感心している。
時間短縮のためにネットショップで購入したにも関わらず、わざわざ平日の昼間しかやっていない、私の店に来てラッピングを依頼するのは本末転倒だと思うのだが、皆それがいい、と言ってくださる。私も、その贈り物をするにあたっての経緯や、彼女、奥様とのなれそめやエピソードを聞くのは楽しいし、人生の大切な日の一部に携われるというのは光栄だ。
自宅兼仕事場に見知らぬ男性を呼ぶのは不安、というのはまったく私の杞憂で、実施に来るのは私なんぞに目もくれぬ、「彼女・妻、LOVE」な男性ばかりだった。
今年ももうすぐクリスマス。たくさんのノロケ話を聞きながら沢山のプレゼントを包むことだろう。ちなみにそういう話を私の夫にも散々しているので、毎年夫は私のプレゼントを必死で包んでいる。彼もまた、包装紙やリボンを私を思いながら選んでいるのだろうか。100円ショップで。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 http://tenro-in.com/zemi/102023

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2019-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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