メディアグランプリ

アンコンシャス・バイアス-無意識の偏見-


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:日置則子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「アンコンシャス・バイアス」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 直訳すると、「無意識の偏見」である。
私がこの言葉に出会ったのは、1年ほど前に会社のセミナーでのこと。そのセミナーを行ってくれたのは、会社のN先輩で、彼女は副業でセミナー講師もやっているスーパーウーマンだった。
無意識の偏見? ドキリとする言葉だな。それが私の最初の感想だった。
おそらく他の参加者もドキドキしていたに違いない。なんだか自分の醜い部分と直面させられそうで嫌だった。
 
「では問題です。あなたはこの3人の中で、一番役職が上の人はだれだと思いますか?」
スライドに映されたのは、50代くらいの男性、30代くらいの女性、20代くらいの男性だった。
その場の参加者の大半は、50代くらいの男性を選んだ。おそらくひっかけだろう。きっとこのセミナーの意味合い的に、30代の女性か、20代の男性に違いない。
案の定、正解は20代の男性だった。
さらに問題は続く。
「では、こちらはある人のタイムスケジュールです。このスケジュールの人はどんな人だと思いますか?」
 
午前6時00分:起床、子どもを起こす。
午前6時30分:朝ごはんの後片付けとゴミだし。
午前7時20分:子どもを保育園に送る
午前8時00分:出社、朝いちの会議の準備、以降午後のクライアント訪問まで内勤
午後14時00分:クライアントまわり
午後17時00分:帰社・事務作業
午後17時30分:退社・子どものお迎え
午後18時30分:夕飯、子どもとお風呂
午後20時00分:こどもたち寝かしつけ
午後23時00分:就寝
 
だいたいの人は、保育園に通う子どものいる30代くらいのワーキングマザーのスケジュールだと判断した。
先にみせられたスライドの女性のものではないか、という予測も出た。
でも正解は、30代男性メーカー勤務の方だった。同僚の旦那様のある日のスケジュールだそうだ。
「どうして30代の女性と思ったのでしょうか?」
と、先輩は訊ねてくる。
それは……子どもを保育園に送迎するのは母親の方が多いから……。と、みんな答えた。
「そうですね、子どもを保育園に送迎するのはお母さんのほうが多いかもしれない。でも。お父さんが送迎する家だってありますよね。自分のこれまでの経験・イメージで判断してしまう。これがアンコンシャス・バイアスです」
 
はい、そうだと思っていました。そういうセミナーですもんね。
つい斜に構えた自分が出てしまう。
しかし、各々過ごしてきた環境や場所は違うし、当然、価値観も違う。価値観が違えば偏見も生まれる。
子育て=女性中心、役職付き=年上と思うのは、ポピュラーな考え方なんじゃないか。それをオールドタイプと呼ぶのかもしれないが。
偏見はやめましょう、事実を客観視しましょう、そんなこと言われても急に正すことなんてできないんじゃないか。
 
「アンコンシャス・バイアスは、脳のプロセスの一つで、日々の判断を効率よく行うために重要なものです」
思いがけずアンコンシャス・バイアスを肯定され、肩透かしを受ける。
頭ごなしに否定するのかと思っていた私は、ようやく少し耳を傾ける気になった。
つまりアンコンシャス・バイアスとは、だれでもどんな人でも持っているもので、それ自体は自然なことだけれど、そのバイアスが個人に向けられたときに、よくない影響を及ぼす。
その日のセミナーでは、主に職場での無意識の偏見が及ぼす影響について話が進んだ。
 
子どもが小さいから、出張は避けてあげないといけないだろう。
女性は出世欲がないから、管理職のための研修プログラムは必要ないだろう。
若い独身の男性には、残業を頼んでもいいだろう。
 
思い当たる節が、どんどん出てくる。
ハラスメントの温床になりかねない思考だと思った。
私はこれまで、たくさんの「思いやり」に触れてきた。いや、それはすべて「思いやり」のふりをしていた。
「女だから」「母親だから」、そんなレッテルの元、周囲に判断をされ、数々の機会を失ってきたのかもしれない。
時短勤務も、負担の少ない仕事も、甘やかされる環境に向上心はしぼんでいく。この程度がちょうどいいと思うようになる。
「アンコンシャス・バイアスは自分の中にもあるんですよ」
そう言われて、ハッとした。
自分にはこんなことはできないだろう、そう決めつけて、二の足を踏んでいるのはいつだって自分だ。
今だって、私はN先輩のようにはなれないと思っている。通常の仕事もして、副業もして、3人の子どもを育てて、自己研鑽にたゆまない努力を続けているN先輩のようには。
「アンコンシャス・バイアスは、まずは自分にも無意識の偏見があるということを知ることが大事です。その上で、この判断は思い込みによるものではないか、と疑い向き合うことが大切です」
自分と向き合い、人と向き合う。初めにバイアスがあるのは当たりまえ。だからこそなるべくフラットな視点を持つことを心掛けて、相手の気持ちに心を寄せる。すると信頼が生まれる。
セミナーでは、アンコンシャス・バイアスに意識を傾けることは、職場の心理的安全を高めることができると伝えていた。
それは、自分自身に対しても同じことが言える。
 
どうせ自分なんて。
できるわけがない。
無理に決まっている。
 
瞬時の判断を自分へ下す前に、無意識の偏見に一言問いかけてみてはどうだろうか。
それは本当に?
それだけで、踏み出せる一歩が必ずあるはずだ。
 
ちなみにセミナーの半年後、N先輩は会社を辞めた。いまでは専業セミナー講師として忙しそうな毎日を送っているようだ。
一方私は、相変わらず会社に居続けている。辞めたいなあ、ライターの仕事に就きたいなぁと思いながらもなかなか決断できないまま。
でも、自分の限界を決めそうになる時に、「本当に?」と問いかけることは心掛けている。
だからこのライティングゼミにも参加を決めることができた。
自分の無意識の偏見を疑ってみる。そうすることで、私はどこまで向かえるだろうか。
5年後の自分が楽しみだ。
 
 
 
 
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2019-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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