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人の力を借りれば何でもできる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:深谷百合子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は人にものを頼むのが苦手だ。できるだけ自力で何とかしようとする。人に任せられないタイプなのだ。
 
仕事においてもそうだ。管理職になった後も、自分で動くのが好きで、判断する時にも自分の目で見たうえで判断したいと思っていた。同時に、部下に仕事を丸投げして、報告を待っているだけの上司にはなりたくないと思っていた。
 
そういうわけで、私は限りなく「プレイヤー」に近いプレイングマネージャーだった。何か問題が起きれば、自分で現場を調べ、原因を追究し、自分で関係者の所へ相談に行き、解決策を考えた。新しいことを思いついたら、企画立案、資料作り、実行まで全部自分でやることが多かった。自分のペースでできて、仕事を進めやすいからだ。それに、部下も含めて周りの皆も忙しいから、自分のやりたいと思う仕事に彼らを巻き込むことは気が引けた。
 
「気が引ける」というよりも、「人にものを頼んだら嫌われる」という恐れが自分の中に有ったのだ。
 
そんなスタンスのまま10年が過ぎた頃、中国で工場を建設するプロジェクトに参加することになった。私の役割は部門のナンバー2として、部門長をサポートしながら、中国人の部下に対しては技術面でのフォローやアドバイスを行うことであった。
 
自分自身も多くの実務を抱えながら、プロジェクトの膨大な仕事を進めていった。自分自身で現場を見て回り、課題を見つけて解決に走る。誰がやるのか分担がはっきりしていない仕事があれば、私がそれをカバーした。そうして半年が過ぎていった頃、一人の部下と何となくぎくしゃくした関係になった。表面的には良好な関係に見えるのだが、距離を感じるのだ。
 
彼は、職場のリーダークラスで、部門のナンバー3と言える立場にいた。彼自身も担当業務を持っていたが、部門全体を見渡す役割も与えられていたのだ。だから、私自身の立場とよく似ていたのだ。
 
なぜ、彼としっくりこないのだろう? 私は彼との距離感が気になっていた。はじめの頃はとてもいい関係だったのに、何が変わったのだろうか。
 
私は目の前に彼がいるつもりで、彼に対する今の気持ちやわだかまりを口に出してみた。
「どうして、あの件、報告してくれなかったのかな。私からお願いしたことは、終わったかどうか、ちゃんと報告してくれないかな」
 
言い終えると、次は彼の立場に立って、彼から見た私を想像してみた。そして、目の前の私に対して言いたいことを言ってみる。
「あの仕事、本当は僕がやろうと思っていたのに、やろうとしたら、もう先に進んでいて出る幕がなかったんだ。ひとこと言ってくれれば良かったのに」
 
その次に部門長の立場に立って、彼女から見た私と彼を想像し、目の前の私に対して言いたいことを言ってみた。
「私は彼を育てたいと思っているから、彼をサポートしてあげてほしい」
 
最後に、他の部下の立場にも立って考えてみた。
「あの仕事は僕がやるべきで、深谷さんは一人でそんなに苦労しなくてもいいんですよ」
 
そんな風に、立場を変えながら、自分と彼との関係性を、そして自分と彼を取り巻く部門全体のことを考えてみた。そして気付いたのだ。
「私がしたことは彼にとっては余計なことだったのかもしれない。私じゃなくて、彼や他の人の成果にしてあげなければならなかったんだ」と。
 
そして、もう一つ自分を呪縛していた考えが有った事にも気が付いた。
それは、「私は何でもできないといけない」という思い込みだ。上司だから? アドバイザーだから? それもある。でももっと本当のことを言えば、「何でもできる自分」を認めてほしいという気持ちが奥底にあったのだ。
 
「人に任せられない」というのは、つまり、「嫌われたくない」、「何でもできる自分でいたい」という気持ちだったのだ。けれども、今は「任せていない」ことで相手との関係に距離ができている。「任せない」ということは、嫌われないかもしれないけれど、信頼関係も築けないんじゃないか。
 
次の日から、私は今までのやり方を少し変えてみた。いつもは自分で問題に気がついたら、そのまま自分で解決に走っていたが、その前に彼に相談してみることにしたのだ。
「この問題について、私はこう思うけど、どう思う?」と。
 
そう投げかけると、彼は「僕も同じ意見です」と答えた。
「それなら、これお願いしてもいい?」
「もちろんです」と答えた彼の顔は、とても明るかった。
 
そして、そこから彼は担当者に仕事を割り振っていった。
私が一人でやるよりも早く、そして私が思いつかなかった方法で問題が解決した。
 
私は自分では何もしなかったけれど、自分一人でやって解決した時よりも嬉しかった。そして、チームとしての一体感を感じた。「人に任せる」とはこういうことなんだ。
 
それ以来、「何でもできないといけない」と思いそうになったら、この言葉をつぶやいて、人にものを頼むようにしている。
「人の力を借りれば何でもできる」
 
 
 
 
***
 
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2019-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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