40歳を過ぎた服装迷子へ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:加藤なお美(ライティング・ゼミ平日コース)
「どうしよう。はとバスに釣られた。行くなんて言うんじゃなかった」
8月の第2日曜日、短大の同窓会である、はとバスツアーを1週間後に控えた私は、クローゼットの前で着ていく服が決まらず、激しく後悔していた。
私の持っている服といえば、仕事で着ている事務服(めっちゃ地味)、Tシャツ70数枚とデニムパンツ数本、トレーナー、ニット位で、色ものは好きで割と揃っているが、オシャレワンピースはハッキリ言って1枚も無い。
久しぶりの同窓会に、軽い気持ちで「出席する」と返事をした自分を呪った。クローゼットの奥に手を伸ばしても、これといったものは見つからなかった。
「一体何を着て行ったらいいんだ……」
諦めてクローゼットを閉めた。
40歳を過ぎた頃から、どんな服を着て良いのか分からなくなった。服装迷子。お肉がそこかしこに付いてきたせいで、悲しいが何を着てもパッとしない。現実から目を背ける様に、ラフな服しか着てこなかったツケが今、まわってきた。
「しかし、こうゆう時こそネットよね」
携帯電話を取り出し、Googleに聞く。
「同窓会、服装、女、真夏」
「コチラノガゾウガ、イッチシマス」
黒、ベージュ、ネイビー……シフォンフリルのワンピースの画像が出て来た。
「ベージュは無いな、黒かネイビーで。ううう、Lサイズは、無いのか」
同窓会には、痩せたら参加しようと思っていた。二の腕の肉が厚くなっている。シフォンフリルで全てが隠せるとは思えない、Mサイズは絶対無理だ。だめだ。今更注文しても、間に合わなかったらどうする。絶望。
久しぶりに会う同窓会女子たちのチェックは厳しい。当日の服装は勿論のこと髪のツヤから顔のツヤ、髪型、シワの数、指輪などの貴金属、バッグなど小物に至るまで、彼女たちの目を誤魔化すことなど出来ない。気を抜くなんて厳禁だ。緊張してきた。心細い。ロードオブザリングのホビットのような気持ちになってくる。サウロンの目にさらされる灼熱の山で、その日1日を笑って過ごせるヨロイが欲しい。
そうだ。いつだったか、普段から着物を着ている職場の先輩が言っていた事を思い出した。
「着物って、良いわよ〜年食うとさ、いろいろ隠したいでしょ。身体の線とか。着物は、欠点をないものにしてくれて、且つ、女っぷりを上げてくれる、スグレモノよ、姿勢も良くなるし、着なきゃ勿体無いわよ」
「単衣の着物なら?……夏物は持ってない……そうだ浴衣が!おととし買い込んだ、着物っぽく見える吸汗速乾生地の物が! コレだ! 着物はハードルが高いもんね。浴衣なら着たことがあるし、何とかなるか!」
はとバスツアーは、東京駅に集合→皇居→浅草→東京タワーを見て回る。まだまだ暑い日が続いている。汗だくになることは間違いない。
せっかく浅草へ行くのなら、着物を着て歩いてみたい。しかし、当日の気温はきっと30度を軽く超えてくる。長襦袢を着込んだら東京駅に着く前に熱中症だ。
浴衣で行く事にした。
足が痛くならないウレタン草履はメルカリで買った。髪型だけは、どうしようかと思い悩んだ。黒革の手帖みたいに、まとめ上げるか……。YouTubeで簡単まとめ髪をチェックし、解決した。忘れていた帯の結び方をYouTubeに教わり、揃える紐の本数や、着崩れ防止のコツもYouTubeに教わり、私の専属着付師となったYouTubeと着付けの練習を何度か行った上で、当日を迎えた。
「久しぶり〜いや、和装? 頑張ったね〜」
「どこの奥様かと思ったよ〜」
実際着てみると、以外と浴衣は涼しく快適だった。周りの反応は予想以上に良かった。和装という偉大なヨロイは効果絶大だった。さほど、お金はかかっていない浴衣であるのに、キチンと感がある。半幅帯で締められた身体は、程よい緊張感のせいで、自然と背筋が伸びた。お陰で堂々として見えたらしい。
「よっしゃあ!」
私は胸をなでおろし、心の中で大きくガッツポーズした。
どこへ移動しても、お着物だからと(イヤ、家で洗える浴衣です)気をつかってもらい、汗だくになってもヨレヨレにならずに写真に収まることができた。同窓会などの改まった席の場合、写真に綺麗に写りたい時などは、和装はポイントが高いと思う。
普段着に和装を選ぶには、少しの勇気が必要だ。着なれていないと、何だか恥ずかしいし、少しだけ動きづらい。でも動きづらい分、おしとやかに振る舞える。普段と違う自分が顔を出す。
和装は、お金がかかる、と思うかもしれないが、フリマのアプリを活用すれば、古着屋を覗く感覚で楽しくお安く、クリアできる。
頑張った分の見返りは決して小さくないと、ここに宣言しよう。確かに女っぷりは上がるのだ。
この40歳過ぎたら和装の法則は、男性にも使える法則だと思う。運動不足や過食で、お腹まわりに付いてしまった浮き輪を、帯にしっかりとしまい込めば、それは貫禄というヨロイになって、きっと男っぷりを上げてくれる筈だ。
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