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メディアグランプリ

頑張れば、成果は出る?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大原亜希(ライティング・ゼミ日曜日コース)
 
 
「始まる前に数かぞえたの!?」
黒いスーツにバシッと決まった髪型のマネージャーらしき人が、作業台に手をつきイライラしながら言った。
 
私は一瞬、その声の威圧感にビクッとしてから、そのまま作業を続けた。
声は、一日限りのヘルプで入っている私に向けられたものではない。
 
「いえ、数えてません」
30代前半くらいだろうか。
ちょっとぽっちゃりした体型のスタッフが、デザートを盛る作業を続けながら答える。
動揺しているのか、ちょっと動きがぎこちない。
ただでさえ早くなかった作業スピードは、さらに遅くなったようだ。
 
「だからさあ。何回もやってるんだから、いい加減覚えろって」
「はい、すみません」
「ほんと、おまえは仕事出来ないよな」
「……すみません」
 
彼は消えそうな声で答え、なんとか足りなかったデザートを盛り終えた。
周りのサービススタッフも、キッチンスタッフも大して気にしている様子もなく、黙々と自分の作業を続けている。
きっとこれが、このホテルの日常なんだろう。
 
「あ、もう下のキッチンに戻ってもらっていいですよ」
思い出したように、そのスタッフが私に言った。視線は合わない。
そりゃそうだな。あんな風に皆の前で言われたら、私でも一人になりたくなる。
 
見慣れたこととはいえ、私はいたたまれない気持ちで、エレベータ―のボタンを押した。
 
ホテルの宴会場、結婚式場。大人数の料理を出しているサービス業界の裏側で、よく見られる光景だ。
料理が足りない。飾りのパーツが足りない。お皿が足りない。
 
大抵担当している若いスタッフが、仕事の出来るベテランスタッフに怒られる。
はたから見ていると、彼らは一生懸命頑張っているように見える。
でもミスをする。しかも繰り返し。そしてまた怒られる、の負のサイクル。
で、「自分は仕事が出来ない」と思い込む。そこから抜け出せなくなる。
 
業務用の古いエレベーターの階数表示が、ゆっくりと下がっていくのを眺めながら「残念だな」と私は思った。
聞けばそのスタッフは、もう5年はそのホテルで働いているという。
でも作業を見ている限り、育っていないし、周りからも出来ない人のレッテルを貼られている。
育っていない?
いや、そもそも「ちゃんと」育てていないのかもしれない。
 
何を隠そうわたしも、20代後半はこのマネージャーと同じだった。
部下の出来ていないところを指摘し、同じやり方でもっと頑張らせる。
部下は一年経っても、まるで成長しなくて。
「なんて出来ない部下なんだろう」
「なんでもっと頑張らないんだろう」
と本気で思っていた。
こんなに一生懸命、育てているのに。
 
自分の仕事がまるで減らなくて、色んな本を読み漁っていた時だ。
こんな言葉が目に留まった。
「部下が出来ないと言って嘆くのは、 “私は人を育てられない上司です” と公言しているようなものだ」
 
続けてこんなことも書いてあった。
「あなたは確かにプレーヤーとして“”出来る人“かもしれないが、マネージャーとしては””出来ない人““である」
 
頭をガツンと殴られたような衝撃があった。
私はそのとき初めて、部下が成長しないのは、自分のやり方が悪いからかもしれない、と気づいたのだ。
部下が出来ないのではなくて、私が出来ない上司だから、こうなっているのかもと。
 
そこから、部下へのアプローチを徹底的に研究し始めた。
 
どんな風に声をかけると、やる気があがるのか。
どんな風に指示を出すと、正確に伝わるのか。
どんな風に任せると、焦らず出来るのか。
 
相手の反応を常に観察していたら、少しずつコツが分かってきた。
その部下はどんな小さなことでも承認し、褒められることで伸びるタイプだった。
「うまく出来たね」よりも、「いてくれて助かる」と言われるほうが嬉しいらしかった。
失敗したときにも、「何が原因だったと思う?」と問えば、自分で答えを見つける力をちゃんと持っていた。
 
ただ私が、彼女の中にある能力を引出せていなかっただけなのだ。
 
アメリカのとある分析会社のデータによると、仕事で自分の能力を活かせていると感じている人は、たったの13%らしい。
それはひっくり返すと、87%の人は、今才能を発揮できていないことになる。
 
スタッフが能力を活かせるかどうか、は上司にかかっている。
上司のアプローチ次第で、そのスタッフは出来る部下にも、出来ない部下にもなる。
覚えていないといけないのは、人は自分が成果を生み出した方法で、他の人も成果を出せるはず、と思い込むということだ。
そう、かつての私のように。
 
人はそれぞれ違っている。
To do listを作ってやる気が上がる人もいれば、一気にやる気がなくなり逆に抜け漏れが生まれる人もいる。
目標を立てて逆算して成果を出す人もいれば、目の前のことに一生懸命取り組んで、その積み重ねから成果を出す人もいる。
 
成功パターンは、ひとつではない。
 
1年間同じ方法でやってみて、部下が育たないなら、何かを変えてみるべきだ。
部下は頑張りが足りなくて、成果が出ないのではない。
成果が出ないやり方で頑張るから、成果が出ないのである。
 
そしてそれは、自分自身についても同じことが言える。
頑張っても成果が出ない時は、やり方を見直してみる必要がある。
今の自分のやり方が成果を生み出しているかどうか、常に観察することが大切だ。
 
有名な人がそう言ったからとか。
世間でベストセラーになった本にそう書いてあったからとかではなく。
 
あなただけの、成功パターンを。
 
 
 
 
***
 
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2019-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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