四十路のオバチャンとデジタルガジェット
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:いしだあい(ライティング・ゼミ平日コース)
「お客様がお使いになるのですか?」
店員さんがちょっと驚いた顔で私を見ている。
そうか! 私が使うのではなくて誰かへのプレゼントと思われたのかも。
東京でもガジェット好きなオバチャンは少数派なのだろうか、まさか秋葉原でも言われるとは思わなかった。女子という年齢には程遠い40代半ばのオバチャンだけれど、私の周りにはガジェット好きの同世代女子が何人もいる。
パソコン周り、スマホ周りのガジェットはとても気になる。つい先日もガジェット好きの友人と一緒に、新製品チェックツアーという名目で地元の家電店をめぐってきた。あーでもないこーでもないと互いのウンチクを語りながら売り場を行ったり来たりする。
実物があれば手に取って触れることができるのだから、店舗をめぐるのはネット通販の何倍も楽しい。必要に迫られて急いで買うこともあるし、価格重視で間に合わせるように買うこともあるけれど、買い替えとなればより使いやすいものを求めて新しいガジェットを探してしまう。四十路のオバチャンが連れ立ってガジェットについて語っているのだから、はたから見ると「何者?」となるに違いない。もちろん、そんな私たちのところに店員さんは寄ってこないのだけれど。
ガジェットの一番の楽しみは、なんといっても新しい変化が起きることにある。仕事や暮らしが「便利な小物」の登場で変わっていく。ときには「これは買ったけど失敗!」という代物に出会うこともあるし、安物買いのなんとやら、で壊れてしまうこともあるのだけれど。そんな失敗経験も面白いし、自分で選んだガジェットによってもたらされる便利さや快適さとの出会いはうれしいものだ。
自分が使っている環境や、求めている使い方に完全に当てはまったときの快感ったらもう! そんなわけで、我が家には便利小物が増えていく。
東京に出かけたついでに秋葉原で買い求めた「スマートバンド」は、四十路のオバチャンにとってはちょっとした冒険だった。いや、実はついでなどではなく、計画的に秋葉原に行く時間を設けたと言ったほうが正しい。家電店がひしめく秋葉原はガジェット好きの田舎者にとって聖地のようにも映る。そもそも日常的に使うモノ選びは慎重にもなるし、できればこの目で確かめてから購入したいのだけれど、地方の電器店ではヨリドリミドリで選べるということは少ないのだから、秋葉原では自然に気合が入るというものだ。
スマートバンド売り場は、外国の方でごった返していた。聞いたこともない言葉が飛び交っている。その人だかりに割り込むように「エクスキューズミー」を連発しながら、ようやくショーケースにたどりついた。その場で私は異質に見えたのだろう、店員さんがすぐに来てくれた。プレゼントではなく私が使うこと、スマートバンドを歩数計として使いたいことを伝えると、さっと3種類のスマートバンドをショーケースから出してくれた。ひとつひとつ違いを説明してくれる。さすが秋葉原の店員さんはとても慣れている。話している間にこちらがどの程度理解をしているかを見極め、それに合わせて言葉を選んでくれる。とてもスムーズにスマートバンドを選ぶことができた。もちろん大満足だった。
店員さんはご丁寧に「設定まで、こちらでやって行きますか?」と言ってくださったのだけれど、説明書を見ながら自分でやり方を覚えたいと伝えた。きっとこれからも便利なモノが増えていくだろうと思うし、黒電話での通話に戻るとも思えない。変化が速い時代に追いついて「便利なモノ」の恩恵を受けるには、オバチャンも使い方を覚えなければいけないのだ。
購入したスマートバンドはそれほど多機能とも言えないモデルなのだけれど、この便利さは「いやぁ、時代は変わったものだねぇ」なんて言いたくもなる。スマートフォンを取り出さなくてもメッセージや着信を手元で確認できるのは想定外の便利さだった。
実際、スマートウォッチやスマートバンドは子育て中のお母さんたちに大好評という話も聞いているが、わざわざスマートフォンを取り出すことなくちょっとした確認ができるところは若いママさんに限らず便利だと思っている。私の場合は、高齢の両親からのメッセージを瞬時に確認できるようになったことがとても便利だと感じている。もちろん歩数計としても優秀で、スマートフォンに活動量を記録してくれるのがいい。歩数だけでなく活動量全体がグラフで表示されるので運動不足気味の私でも「今日は少し長く歩こうかな」なんて思えるようになったのである。小さなガジェットによって私の生活は一気に近未来的になった。
70代の私の両親もスマートバンドには興味津々である。次の帰省のお土産はスマートバンドにしようか。四十路のオバチャンも負けてはいられない。
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